「ククル、どこ〜!?」

辺りを見回すがククルの姿は見えない。

「はぁ…。完璧、はぐれちゃった」

は広場に戻ると、町の人々が楽しそうに踊っていた。
しかし誰も知り合いがいないので彼女は人々の様子を壁にもたれて見つめる。
すると1人の青年とふと目が合った。

「お1人ですか?」
「へ?私?」
「もしよろしければ踊りませんか?」

どうやらダンスの誘いらしい。

「え、でも私仲間とはぐれちゃって…」
「少しくらいいいじゃないですか」

そう言い、その青年は強引にの手を取る。

(え、え、え!? 何この人!?)

「あ、あの
――
!!」

突然聞き慣れた声が名を呼ぶ。

「あ…!」

声の方を向いた彼女の顔に笑顔が浮かんだ。


「何やってんだ、こんなトコで」
「ククル!! よかった、見つかって」

はホッとしているが彼はどこかピリピリしている。

「…というわけで、こいつは俺の連れだから」

そう言い、ククルは青年からの手を奪い、そのまま手を引きダンスの輪の中に入る。
ちょうどその時、明るい曲が終わり、少しムーディーで静かな曲が始まった。
それまで飛び跳ねるように踊っていた男女は身体を寄せ合い、互いを見つめ合う。

「…馬鹿野郎」

ぶっきらぼうにそう言うと、ククルがを抱き寄せる。

「く、ククル…!?」

周りが皆同じような恰好なので目立ちはしないが、それでも恥ずかしさでいっぱいだ。

「ボケッとしやがって」
「…ごめん」

普段なら強がるような言葉が彼の腕の中にいる今は出てこない。

「あのまま強引に連れて行かれたらどうするんだよ」
「うん…。ごめん」

ククルはを抱く腕にさらに力を込める。

「…俺、あちこち捜し回ったんだぜ? なのにやっと見つけたと思ったらお前は男と一緒だし」
「…」
「いつもは強気なくせに全然断らねぇし」
「う…」
「…お前、強引なヤツが好きなのか?」
「え?」

ククルがを見つめる。
驚く彼女の顎を彼はクイっと持ち上げた。

(…こ、これって…)

次第にククルの顔が近づく。
何かの魔法にかかったようには動けずにいた。

「…いいのか?」
「…」

頷く事はできなかったが、嫌だとは思わなかった。

「…お前がいいんなら俺は
――

『ドーン!!』

急な花火に2人は驚く。
広場には再び明るい音楽が流れ始めた。

――ククル、踊ろう!!」
「…ちっ、仕方ねぇな」

そう言いながらも笑顔でククルはの手を取る。

(…何だったんだろ、あれ…)

さっき言いかけた彼の言葉が気になるだった。





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