「……」
「……どこが“私は大丈夫ですよ!”だよ。飯も食わずに眠りこけてるじゃねーか」

 夕食だと呼びに来た時も起きず、更に夕食が終わった後、カイトが食事を持ってきた今ですらは目を覚まさない。

「めしだぞ〜。飯を食え〜!」
「ぅ……」
「うなうなっ!」

 の肩を揺らすカイトに向かってキャスカが鳴く。

「何だよ、俺はこいつの健康を考えて起こしてやってんだぜ?」
「うなうな〜!」
「触るなって言ってんのか?……まさかな」

 独り言を言いながら、カイトは眠り続ける彼女を見つめた。

「……サーシャ……」

 思わずカイトの口から零れた言葉。
その言葉に彼自身も驚くが、落ち着きを取り戻して静かに胸ポケットの中からロケットペンダントを取り出した。
そしてそっと目を閉じる。

「……お前と同い年くらいかな」
「誰がです?」
「わっ!?」

 何気なく呟いた自分に突然声をかけられ、カイトは驚愕した。
しかしいつもの調子を取り戻してペンダントをささっと元の位置に戻す。

「やっと起きたのかよ。大丈夫か?」
「はい。でも、カイトさんがどうしてここに?」
「飯を持ってきたんだよ。お前、呼んでも全然目、覚まさねーから」

 そう言って、ベッドサイドの上に置かれた食事を指差す。
そこには干し肉と根菜を煮込んだスープとパンが置かれていた。

「わっ!すみません!! ちょっとだけのつもりだったんですけど……」
「それだけ疲れてたんだろ。まぁ、それは置いといて飯はちゃんと食えよ。明日は今日よりハードなんだからな」
「はい!」

 そう言うと、カイトはふっと笑って立ち上がった。

「あ、カイトさん。さっき、誰のこと言ってたんですか?」
「ん?あぁ、あれは……妹だよ。お前と同い年だったと思ってな」

 そう言うと手を挙げて部屋から出て行く。

「……同い年、だった? カイトさんの妹さんって……?」

 は意味が分からず閉められたドアを暫く見つめていた。





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