第6話 闇を照らす一筋の光
「…姿を見ておらぬのか?」
「…うん。すぐに逃げちゃったから」
皆と同じように意識を失った伊吹を居間に寝かせながらは応える。
皆を襲ったのが従姉のイロハちゃんだなんて言えない。
それに…伊吹兄との関係も絶対に話せないもの。
はそっと伊吹の額に滲んだ汗を拭く。
“許婚に該当する男子は巫女以外の者と親密な仲になってはならない”
――もっと堅苦しくて難しい言葉だったけれど、簡単にしたらこんな意味の掟が破邪の力を持つ一族にはある。
2人のことを話せば、伊吹は勿論、伊絽波も厳しい処罰が与えられるはずだ。
…そんなことがわかってるのに言えないよ。
それにイロハちゃんが何で邪気を帯びていたのかもわからないし…。
やっぱり話せない。
…でも、また来たらどうしよう。
さすがに同時に4人全員は守りきれない。
そもそも何で巫女の私じゃなく、皆を狙ったの?
「お前は何を…考えてるんだ……伊絽波…」
の頭の中で伊吹の言葉が静かに回り続けた。
――2日後。
やっと皆の状態も落ち着いて、それぞれの庵に戻れることになった。
それでもベッドから起きて動き回れる状態ではないらしい。
「邪気を瞬間的に浄化できるのは巫女のお前だけじゃ。
あやつらは毒を盛られたのと同様で自然治癒力で少しずつ解毒していくしかない」
「そうなんだ…」
「恐らく今回来たのはサルサラの刺客じゃろう。お前との婚姻の儀を邪魔しようとするつもりじゃ」
「邪魔…?それって結界を張れないようにする為に…」
「あぁ。…こんなことは恐らく初めてじゃがな。サルサラも何百年もかけて少しずつ力を増やしているのじゃろう」
「…」
ついにサルサラが復活に向けて動き出したんだ。
でも、そうしたらイロハちゃんはサルサラの手先ってこと…?
そうだとしたらどうしたらいいの…? イロハちゃんもやっつけなきゃならないの…?
言いようもない不安がを襲う。
…だけど落ち込んでいられない。 現に苦しんでるのは皆なんだもの。
私が落ち込んでどうするのよ。 しっかりしろ!!!
は必死に自分を奮い立たせる
そして一言呟いた。
「葉月のお見舞いに行こう」
「伊吹兄のお見舞いに行こう」
「真織のお見舞いに行こう」
「天摩のお見舞いに行こう」
「外の見回りに行こう」