第6節
「お、戻ってきたか。どうだった、魔物?」
ギルドに戻ってくると、パッシがカウンターからカイトたちに向かって呼びかけた。
「楽勝だったぜ。1人で倒しちまったんだからな」
「いえ、私は別に……!!」
そう言いながら4人はカウンターに座った。
「へぇ、あんたやるじゃん」
「いえいえ、とんでもないですよ」
見るからに年下のパッシに対しては礼儀正しく言葉を返す。
「それにしても最近の新人傭兵は能力高い奴が多いみたいだな。 他のパーティに話聞いても実戦ですぐ使えるって喜んでたぞ」
「ふーん」
「喜ばしいことだよね、傭兵全体のレベルが上がるということは」
「そうだな」
そう言いながらリットンとアステムは出されたお茶や水を飲んで一息入れる。
「はやっぱり傭兵になる為に剣習ったり、魔法の勉強したりとかしたわけ?」
の前にフレッシュジュースを出しながらパッシは尋ねた。
「そうですね。剣は父親に習って、魔法はこの大陸に来てからいろんな本を読んだり
実際に魔方陣使ってみたりとか、やれることはやりました」
「おぉ、新人傭兵の鑑みたいな奴だな。仕事がないからって仕方なく傭兵になる奴らより、
傭兵になりたい為にいろいろ訓練したり勉強したりする奴の方が結局長続きするし、仕事量も増える。
よし、これからにはいい仕事がきたらキープしてやるよ」
「ありがとうございます!」
「おいおい、仕事でこいつを釣るな。ガキの癖に」
「うなっ!」
カイトとキャスカが同時にパッシに突っ込む。
「俺だって一応、ギルド長代理だぜ?
前向きで礼儀正しい人間は信頼できるし、無礼でやる気の無い奴には仕事を任せられねぇ。
仕事の内容で傭兵を選ぶのも俺の仕事なんだよ」
年の割にはしっかりした口調でパッシが言った。
「まぁ、そりゃそうだけどよ」
「うなうな」
「どうしたの、キャスカ。おなかすいた?……パッシさん。ミルクいただけます?」
「おう、ちょっと待ってろよ」
都合よくキャスカはに甘えてみせる。
「……こいつ、反論できねぇとわかって逃げやがったな」
「うなふー!!」
「いって〜!!」
カイトはグイグイとキャスカの耳を引っ張り、そして噛まれた。
「……カイトよ、素直に猫が好きなら好きなりに優しく接すればよいものを」
「どうしてそういう捻くれた表現しかできんのだ」
この数日でそんな光景に見慣れてしまったリットンとアステムは呆れたように呟く。
それを聞いたカイトはうるせぇ!と言ってグラスに注がれた酒をグッと飲み干した。
「第一俺がにやけた顔でキャスカ抱いても気持ち悪いだろうが!」
「うな」
「頷いてんじゃねーか。それにしても、こいつ賢いな」
そう言いながらパッシが少し暖めたミルクの皿をカウンターに置く。
「よかったね、キャスカ。はい、どーぞ」
の許しを貰うとキャスカはペチャペチャとミルクを飲み始めた。
それを微笑みながら見つめるのはとカイト。
どうやら本当にカイトは猫が好きらしい。
そんなカイトを見てアステム、リットン、パッシの3人は軽く苦笑いをした。
――酒場に移動して数時間後。
すっかり夜も更けてしまった。
そろそろ家に戻ろうとリットンが言うので全員は立ち上がる。
「俺は他の店で飲んでから帰るぞ。全然酔ってないしな」
「ま、まだ飲むんですかっ!?」
ケロリとしたカイトには驚きの声を上げる。
「この間のツケはまだ払い終わってないんだろう」
「う……じゃああと1杯にしとくから。なっ、頼む!!」
アステムの冷たい視線にカイトは手を合わせて懇願する。
「……パーティの金には手を出すなよ」
「勿論だって!!」
そう言うとカイトはご機嫌な笑顔を浮かべた。
「何事も程々だぞ、カイト。それでは、私は真っ直ぐ帰るとしよう。アステムはどうする?」
「……俺は少し歩いてから帰る」
「おう。じゃあこれで解散な」
そう言って男たちがパラパラとその場を立ち去っていく。
残されたはえ?え?と思いながらある人物を追いかけた。
「カイトさんっ!」
「アステムさんっ!」
「リットンさんっ!」