第4節
「……それにしてもさっきアローア洞窟に行った時は魔物なんていなかったよな」
もう一度、カイトたちは依頼書を見て、パッシの所へやって来た。
自分たちが訪れた際には魔物の気配など全く感じなかったからだ。
「あぁ、それか。時々現れるんだとよ。 依頼主は泉の中に住み着いてるんじゃないかって言ってたぜ。
普段は寝てるか大人しくしてるんだろうけど、攻撃されたりとか腹が減った時に暴れるんじゃないか?」
パッシがバンッと依頼書に判を押す。
「激しく戦って洞窟が崩れなきゃいいけどな」
「そんなに手強い魔物なんですか!?」
はギョッとした表情でカイトを見つめた。
「まぁ、何とかなるんじゃねーの?一応、仕事のランクはBランクだし」
「そ、そうですね……」
「何だったらは戦闘になったら“防御”してたらいいさ。 私の後ろに隠れているといい」
リットンは腕を組み仰け反っている。
「それはいつもお前がとってる戦法だろ」
「やっと戦いに参加する気になったか」
カイトとアステムは横目でそんな彼を見た。
「わ、私だってシルバーLvの傭兵だ!ゴールドのお前達には劣るが、女性の1人や2人くらい守る力はあるぞ!」
リットンはドンと胸を叩く。
「リットンさん、頼りにしてますね」
3人を見て楽しげには微笑んだ。
やれやれと言った様子でパッシは4人を送り出す。
「また同じ道を行くのかよ……」
「任務の為とはいえ、うんざりするな」
「今日は家に戻って出発は明日にしないか?も初仕事で疲れているだろう」
「いえ、私は全然――」
「そっか、そうだよな。じゃあ、今日はこのくらいにすっか」
そう言って3人は「私なら大丈夫ですよ!」と拳を握るを半ば強引に共同宿舎へと連れ戻った。
サンティアカを拠点とする傭兵たちは共同宿舎と呼ばれる家を複数人で借りている。
殆どがパーティを組んでいる者と共同生活をするようだが、稼ぎの良い者は一人用の家を借りる者もいる。
「お前、ここ使えよ。まだ家、決まってないんだろ?」
そう言ってカイトはを部屋に案内した。
部屋は備えつきのベッドや机、タンス、そして照明のランプがあるだけの部屋だった。
「え!? 私も一緒に住んでいいんですか?」
「あぁ。もともとここは一家族用の一軒屋だからな。人数が多い方が賃貸料、安くなるし。 お前がよければ使ってくれよ」
「嬉しいです!私、どこに行っても断られちゃって……」
「まぁ、キャスカを連れてたら断られるだろうな」
アステムがの肩の上のキャスカを見る。
「……そうですね。傭兵さんならともかく、一般の人には尚更受け入れられないですよね」
少し寂しげな表情を見せる。
しかしそんな彼女を元気づけるようにリットンが肩に手を乗せた。
「仕方ないさ。人は何事もまずは外見でしか判断できない生き物だ。
それでも時が経つにつれてやキャスカのことをわかってくれる人たちが増えてくるさ」
「……そうですね。その為にも一生懸命、仕事しなきゃ!ね、キャスカ!!」
リットンの言葉では微笑み、キャスカの頭を撫でた。
そんな彼女の頬にキャスカは頭を擦り付ける。
「じゃあ、夕食まで好きなように過ごしていいからな」
「はい」
そうしてカイトたちはの部屋を後にした。
「じゃあ、何をしようかな……」
・剣の鍛錬
・少し昼寝
・荷物の整理