はレジェンスらしき青年の後姿を見てその人物に向かって叫ぶ。
「あ…」
の声が届いたのか、その青年は振り返る。
「!!」
そう叫んでレジェンスが駆け寄ってきた。
「よかった、無事で…」
呼吸を整えるのも忘れて、彼は彼女を心配そうに見つめる。
「そんな、心配し過ぎだよ」
(でも嬉しいけど)
「…誰かに連れ去られてしまったのではないかと思った」
突然レジェンスが強く抱きしめる。
「れ、レジェンス…?」
彼の行動に鼓動が激しくなる心臓。
(早く落ち着かせないと。レジェンスに聞こえちゃう…)
しかし一向にの鼓動は収まらない。
「私が守ると言っておきながら、独りにしてすまなかった」
レジェンスが申し訳なさそうな、自分に対して怒っているような表情でを見つめる。
「…いいよ。だってレジェンス、私の事心配して捜してくれたんでしょ?…ありがとね」
そう言うとレジェンスは優しく微笑んだ。
周りの楽器の音も人の音もには聞こえなかった。
なのに自分の心臓の音と彼の透き通るような声がやけに体中に響く。
『ドーン!!』
突如、大きな花火が夜空に上がった。
「わ、綺麗…」
思わず空を見上げたはその花火の美しさに見惚れる。
そんな彼女を見てレジェンスも微笑んだ。
「…。今日の記念に何か贈りたいのだが」
「え?」
そう言い、レジェンスはの腰に手を沿え装飾品の店までエスコートする。
「これをそなたに。喜んでくれるだろうか?」
そうしてレジェンスが選んだのは深い緑色の宝石のネックレスだった。
「こんな高価そうなもの、貰えないよ!!」
はあまりにも高価そうだったので心の底から遠慮した。
「どうしてもそなたに贈りたいのだ。…受け取って欲しい」
真剣な表情のレジェンスにそう言われては何も言えず、はそのネックレスをありがたく貰う事にした。
「ありがとう、レジェンス。これ、大事にするね!!」
そう言い、は胸元でキャンドルの光を反射してキラキラと光るネックレスを見つめる。
「あ、この宝石。レジェンスの瞳の色だね」
「そうだな。…もし何かがあって離れ離れになったとしても
私の心はいつもと共にある。不安な時はその石を眺めるといい」
「…うん」
(…レジェンスってやっぱり王子様だ。キザなセリフが似合う…)
レジェンスとは広場に戻った。
するとそこでは人々が楽しそうにダンスをしている。
どうやら場が盛り上がって即興のダンスパーティーになったらしい。
「私たちも踊らない?」
はレジェンスの手を取る。
「あ、でも私踊り方なんてわからないや」
「…私もこのような明るい曲で踊った事はない。初心者同士、楽しもう」
「うん!」
そうして2人はダンスの輪の中に入っていく。
『♪〜♪♪〜』
明るい曲が続く。
最初は周りの人の踊りを真似ていた2人だったが
いつのまにか身体に町の人の精神が乗り移ったかのように無意識で身体を動かしていた。
「ね、レジェンス」
「何だ?」
「私ね、貴方に会えてよかった」
「…私もだ」
2人は繋いだ手に力を込める。
(…このまま…)
はこのまま時が止まれば良いのにと思った。
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