第4話 きっと、これが。




暗い海の底にいるみたい。
海なんかじゃない。沼だ。

黒いドロドロしたものが足や手に纏わりついて、穢れが私を侵していく。

助けて助けて助けて助けて。

黒い穢れは私の身体の中心まで乗っ取って
喉や声帯をも飲み込んで、私を絡めとってしまう。

私には一筋の光も差さないのか。
全て周りが黒で覆われて、何も見えない。

…あぁ、誰か助けて。 




 「…っ…!」

は起き上がり、自分の身体を抱き締める。

また、この夢だ。身体がダルイ感じがする…。
ジッカラートに戻ってきてから、毎晩この夢を見る。
きっとサルサラの邪気の影響だ。
私だけなのだろうか。他の民たちは大丈夫だろうか。


 「…ねぇ、ばぁちゃん」

居間で朝食を取りながら、はウメ婆に夢のことについて話した。

「あぁ、それはお前が巫女ゆえ見るのじゃ」

そう言ってウメ婆は茶を啜る。

「サルサラの邪気とお前の霊気は正と負の反対の気を持つが、共に莫大な力を持つ為に共鳴しやすい性質にある。
 だから奴の負の波動を受けやすいのじゃ」
「…それで結界を張る時に力がないと、サルサラの闇に取り込まれるのね?」
「左様。巫女がサルサラにとって一番の脅威であり、一番の獲物。
 巫女を取り込めば、封印を打ち破る程の力を得ることになるからの」

…獲物…か。
私がサルサラに取り込まれたら、サルサラの封印が解ける。
そしたらまたジッカラートは荒れ果てて、いずれは世界にまでその動乱は広がっていくだろう。
私はやはり、結界を張るしかないのだろうか…。

「気分転換でもしてくればよい。
 お前の精神が弱れば、更にサルサラの邪気の影響を受けることになるぞ」
「はーい」

そうしては朝食の後片付けをし、自分の部屋に戻る。

気分転換…かぁ。
確かに何か気分が優れない気がするしなぁ。






「葉月に会いに行こうかな」

「伊吹兄と出かけようかな」

「真織と遊ぼうかな」

「天摩と手合わせでもしようかな」

「海に行こうかな」