隣の石田くん 第5話?
「絶対許可しないっ!」
『ダンっ!!』
と自分でも驚くくらい激しく机を叩いていた。
そこまで怒りを露わにする性格じゃないけれど、今回は別問題。
「俺も同じことするんだからいいだろ」
「よくないっ!」
珍しく石田くんに私は強く反抗する。
何故なら――
「何で私が賞品にならなきゃならないのよ!!!!」
――事の始まりは30分程前。
「じゃあ今日は文化祭の生徒会主催の企画について色々意見を出してくれ」
新生徒会、初めての大きな仕事とあって、会長の石田くんは物凄くやる気満々だ。
勿論、基本的に真面目な私や他のメンバーも職に就いたからにはと真剣である。
そうして各クラスや部活で何気に友達や後輩などから聞き出したアイデアをそれぞれ報告すると東ちゃんが黒板に書いていく。
・生徒会主催のダンスパーティー
・ 〃 カラオケ大会
・サバイバルゲーム(生徒会vs参加者)
・メイド&執事喫茶
「…何だか…異色ね…」
私はポツリと呟いた。
「サバイバルゲームは面白そうだけど…。
メイド&執事喫茶って…誰よ、こんな個人的な趣味持ち出した奴」
ミヤも呆れた顔で呟いた。
すると遠野くんも頷く。
「このメンバーだけで店を切り盛りするのは無理だろ」
「っていうか…石田が執事で接客なんてできるわけないじゃん」
「それどういう意味だよ、東島」
ケッと東ちゃんが馬鹿にしたように笑うと石田くんはムッとした表情を見せた。
でも実際に私も彼には無理だと思う。
「そういえば、サバイバルゲームを提案したクラスの奴らが言ってたんだけど、
何か賞品が欲しいって。そしたら参加してもいいよって言ってた」
悠樹くんがそう言うと、石田くんはうーんと唸る。
「まぁ、確かに賞品があるって言えばちょっとは参加者が増えるかもな」
「でも…賞品ねぇ…」
さすがに高校生ともなれば、百円均一などで購入したようなものは駄目だろうし、
かといって自費で色んなモノを買える程、生徒会は潤っていない。
「あ、そうだ!後輩が石田とデートしたいって言ってた」
「それって…ただの願望じゃ――イデデデデ!」
東ちゃんに突っ込みを入れようとしていた遠野くんのこめかみに彼女の拳がグリグリと炸裂する。
「だからさ、石田を賞品にすればいいのよ。1日デート権を得るって感じでさ」
「あ、それ俺の友達も同じようなこと言ってた。 1日、及川を貸し切りたいって」
悠樹くんのひと言に「えぇっ!?」と私は叫び声を上げる。
「貸し切りって…私は道具や施設じゃ――」
「それいいな!そうすっか」
私の言葉を遮るように石田くんが笑顔で立ち上がった。
「じゃあサバイバルゲームじゃ賞品をあげられる人数が限定できないから鬼ごっこっていうのはどうだ?
で、俺と及川を捕まえた奴は1日貸し切りってことで。
丁度、文化祭の次の日は代休だし、その日にデートってことにすればいいんじゃねーの?」
「あのねぇ…っ!」
自分が賞品になってもいいのか!? と私は会長の心理を理解しかねて声を上げる。
「何か楽しそー!」
「頑張って逃げろよ」
ミヤや遠野くんも賛成のようだ。
「ちょ、ちょっと待って!石田くんはいいかもしれないけど私は――」
「じゃあルールとか考えようぜ」
「――だから…っ私の話を聞けっ!!!!」
私はガタンと立ち上がった。
「絶対許可しないっ!」
「俺も同じことするんだからいいだろ」
「よくないっ!」
「大体、何で私が賞品にならなきゃならないのよ!!!!」
生徒会室に響く私の声。
「…石田くんはそりゃ人気者だから参加者は増えるかもしれないけど、私を賞品にした所で参加者は増えないでしょ」
皆の視線を受けて少々冷静さを取り戻しつつ、私は石田くんをジロリと見据える。
するとミヤが「あぁあぁ、またこの子は…」と呆れた声を上げた。
「ホント、美桜は鈍いわねー。あんた、結構人気よ?
運動会の写真、秘かに男子の間で売買されてたし」
「な、何それ!?」
完全に初耳だ。
「…私の写真なんか買って何するんだろ…。
――もしかしてっ!!! ……私に呪いをかける為とか!?」
「アホかっ!!!」
独りでブツブツ言っていると、ペシっと東ちゃんに頭を殴られた。
それでも理解のできない私は殴られて傾いた状態のまま考える。
「まぁ、及川を好きなマニアな奴もいるってことだよ」
「…そのマニアの中に私を放り込むというのか」
石田くんの言葉に私はどっと落ち込む。
…尚更、賞品にされるのが嫌になった。
そりゃ、人に好かれるのは悪い気がしないけれども
好きな人には目もくれられず、他の人に裏で写真を売買されているなんて…。
――切な過ぎる…っ!
「まぁ…頑張って。嫌なら逃げ切るしかないな」
落ち込みまくっている私に悠樹くんが励まし…なのだろうか…そんな言葉をかけた。
…悠樹くんになら捕まってもいいのに。
いや寧ろ捕まりたい。
という邪な思いは置いておいて。
そんなことを考えている間に話はドンドン進められ、ルールや時間などが決められていた。
…人の気持ちも知らないでっ!!!
よく分からない人とデートだなんて絶対嫌だ!
こうなったら本気で、何があっても何をしてでも逃げ切ってやるっ!!
――と私は机の下で拳を握り締めた。
なんとなくありがちな展開になってきました。
それでも元のネタは私がこっそりと恋愛シュミレーションツクール2で制作した『the 生徒会☆』というゲームから来てます。
そのゲームでは主人公が生徒会長なんですけどもね。
どうにもそのゲームは日の目を見れそうにないので、ここでネタを披露することにしました。
…というわけで、主人公さんの運命はいかに!?
吉永裕 (2008.12.14)
次に進む メニューに戻る