「おざきくん」
「あの…先生、小澤です」

俺は奈良の大学にいた。
何故か研究室の教授からは「おざき」と覚えられていて、いつも訂正するのだが3日ほど経つとまた間違った呼び方をされる。


――3年前、高校3年生の秋から俺は猛勉強し、絶対無理だと誰からも言われていたこの大学に合格したのだった。
真田は長崎の大学、坂本は熊本の大学、そして香川は山口の大学に合格した。
俺だけが離れてしまったように思うが、未だに真田とはメールをし合っているし、
夏休み後急激に仲良くなって付き合い始めた坂本と真田の仲は続いている。
また坂本と香川も時々メールを送ったり電話をしたりしているそうだ。

俺は高校3年生の3学期になる頃には、自主的だったけれど殆ど香川と接することがなくなったので、彼女の電話番号もメールアドレスも知らない。
いい加減、あの時の空気を読まなかった自分の言葉を謝ろうと思うのだが、
俺の気持ちは依然変化しておらず、ふとした時にあの時のことが鮮明に浮かび上がり苦しめるので、
あと10年はかかるだろうなぁ、と謝罪は先延ばしになり続けている。

 そんな俺に転機が訪れたのは大学2年の夏休みに奈良に残ってアルバイトをしていた時である。
香川と同じ大学に通っている1年の女の子が地元に戻ってきた際に俺のバイト先で働き始めたのだ。
はじめは彼女と同じ大学というのは知らずに接していたのだけれど、ある日、昔話をした時にその子はあれ?という顔をしたかと思うと

「その人、サークルの先輩に似てる」

と言ったので、俺が冗談で

「もしかして香川冴子さんでしょ」

と言うと、彼女は驚いて声も出ないようなので

「本当に、香川さんなの?」

と俺が尋ねると彼女は何度も頷いた。

「そうです!凄い、何だか運命って感じですね」

彼女はそう言って、香川が開設しているというブログのURLを教えてくれた。

「冴子先輩ってあんなに綺麗で性格も最高なのに彼氏ずっといないんです。聞く限り今までで一度も、ですよ?
 先輩、もしかして好きな人いるのかなぁって思ったりもするんですけど、いつも笑ってごまかされちゃうし。
 …小澤さんと冴子先輩との関係はよく分かりませんけど、何かの縁ですし連絡取ってみたらどうです?
 あれだったら携帯の連絡先も教えますけど」

そんな彼女の言葉に首を振った。
携帯に直接連絡を入れるような勇気など今の自分にはなかったし、人づてで連絡先を手に入れるなんて彼女は嫌がるような気がしたから。
それでも俺はバイトが終るとすぐに帰宅し、彼女のブログとやらにアクセスしてみたのだった。






−つづく−

や、約1年ぶり(゜ロ゜ノ)ノ すみませんっっ!!!!!
いつも後回しにしてしまって…。

しかし、一気に完結までいきます!
というわけで、続きをどうぞ^^
吉永裕 (2008.5.22)


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