隣の石田くん 第2話?




 「きゃぁあ!石田先輩っ!!」
「恰好いい〜!!!」

周りから黄色い声が聞こえて来る。

今日は体育祭。
今、石田くんが2年生の200mリレーで1人抜いてトップに躍り出たのだ。
もう辺りの後輩や先輩たちまでも盛り上がっちゃって大変大変。

 …気に入らない。
 あんな野蛮なジャイ●ンみたいな石田くんのどこがいいわけ!?
 信じられない。

そう呟いて私は次の走者に目をやった。
すると私の好きな人がアンカーで立っている。
断然、あの人の方が恰好いいわよ――と私はドキドキしながら違うチームの彼を見つめた。


 「おい、見てたかよ!?」
「うん。見てた見てた」

私はコクコクと頷いて溜息をつく。
リレーが終わって慌てて帰ってきた彼が私の横に並んで座った。今から二人三脚なのだ。

…何でこいつとなんだよ。

と今まで何度呟いたことか。
練習で足が遅いと何度も殴られた日々よ。
今日でそれから解放されるのね〜!と、私は晴々とした表情で確認の為の点呼に返事をする。

「俺、すげぇ人気じゃね?」
「あーそうね。中身、知らないから」
「何だとー!」

『バシッ』

…今から互いの呼吸を合わせる競技の前に殴らないでくれ…。
一気にテンションが下がった私だった。


 …で。
何だかんだいって負けず嫌いの私たちはスタート前、ブーブー言っていたにもかかわらず、ダントツで1位になってしまった。
そして、人気者の誰かさんのせいで写真部に囲まれて今、パシャパシャとフラッシュたかれてます。

 …迷惑。

するとある人物と目が合った。
アレは恐らく…

「石田くん、彼女が来てるよ」
「マジっ!?」

私が彼女のいる所を教えると、彼は急いで走っていった。

 …なんなんだ、一体!

私は呆気に取られる写真部の隙間をぬって応援席に戻る。

 遠くに見える石田くんと彼女さんは楽しそうに話していた。
そうして暫くすると彼女さんは帰っていく。

「あれー、昼ゴハン一緒に食べるんじゃないの?」

戻ってきた石田くんに私は話しかける。

「おう。昼から用事があるからって帰っていった」
「…ふ〜ん。残念だね。恰好いい姿を見せれなくて」
「うるせ!」

『バシッ』

…だからなんでそうすぐ殴るの…。あんた、おばちゃん!?
などと思いながら、午前の競技が終了した。



 「それ、あたひの!!」
「少しくらいいいだろっ!」

噛み付かれそうな勢いでお茶を奪われた私はうぅ〜っと睨みながらおにぎりを頬張っていた。
大体、何であんたと一緒にご飯食べなきゃなんないのよ!と思いながら私たちはいつもの教室で昼食を食べる。

「…なぁ、お前はさぁ」
「ん?」
「何で変わんねーんだ?」
「は?」

いきなり意味の分からないことを言い出す彼に私は訝しげなまなざしを向ける。

「昔から俺に対して態度変わんねーから。 …他の女たちはキャーキャー言うのにお前、全然言わねーし」
「石田くんが私に対しての態度を変えないから、私だって変わんないわよ」
「そうかなー」

…そうです。
私はウンウン頷く。

「だって昔から及川のこと、知ってるし。今更、女扱いしてもなぁ」
「あぁ、すみませんねぇ。女らしくなくて」

フッと私は笑って窓の外に目をやる。

「そういうわけじゃねーけど!」

『ダン!』

「!? …な、なに!?」

いきなり石田くんが机を叩くのでビクリと驚いてしまった。

「なんなんだろーな。何かスッキリしねぇ」
「知らないわよ。私に言われても」

そう言う彼はガシガシと頭を掻いている。

 ――すっかり姿形は変わっちゃったけど…

「…そんな仕草は昔から全然変わらないね」

ポロリと口から言葉が漏れた。
昔のガキ大将のような彼の姿がダブって見えて、ふふっと笑ってしまう。

「――お前も全然変わんねぇ。そうやっていつも俺の上にいる…」
「え?」

意味が分からなくて私はじっと彼の横顔を見つめる。

 ――あれ?いつからそんなに大人びた目をするようになったの?
 石田くんの物憂げな表情なんて初めて見た。
 彼は今、何を考えているんだろう。
 こんなに長い間、彼を見てきたけど、彼が何を考えているのかわからないなんて今までなかった。

――そんなこんなで、私たちの腐れ縁は少し不透明な関係になっていくのです。










こうやって見ると、凄いすかすかな話ですねぇ。
行間が無駄に多い…。

吉永裕 (2008.12.14)

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