『コンコン』

は天摩の庵に上がり、部屋のドアをノックする。

「天摩、久しぶりに手合わせしよ〜!」

部屋を覗くと、笑顔で天摩が迎えてくれた。

「えぇ〜ヤダ☆ たまには遊ぼうよ!」
「私がここに帰ってきてからずっと遊んでるでしょ…」

そう言いながら座り込んだ私の前に、カードが配られる。

「たまには頭を使わなきゃね!!」
「…頭使うの苦手。ババ抜きにしようよ」
「えぇ、2人でぇ!? つまんないよぉ」

とは言いつつ、希望を通してくれる天摩。

そうして、たちの手には溢れんばかりの手札が。

…ジョーカーは…私の方に入っていた。
どうにかしてこれを天摩に選び取ってもらわなければ!



 「えぇっ!? 何で?」

これで4回戦目。は4戦4敗。…全敗だ。

「何で天摩、分かっちゃうの?」
「何でだろうね☆」

笑顔で天摩はカードをシャッフルする。

「何か裏工作してる?」
「してないよ〜☆」
「怪しい!!」

はそう言って天摩に詰め寄った。

「どっかにカード隠したりしてないよね」
「調べてもいいよ」

天摩がカードを床に置き、さぁ、どうぞと手を広げる。

「…じゃあ遠慮なく」

そう言うとは彼の服の上からペタペタと身体検査を始めた。
それでも怪しい感じはいない。

「ん〜、服の内側にはポケットとかはないみたいだしなぁ…」
「あはははっ!くすぐったいよ、ちゃん!!」

天摩が笑いながら身をよじる。

「じっとしてってば!」
「だってくすぐったいもん!――はい、もうおしまい」
「わっ!?」

天摩がの腰に手を回し、ばたりと後ろに倒れ込んだ。
つまりが彼を押し倒したような位置関係である。

「…重いでしょ。放して」
「嬉しい重みだよ☆ っていうかちゃん、軽いし」

離れようとしたが、天摩はガシリと腰に手を回してしまった。

――ね、キスしよっか」
「…え…」

表情は穏やかだが、静かな口調の彼に一瞬ドキリとする。

「…してもいい?」
「…あ、えっと…」

突然のことでどう答えたらいいのかわからない。

ちゃんは俺のこと、嫌い?」
「嫌いじゃないよ!」

これは即答できる。

嫌いなわけない。嫌うわけない。
天摩はいつだって私を好きでいてくれるもの。
こんな私を、普通の女の子と同じように扱ってくれるもの。
でも、それを思うと――胸がジリジリ焦げるような感覚がする。
私は、普通の女の子じゃないし…それに天摩はモテるから…。

「じゃあ、好きになってね。俺のことをさ☆ ――俺、ちゃんを誰にも渡す気、ないから」
「…」

その真剣な眼差しには思考を奪われ、気づけば首を縦に動かしていた。

――ね、キスしよっか」
「…ん」

静かには頷く。
ゆっくり目を閉じると、そっと天摩が首を動かして唇を重ねた。

「…あぁもう、凄い好きだよ」

キスの後、ふと合った目線を恥ずかしそうに逸らしつつ、自分に呆れたような口調で天摩が言う。
そんな彼を見て笑みがこぼれた。

「情けないけど、かなりちゃんのこと、好きみたい」
「私のこと、好きだと情けないの?」
「他のことが見えないくらい好きなんて、何か恰好悪くない?」
「…女としては、嬉しいかも」

は頬が熱くなるのを感じながら自分も目をそらして呟く。

それは、他の女の子なんか目に入らないってこと?
私はいい意味で、天摩にとって特別ってこと?
…今、私ね、とっても嬉しいの。
巫女としてじゃなく女として必要とされてるってこともあるけど、相手が“天摩”だということが嬉しいんだ。

――これが好きってこと?
きっとあのキスが、恋の始まりの合図なんだ。







その後(会話のみ)

「もう1度、しよ☆」
「…え」
「いいじゃん。 ちゃんの気が変わらないうちにいっぱい、ね☆」
「いっぱいなんてしませんっ!」
「じゃあ、今日はもう1度だけ」
「う…」




…というわけで、第4話・天摩編でした。
まとまりのない文章になってしまって申し訳ないです。


それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!!

吉永裕 (2006.1.10)

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