5.マジェスの夜


―マジェス―

険しい山を4日かけて越え、たちは空がオレンジ色になり始める頃、マジェスという町にたどり着いた。
ここには緑色の宝玉、緑玉(りょくぎょく)が代々守護されている。

「ようこそ、マジェスへ。お待ちしておりました、レジェンス王子」

町の入り口で待っていたのはどうやらこの町の長らしい。
50歳ほどの貫禄がある男性であるがどこか穏やかな雰囲気を醸し出している。

「出迎え、感謝する。…久しぶりだな、ユーリよ」
「お久しゅうございます。ささ、どうぞ我が家へ」
「招待、感謝する。…それから、彼らは私の心強き仲間だ」
「ククルです」
「シャルトリューと申します」
「ランといいます」
です」
「話は大臣殿から伺っております。しかし、ご婦人がご一緒とは…」
「彼女は旅の途中で出会った。記憶がないらしくてな。
 記憶が戻るまで我々が保護する事にしたのだ」
「そうでしたか。さすがは未来の王。懐が広うございます」
そうしてたちは町長のユーリの屋敷に招待された。



―屋敷―

 「狭苦しい所ですがどうぞお寛ぎになってください」

ユーリの屋敷はそこまで豪勢な感じではなかったが、暖炉や家具がとても家庭的で温かい家だった。

「食事の準備を致します。少々お待ちください」
「あ、手伝います!」

はユーリの妻に手伝いを申し出る。

「いえいえ、様はお客様ですから」
「でも私、料理作るの好きなんです。この町の料理にも興味あるし。
 お邪魔でなければ、ぜひ手伝わせてください」

彼女の無邪気さに奥方は笑顔になった。

「それではお手伝いをお願いしても良ろしいですか?」
「はい!!」

そうして2人の女性は台所に立ち、料理を開始するのだった。


 「お待たせ〜」

最後の皿をテーブルの上に乗せると、居間で寛いでいた皆を呼びに行く。

「わ、美味しそう!」
「おぉ…豪華だな」
「キャロルさんと一緒に作ったんだ!」

テーブルに並んだ料理は野菜から肉や魚、フルーツまで種類が豊富で、美味しそうな香りを放っていた。

様はとても手際がよろしゅうございました。とても楽しく料理できて嬉しかったです」

ユーリの奥方、キャロルが微笑みの隣に座る。
褒められた彼女は照れつつも嬉しそうに笑っていた。

「それでは温かいうちに頂くとしよう」
「そうですね」

そうして7人は楽しく夕食の時を過ごした。


 「…太鼓の音?何か聞こえない?」

夕食が終わり、談笑をしているとかすかに太鼓やラッパの音が聞こえてきた。

「そうでした。今夜から明日の昼にかけてマジェスの創立150周年にあたり祭りが開かれるのです。
 良い時においでになりました」
「お祭り!?」

の目が輝く。

「…行きたいのか?」
「勿論!!」

は外の様子が気になってうずうずしている。

「それでは外に出てみるか」
「皆が開放的になっておりますゆえ、お気をつけになってくださいませ。
 貴重品などはうちに置いて出かけになる方がよろしいでしょう」
「わかりました」
「じゃあ行きましょう!!」
「わーい」

そうして5人は賑わい始めた夜の町に出た。


 町はキャンドルや装飾布によって夕方とはガラリと姿を変えていた。

「わ、きれ〜!」

町の広場には綺麗な服を着た女性ダンサーと彼女の踊る曲を演奏する合奏団がおり、
明るくライトアップされた舞台で楽しげな曲に合わせて女性は激しくダンスを踊る。
いつもならとっくに閉店している店も今夜は華やかな装飾をし、目玉商品を売り出している。
そんな町の雰囲気には浮き足立って人の波にさらわれ4人とはぐれてしまった。

「…どうしよう」

(誰でもいいから見つけないと…)


「レジェンス〜!!」

「ククル〜!!」

「シャルトリューさ〜ん!!」

「ランく〜ん!!」