第2章 第7節
「リットンさん、ですよね……?」
暗い部屋にぼんやりと浮かび上がって見える血まみれの白い服はいつも彼が着ている服だった。
「っ……うぁあっっああ!」
の顔を見ると彼はピクリと身体を震わせ、声を上げながら後ろへ下がる。
「あの、怪我、……大丈夫ですか?」
魔物のような姿をしている彼に少し恐怖を抱いたけれども、はリットンの身体の方が心配だった。
髪の毛やツメが10センチ以上も伸び、目も紫色に光っているが、それ以外は姿形はリットンそのままなのだ。
彼が時折見せた苦しげな表情はきっと何か今の姿に関することに起因するに違いない。
そう思い、はゆっくりと彼に近づいていく。
「ぁああああっ寄るなっっっ……嫌だっっ…………来るな!!!」
「――っあ!」
手を伸ばした瞬間、右腕に鋭い痛みが走った。
破れた服の下からじわりと黒い染みが滲み広がっていく。
「ああっ……まただ……また傷つけてしまった!!!!…………もお……いやだっ!!
あぁ、っっっ――離れろ……っどこか遠くへ……っぎゃああああああ!!!!!」
「リットンさん!?」
彼女の血を見るとリットンは頭を抱えて、地面にゴロゴロとのた打ち回りながら叫び始めた。
はその壮絶な姿に動くことができない。
「「!!!」」
するとカイトらの声が聞こえた。
どうやら彼らが戻ってきたらしい。
「っ!今日は――今はダメなんだ!!」
「手を怪我したのか!?」
やって来たカイトは呆然と立ち尽くしたの左手を強く引いてリットンから距離を取り、
アステムは彼女の腕の傷を見て、慌てて止血をする。
「っ……ああぁっっ畜生!」
そう叫ぶと、それまで唸っていたリットンは窓ガラスを破り、そこから外へと飛び出していった。
「リットンさん!!!!」
は彼の名を呼ぶ。
「どうしたらいいの、カイトさん!?」
「アステムさん、どうしよう!」
リットンを追う