「「遊園地?」」
俺と香川が同時に声を発した。
夏休み最後の課外授業が終わると、真田と坂本が俺たちに言ったのだ。
「高校最後の夏なんだし、1日くらい羽目を外してもいいじゃない!」
そういうわけで、皆で遊びに行くことになったのである。
――受験まであと少し。
これが本当に最後になりそうだ。
皆で遊びに行くことも、香川の普段着姿を見ることも。
「皆で遊びに行くなんて、最初で最後になりそうだね」
俺の考えていたことを、帰りの電車の中で向かいに座っている香川が言った。
課外授業が終わるのは3時過ぎなので車内は空席が目立つ。
坂本と香川は買い物には一緒に行ったことはあるらしいのだが、遊園地のような所に行くのは初めてらしい。
なので俺の前に座っている女の子2人はとてもワクワクしているようだ。
「じゃあ、明日は9時23分の電車だからね」
「了解了解!じゃあね」
「うん、また明日」
香川が電車を降りると、その車内には俺と坂本だけになった。
坂本は香川の後姿を見ながら穏やかな表情を浮かべる。
「冴子、元気になって良かったね。拓ちゃんと教室で話してから、悩みが吹っ切れたみたい。
まだ例の人を想ってるのは事実だけど、もうつらくはないってさ。ホント、良かったね」
そう言うと俺の方を見た。
「拓ちゃんって冴子のこと、よく分かってるよね。一体、どんな魔法を使って冴子を元気にしたのよ?」
その言葉には深い意味は込められていないようだったが、
俺は何だか心の中を見透かされているような気がして、表情を崩さないように窓の外の流れる景色に目をやる。
「自分も同じ状況だったら…って考えただけだよ。だったら時間が経たないことには気持ちの整理はつかないだろうなって思って。
無理に忘れようとするからきつくなるわけで…。だから無理に忘れようとしなくていいんじゃないの、って言っただけ。
でも偉そうなこと言っちゃったなって後で恥ずかしくなって香川さんの顔、見れなかったけど」
そう言うと坂本は何度も頷いた。
「…そうだね。時間が必要だったのよね、冴子には」
そんなことを話していると、俺たちの降りる駅に着いた。
俺たちは香川を自分のことよりも心配しているなぁ、と坂本と2人で苦笑する。
「それでもあの子はいつも気づかない所で私たち以上に私たちのことを気遣ってくれてるんだけど」
そう言って坂本が飛び降りるように電車から降りる。
俺は頷いて彼女の後に続いてホームへと足を下ろした。
−つづく−
お久しぶりです。
1ヶ月ぶりの更新…^^;
なのに短くてすみませんm(_ _)m
ヒロインの冴子さん抜きで話が進むことが多くてすみません。
周りの連中の方が目立ってますね〜^^;
ちなみに、拓哉と坂本さんは小・中学校が一緒。
物凄く田舎の学校なので人数が少なく、仲がいい設定。
それはともかく、この話ってちょっと古臭い青春純情恋愛小説のつもりなんですが、
どいつもこいつも哀愁漂う青臭い奴らばかりですな…。
今時の高校生はどうなんでしょう…。
というわけで、次回は遊園地に皆で行きます。
それでは、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!
是非またいらしてくださいね^^
吉永裕 (2006.9.14)
次に進む メニューに戻る