第4章 第2節
カイトは帝国軍の制服らしき詰襟の服を来た守衛にメダルとギルドからの書状を見せた。
は魔王軍の装備に明るくないのでこの島でどれくらい普及しているものなのかは分からないけれども
傭兵団ではあまり見たことのない型の銃が守衛のレッグホルスターに装着されている。
恐らく帝国軍内で配備されているものなのだろう。
銃が当たり前の土地では自分たちの直接攻撃用の武器は役に立たないかもしれない。
そう考えた途端にはエウリードの施設へ向かうことが恐ろしくなった。
エウリードの部下が何人いるのかも、施設内部にどんな設備があるのかもわからない。
数十人に取り囲まれて一斉射撃されたら魔法でも防ぎきれないだろう。
そうなったら全滅してしまう。それだけは何としても避けなければ。
「……顔色が優れませんが」
「あ、いえ。
傭兵になって初めてこちら側に来たので少し緊張していまして」
不安が顔に出ていたのか守衛の一人に声をかけられたは慌てて笑顔を作った。
そんな彼女の様子が幸い真剣さによる緊張と伝わったのか守衛は心なしか穏やかな表情で門を開けた。
「そうですか。それはご武運を」
「はい、ありがとうございます。しっかりお仕事してきます」
ギルド長が発行した正式なものなので当たり前ではあるが怪しまれることもなくたちは関所を通過し、クントの町へ入る。
関所は鉄材が使用された建物だったが、町は石造りの家の方が多かった。
しかしながらサンティアカやマラダイのように噴水などは見られない。
にしてみれば真砂土を用いた土系舗装はどちらかというと故郷の村に似ているように思えた。
風が土埃の匂いを運んでくるところも何だか似ている。
「さてと……皆、必要なものはここで揃えておいてくれよ」
クントのことをよく知らないにカイトは店の場所を教えた。
どうやら帝国軍領では自分で薬草やハーブを調合するのではなく既に調合された薬が売られているらしいし、
武器に関しても鍛冶屋で鍛えてもらい同じものを長く使う者よりも、既製品を買う者の方が多いそうだ。
なのでクントから先では手に入らない材料もあるので、エウリードの施設で戦闘になることも考えて
ここで最終的な装備と所持品を決定しなければならないのだ。
勿論、簡単な傷薬だけでなく高額ではあるが銃なども他の町でも手に入れられるけれども。
カイトに案内されるままには各店で買い物を済ませた。
相手が遠距離から襲ってきた時の為に目眩まし用の閃光玉やけむり玉をいつもより少し多めに買い、
既製品の止血剤や包帯も買うことにした。出血が激しくてショック状態になることも有り得る。
爪や牙などで襲ってくる獣型魔物たちとは違うのだ、負傷の種類も変わってくるだろう。
あまり量が多くなりすぎても邪魔になってしまうが、もしもの時のことを考えるのは悪いことではない筈だ。
は咄嗟に気になっている人物を探して目を彷徨わせた。
・カイトは自分のすぐ右隣にいた。
・アステムはいつの間にかいなくなっていた。
・向かいの店で買い物をしていたリットンと目が合った。
・周囲を見渡したがレディネスの姿はなかった。