「追わなきゃ……」
「行くな!!! ――!」
カイトの制止する手と声を無視し、も窓から飛び出しリットンを追った。
――ダメだ。
あんな悲しい顔をしたままの彼を放っておけない。
だって私のせいだもの。私が無闇に近づいたから、リットンさんは……っ。
皆が近づかないように、色々と気を遣ってくれてたのに、私が勝手に……私のせいだ――!
通りに出ると激しい雨が降り始めた。
雨に打たれて傷口がジンジンと痛むが、それ以上に胸がナイフで切り刻まれたような痛みを放っていた。
今まで何も知らなかったことへの情けなさ。
そして、もしかしたらこのままリットンはいなくなってしまうのではないかという不安がを襲う。
「嫌だ! 私、まだリットンさんのこと、何も知らないのに……!!!」
涙と雨で前が見えず、何度もは転んで濡れた地面に身体を打ち付けるが、それでも全速力で街中を駆け回った。
彼の向かいそうな所なんてまるで見当も付かなかった。
今までは常に傍にいた気がするのに。
後ろを向くと「お茶でもいかがかな?」と優しい笑顔で言ってくれていたのに。
今はどこにも彼の温もりを感じられない。
「リットンさん、リットンさん……っ」
は橋の欄干にすがる様に泣き崩れる。
するとキラリと光るものが目に入った。
――あれは…………!
そうして急いで川の岸辺へと走ると、石と石の間に挟まっていた金の懐中時計を拾い上げる。
「リットンさんの……だわ。 もしかしたら、この上流に……」
他の場所を考えている暇など無かった。
今の自分には、僅かな可能性でも全力で向かうことしかできない。
は上流に向かって走り始めた。
「……っ――くそっ…………臭いが取れない……――っ!」
雨の中、川の中に入ってジャブジャブと身体を洗っていた男が振り返る。
「――、か」
彼の後ろには涙と雨で頬を塗らした少女が立っていた。
「――寄るなと言っただろ。バカが……」
いつもとは違う険しい表情で彼が口を開く。
「……あ、の」
彼の言葉には表情を曇らせた。
「くそっ……、お前の血の臭いが手に染み付いて取れねぇんだよ! ――だから……嫌だったのに」
「……ごめんなさい。……何も、知らないくせに……私が……。 でもリットンさん、怪我してるし――」
「寄るな!!!!」
傍に行こうとしたをリットンが一喝する。
その声に彼女はビクっと身体を振るわせた。
しかしキッと強い視線で彼を見つめると、ゆっくりと彼に近づいていく。
「近づくなと言っているだろうが!!!」
手で引っ掻くように威嚇されるが、は構わず歩を進めた。
「ッ、分からない奴だな!! 近寄るんじゃな――」
「嫌ですっっ!!!」
雨の音と川の流れる音の中に、の高い声が響く。
「――このまま……傍にも近寄れないなんて嫌……。
私、もっとリットンさんのこと、知りたいんですっ!」
――リットンさんが……好きだから。
静かに涙を流しながら、はゆっくりと呟いた。
というわけで、久しぶりの分岐でした^^;
……が、まだイベントは続きます。
いきなり凶暴化(?)したリットンと、いきなり告るヒロインさん……(;´▽`A``
リットンルートなので、こんな流れ^^;
突然の恋愛イベントでびっくりした方もいらっしゃるでしょうが……。
この後の展開は想像がつくでしょうけれども……まぁ次回をお待ちくださいませ^^;
こんな感じで、いずれアステムのイベントがありますので
彼らにも興味を持っていただけたら読んでみてください。(物凄い先ですが……)
では、読んでくださったお客様、ありがとうございました!!
吉永裕 (2007.11.12)
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