「リットンさん」
は店で会計を済ませるリットンに歩み寄った。
「おや、。君もまっすぐ家に帰るのかい?」
「はい。今日はちょっと疲れました」
「そうか、では一緒に帰ろう。君に何かあったら大変だからね」
そう言うと、リットンは店のドアを開けて彼女にどうぞ、と手で合図をする。
そんなことをされた経験がないは照れながら礼を言って先に店から出た。
「リットンさんって何もかも上品ですね……」
「そう言われると嬉しいな。 こういう仕事ではなりふり構わないことが多いのでね。
自分の行動が気にはなっていたのだよ」
リットンはの歩く速さにあわせてゆっくりと歩く。
端正な顔立ちで上品で礼儀正しい立ち振る舞い、重層な防具。
一見これだけ見たら何処かの王国の近衛兵や騎士にも見える。
「、身体は大丈夫かい?」
「はい。ちょっと眠いだけで、ケガもありませんし大丈夫です。 それに依頼人の方の喜んだ笑顔みたら元気が出ました!」
そう言ってが笑顔を見せるとリットンも微笑んだ。
「は本当に人の役に立てるのが嬉しいみたいだね」
「はい!自分の行動で誰かが喜んでくれるなら、こんなに嬉しいことってありません」
「本当に君は傭兵の鑑だね」
彼は穏やかな顔でうんうんと何度も頷く。
「キャスカは疲れてないかい?」
「なぅ」
するとリットンはキャスカの頬を人差し指でそっと撫でる。
その様子を見ていたは思わず言葉を発した。
「何かキャスカ、リットンさんに懐いてるみたいですね。 カイトさんとか噛み付かれてばかりなのに」
「カイトは愛情表現が下手なだけさ。誰だって耳を引っ張られたりシッポを握られたら嫌だろう?」
「まぁ、確かに」
は苦笑する。
「でも、キャスカはあまり触られるのが好きじゃないみたいだから、撫でるのはこのくらいにしておこうかな」
そうしてリットンは手を引いた。
「リットンさんってキャスカの気持ちが分かるみたい」
「……そうかも……しれないね」
静かに微笑む彼の瞳が少し揺らぐが、すぐにフッと優しく笑ってみせる。
「きっとリットンさんは優しいから、人の言葉が話せないキャスカの気持ちも汲み取ることができるんでしょうね。
そういうのって素敵です」
のその言葉にリットンは驚きの表情を見せる。
「……素敵なのは君だよ、」
そう言って彼は目を細めた。
「君がパーティに入ってくれてよかった」
「リットンさん……」
はリットンの笑顔に足を止める。
ぼんやりと2人を照らす街灯が更に彼の温かい雰囲気を醸し出す。
「君と一緒に仕事するのが毎日の楽しみになりそうだよ」
「……私も楽しみです」
すっと家のドアを開けたリットンを見上げて、は先に家の中に入る。
「それじゃ、お茶でも入れようか」
「じゃあ私はお風呂沸かします」
暗い家に温かく穏やかな光が灯った。
今回は分岐しました。なんとか、ですが。
さて、リットンはかなりのヘタレ設定のつもりが
紳士になってしまいました。
でも紳士ってのがよくわからないので、似非紳士で申し訳ありません。
一応、リットンもそれなりの物語を考えていますので温かい目で見守ってください……。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!!
吉永裕 (2006.2.15)
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