彼女の場合 第六話
――人は日々選択して生きている。
人生を左右するような重要なことであったり、
将又、今日はどのアクセサリーを身につけようかしらといった些細なことであったりと様々だ。
私は今後、この世界で何を選択することになるのだろう。
私が選び取らなかった世界に住んでいた私は、それまでの人生を幸せに暮らしていたのだろうか?
携帯端末のアラームで目覚めた私は辺りを見回して肩を落とす。
いつものアパートの自室の光景が広がっていることを願ったが、無情にも実家のものだった。
夢ならば良かったものをと嘆いたが、仕方がないので支度を始める。
夜のうちに洗濯乾燥機に入れていた昨日の服にアイロンをかけてから袖を通した。
下着は予備に買っていた新しいものがあったのでそれを拝借したが、
置いていた洋服は流石に置いていく程度の若干くたびれたものであったので借りるのはやめておいた。
何より自分の好みと少し違う気がしたからだ。
私は動きやすいパンツスタイルが多いし、色もはっきりとした色合いを好み寒色やモノクロが多い。
しかし奏のクローゼットの服は淡い色の暖色系が多く見られた。
この洋服のセンスを見ると奏は柔らかい雰囲気と言われても納得できる。
「おはよう」
「おはよう、奏。体調はどう?
具合が悪いようなら大学は暫く休んだら?」
「うん、今のところは何ともないけど…授業に出てみてきつそうだったら考えるよ」
久しぶりに自分以外の者が作った朝食を食べながら私は母に答えた。
看護師をしている母は今日は遅出らしい。私と初音に合わせて一緒に食事をとる。
私のいた世界そのままの職場であるならば父の職場は郊外にあるので既に食事は済ませて家を出る準備をしている頃だ。
「もし何かあったら端末に連絡するんだぞ。
当分は一人で出歩かないようにな」
「うん、気をつけるよ」
食事を済ませ支度を整えた私は何となしに父を見送った。
未だに家の中に父親がいることに違和感がある。
勿論、嬉しいことではあるのだが、やはり自分の私立学校行きが離婚の原因なのかと思い知らされるようで
当分は真っ直ぐに父の顔を見れる気がしない。
その後、私と初音も家を出た。そろそろ響士との待ち合わせの7時半だ。
エントランスに降りると外の花壇の傍で自転車の隣に佇む彼の姿を見つける。
彼もこちらに気づいて手を上げた。相変わらず爽やかで見た目麗しい青年だ。
「おはよう、カナ、初音ちゃん」
「おはよう」
「おはようございます」
「えーっと、カナの自転車は多分アパートにあるだろうから歩いて行こうか。
初音ちゃんもいいかな?」
「はい、構いません。
じゃあお姉ちゃん、自転車取ってくるから待っててね」
私が奏に戻っているかもしれないと響士は少し期待していたのかもしれない。
けれど昨日と同じ服装の私を見てそれはないと感じたようだ。
それでも露骨に嫌な顔などはせず自然に接してくれる彼は紳士だと思う。
「そういえば、昨日植松くんと話した後に楳澤くんとも話したんだけど、
今日は楳澤くん、私の後からついてきて変な人が周りでうろついてないか見ててくれるって。
だから誰かが後をつけてるって気づいてもむやみに通報したりしないでね。
楳澤くんが捕まったりしたら困るから」
「ほう、それはいい考えだな。何か手掛かりがあるといいんだけど」
「そうだね」
「お待たせしました」
マンション指定の駐輪場から自転車を持ち出してきた初音は私の鞄も一緒に籠に入れてくれた。
ここから北西に1kmくらい離れた場所に大学はある。
初音たちの話によると、奏のアパートは大学から南に歩いて7,8分程度のところらしい。
それでも奏が自転車を使っていたのは構内を移動する時間を退縮するのと重い荷物を毎日持ち歩くのは一苦労だということ、
更に帰宅時にスーパーマーケットやコンビニエンスストアで買い物をして荷物がかさばるからだそうだ。
私は車を購入してからは車通学をしたいがためにわざと許可書がもらえる距離にあるアパートに住み始めた。
大学付近は色々な飲食店や本屋があり便利ではあるのだが、遊べる施設は少なく家賃が高いところが多いし、
折角独り暮らしをしているのだからできるだけ大学周囲にとらわれず広い範囲で行動したいと思ったもので。
「ここだよ」
20分程歩き、奏が住んでいたというアパートが見えてきた。
白い壁はまだ美しく一階には目隠し用の柵も設置されていて建築年数もそんなに経っていないような小洒落たアパートだ。
太陽の光が反射する壁面にはコーポ・ソレイユと書かれている。
「ここの二階の角部屋だよ」
一先ず駐輪場を教えてもらい、奏の自転車を確認した後に部屋へ向かう。
通路側にある小さな窓からは光が漏れ朝の準備をしている音が聞こえてくる部屋や、
寝ているのか不在なのかは不明だが真っ暗で静まり返った部屋の前を通り過ぎていく。
そして私は206と書かれた扉の前で立ち止まった。
各階の部屋数は5部屋だが、4が不吉な為か4のつく番号は欠番となっているらしい。
私はバッグに入れていた鍵を取り出し、開錠してドアを開く。
入ってすぐにミントグリーン色の布が目に入った。
通路につっかえ棒という伸縮自在の棒を渡して、そこにクリップ式のリングランナーをつけて簡易カーテンにしていたのだ。
新聞の勧誘の営業マンや友人の突然の訪問などの時に目隠しになって重宝するので私も同じようにしている。
だが、私のは紺碧色をしたカーテンであってこの時点で雰囲気が少し違っていることに気が付いた。
「…ここが佐久良奏の部屋か」
仄かに柑橘系の香りがする玄関で辺りを見回す。思ったよりも広めの玄関だ。
家具が備え付けのアパートなのか玄関脇には棚があり、三段あるその中には
パンプスやサンダル、スニーカーなどが綺麗に並んでいた。
目の前の通路の左側に二つのドアが見えるが恐らくトイレと浴室だろう。
通路の先にはそのままキッチンが繋がっており、奥の部屋との区切りである硝子戸の手前に冷蔵庫が置かれていた。
一先ず各部屋のドアを開けて中を見てみることにする。
トイレはマットや便座カバーなどがクリーム色で統一されており、風呂場もきれいに掃除されているようだ。
キッチンも掃除が行き届いていて換気扇も汚れていないし、備え付けと思われる食器棚には食器が整理整頓されて並んでいる。
冷蔵庫の中には使いかけの調味料、自分で沸かしたと思われる麦茶の入ったボトルに、
作り置きしたおかずが入っていそうな容器が数点と、
昨日のうちに食べるつもりでコンビニで購入したのであろうカップケーキが入っていた。
「…記憶喪失の人ってこんな感じなのかしら。
自分の部屋って感じがしないわ」
目に入るタオルや食器が自分好みでないことがこんなにも違和感を覚えるものなのか。
勿論、色や柄が特別嫌いというわけではなく普通のものだという認識ではあるのだが、部屋自体に愛着が全く湧かないのだ。
部屋に入るまでは同じ人間なのだから大きな違いはないだろうと思っていたのに、
趣向が違うとここまで別人の部屋になってしまうのかと私は驚く。
体の組織は同じだし中学卒業まで同じ環境で生きてきたのにこんなにも異なっていようとは、
人はほんの少しの期間で大きく変わる可能性を秘めているのだな、と漠然と思う。
「奥はどうなってるのかしら」
ある程度予想はしていたが硝子戸を開いた先にはまたしても違和感が。
薄いピンク色のカーペットが敷かれた部屋に入ってすぐ真正面に佇む白いクローゼットが目に入り、
その横にはデータカードとフィルムディスクが並んだラックとコンパクトなコンポがあり、
更にその隣に引き出しのない白を基調にしたシンプルな机とA4サイズの書類ケースとディスプレイ一体型のコンピュータ、
左側面には扉付きの本棚と扉のない棚がどーんと構えていて、中には小説や漫画、実用書などの奏の趣味のものと思われる本で埋め尽くされ、
少しスペースを空けてはいるが、手を伸ばせばすぐに本が取れるような位置に
ピンク色と黄色のチェック柄のカバーがかけられたソファーベッドが置かれている。
反対側にはデータの記録再生兼用のデッキが仕舞われたテレビ台と37型の薄型テレビが据えられ、
中央には冬場にはこたつになると思われる白色のテーブルが鎮座している。
「…うーん、取りあえず昨日のことだけでも何をしようとしていたのか、何を考えていたのか辿れるといいんだけどね。
日記とか書いてないかなぁ。そんな習慣あったと思う?」
「どうだろうねぇ。確かに奏お姉ちゃんはまめな性格だったから予定とかは何かに書いてたかもしれないけど、
鞄の中に入ってた手帳には特に書いてなかったんでしょう?」
「うん、レポートの締め切りとか資格試験日とか勉強関連の必須事項用だったみたい。
私的なことは書かれてなかったし、アドレスも担当教授のゼミ室の電話番号とか本屋の番号くらいで」
「じゃあ、プライベート用が部屋にあるかもしれないよ」
「そうだね、探してみる」
私はまず机の上の書類ケースを調べた。
一段目にはこのアパートのスペアキー、アパートや光熱費などに関わる企業と交わした契約書、
それらを隠すように大学のカリキュラム表が重ねて入れられている。
二段目には筆記用具やメモ帳や便箋、奥の方には印鑑と銀行の利用明細書の入ったポーチがある。
私はふと財布の中の銀行のキャッシュカードを確認してみた。
銀行は恐らく私と同じであるし番号も見たことのあるような数字な気がする。
こういうところは世界が違っていても変わっていないのかもしれない。
親から与えられたタイミングが恐らくどちらも同じだったということなのか。
最近の利用は1週間前程だ。私と同じで1ヶ月に1回程利用し、一度に下ろす金額は2万リーン程。
光熱費や家賃は全て銀行口座からの引き落としになっている為、
遊びに行く予定がなければ出費は食費だけなのでこのくらいで十分なんとかなるし、
洋服などを買うときはその都度必要な分だけ引き出すようにしている。
とはいえ、私は車に乗るのでガソリン代など維持費がかかる分、完全に奏と同じわけではないが、
それでもお金の使い方や引き出し方は同じようだ。
残高は私よりは少ないがそれは恐らく現在バイトをしておらず仕送り以外に収入がないからだと思われる。
それでも無駄遣いせず計画的に引き出しているようなので、かつかつの生活をしているというわけではないだろう。
4月の初めは教科書類の購入があるのでいつもよりも引き出し額が多いのは当然だとして、他には不審な引き出しや入金は見られない。
なので奏が襲われた理由から金の貸し借りという線は除いていいと思う。
金の貸し借りを疑うなんて刑事ドラマの見過ぎかなと自嘲しながら二段目の引き出しを閉じ、三段目を開けてみる。
そこにはコンピュータのリカバリ用ソフトや新品のデータカード3枚と使用済みのデータカード2枚、
コンピュータと携帯端末の基本的な操作が簡潔に書かれた取扱書。
データカードに日記を記録している可能性もあるが、一先ず他に紙媒体のものがないか探すことにする。
「えーっと悪いんだけどさ、植松くんは昨日あれこれしてくれて操作方法分かってると思うから
コンピュータの電源つけておいてくれる? 初音は洗濯物とかチェックしてくれるかな。
趣味の違う洋服とかが混ざってないかとか勝負下着とかないか」
「そんなのはないと思うけど」
「さすがにそれは冗談よ、冗談。とにかくお姉様らしくないものがないか確認してくれる?」
「はいはい」
人の家であれこれ手を出すのは悪いと思ったのだろう、私の後ろで静かに控えていた二人が手持ち無沙汰なようだったので
時間つぶしがてらに簡単なことを手伝ってもらうことにした。我ながら図々しいとは思ったが。
勿論、自分の目で見ないと気が済まないので日記探しは自分でするつもりだ。
彼らが所定の位置に着いたことだし、私は本命の本棚を探すことにする。
まず扉のついていない方――主に大学や資格の勉強で使う教科書や辞書類、
授業で使用したプリントなどがファイリングされた状態で陳列している。
その中で私はある封筒に気づいて手を止めた。
それは留学希望者に配られるもののようで、中には冊子とプリントが数枚入っている。
冊子は留学先の大学に関するものであり、プリントは選抜方法や費用などが書かれた留学要綱と
留学生用の奨学金制度の紹介などが書かれていた。
奏が希望していたのはアークバーン大陸への留学らしい。確かこの大学の姉妹校が向こうの首都にあった筈だ。
奏は留学して何がしたかったのだろう、と私は不思議に思う。
もしかすると世界各国の交流が盛んになった今だからこそ各国の法律に明るい弁護士になりたかったのかもしれない――
棚に並んだ法律や社会保障に関する本を眺めながらここにいない奏の思い描いていた将来を想像してみる。
「ねえ二人とも、この部屋の主が留学を考えてたってこと知ってた?」
「いや、俺は知らないな」
「私も聞いたことないよ」
「…本気かどうかは分からないけど、この棚に資料があったよ」
「何でだろうね。弁護士ならともかく、奏お姉ちゃんが目指してたのって行政書士だし。
国際的な知識はそこまで必要ないと思うけど…」
「向こう独自の制度を勉強したかったのかもしれないよ。
なんせアークバーン国は魔法と機械が共存する不思議の国なんだから」
茶化したような言葉とは裏腹に響士の表情は少し寂しげだ。
奏から留学のことを聞いていなかったことがショックだったのかもしれないし、
留学を考えていたのなら昨日の告白の返事は断られていた可能性が高いとネガティブに考えたのかもしれない。
――それにしても行政書士か。
その言葉を聞いて私は今日の授業に出る気がなくなった。
自分と奏は異なる人生を歩んでいるのだ。今の私には法律や制度など全然興味のないことだ。
それまでの知識もないし、今から慌てて勉強したところで現在の授業内容に追いつける筈もない。
このまま入れ替わりが起こらなかった時は、別の学部に転部できるなら転部し、
最悪の場合、退学も視野に入れてこの世界で生きていかなければならないのか、と私は人知れず肩を落とした。
とはいえ、いつ私と奏が入れ替わるかも分からないので、転部や退学した直後に奏が戻ってきたなんてことがあれば彼女が可哀想だ。
そう思うと暫く休学して1,2年様子を見た方がいいのかもしれない。
「さて、じゃあ次は趣味や嗜好を探っていきましょうかね」
ただ考えているばかりでも仕方がないので留学のことは一先ず脇に置いておき、扉のある本棚の探索へ取り掛かることにする。
本棚の中にはある作家のシリーズが並んでいる。青春時代の恋愛を主としたシリーズだったと思う。
6冊目でシリーズ完結だったはずなので全て揃えたのだろう。
またそのシリーズ以外の本もあることから、奏の最も好きな作家だろうと予想することは容易い。
他にも青春時代を描くことの多い作家の作品が並んでいた。
ミステリやホラーなども混ざっていたけれども、どれも学生が主人公のようだったので、
ジャンルとしては青春小説が好みだったのかもしれない。
この辺の本の趣味も私と少し違っている。
勿論、私はここに並んでいる本も読んだことがあるし、この中には私の部屋の本棚に並んでいるものもある。
けれど私の好きなジャンルはSFとミステリ。
特に科学技術を駆使した科学捜査班の出てくる警察モノのミステリが好きだったりする。
私の好きな本は奏の興味を引かなかったようでまことに残念だ。
そうして一通りざっと眺めるように背表紙を見ていた私はあるところで「おや」と目を止めた。
下段の雑誌の間に埋まるように挟まっていたのはとある病院のパンフレット。
形成外科の手術の紹介ページに折り目が入っており、ケロイド状の皮膚を再形成する写真が載っていたのだった。
もしかすると奏にとってあの顔の傷は言い表せない程のコンプレックスで、どうにかして消したかったのかもしれない。
私はこのことは自分の胸にしまい、二人に報告しないことにした。
更に気になったのは丁度、ソファーベッドに寝た時に手が届く位置にあった本。
子どもの頃に買った本なので私も見覚えがあるが、確か興味を無くして実家に置いてきた筈だった。
というよりもこんな本の存在を今まで忘れていたので、実家の自室ではないどこかへしまいこんでいるのかもしれない。
私はその本を手に取ってみる。
『みんなのおまじない全集』とポップ体で書かれたタイトルと女の子の絵が描かれた表紙はどうみても子ども向けの本だと物語っていた。
それもそのはず私が小学生の頃に女子の間でおまじないが流行っていた為買ったのだ。
厚さが3cmくらいあり、前半は有名な占い師などから紹介されたおまじないがジャンル別に網羅されており、
後半は全国の女子たちからの投稿が載っていて効果があったおまじないやジンクスなどが紹介されている。
そんな子ども向けの本をどうして未だに持っているのか、不思議に思いながらパラパラとページをめくってみた。
すると、本の真ん中程のあるページに折り癖がついている。
そこに載っていたおまじないは4つ。どれもピンチの回避が目的のようだ。
――テスト中にお腹が痛くなった時にするおまじない、授業中先生に指名されないおまじない、
嫌な役が回ってこないおまじない、嫌なことからうまく逃げられるおまじない――今となってはどれも可愛らしい願いではある。
ただ、大学生にもなって授業中に先生に指名されないようにだとか、嫌な役が回ってこないようにだとか願うだろうか。
勿論、ゼミの中で室長や会計の役には絶対になりたくないなどと考えることもあるかもしれないが、
大学生にもなっておまじないに頼るほど嫌なのだろうか。
テスト中の腹痛に関してはおまじないにも頼りたいと思う気持ちは分かる。
けれども大人になり理屈っぽくなってしまった私にはこの4つの中のおまじないの中で
“嫌なことから逃げられる”というおまじないがあれば他の3つは全て解決できるではないかと思った。
私は折り癖のついた見開きのページの最後にある“嫌なことから逃げられるおまじない”の内容に目を走らせる。
学校生活に関係なくいつでもどこでも使える呪文だよ!
嫌なことがあった時、心の中で「エ・パ・ク・セ、エ・パ・ク・セ、私を逃がせ」と唱えると、不思議と嫌なことから逃げられるの。
道で怖そうな犬に会った時とか、学級会で嫌な係を押し付けられそうになった時とか自然と回避できるよ!
――私を逃がせ、か。
私は奏が襲われた時にこの呪文とやらを咄嗟に唱えたのではないだろうかと想像した。
以前からこれを読んでいて頭に入っていたのなら、突然の衝撃を受け、状況を理解できぬまま咄嗟に唱えてみたことはあり得る。
心の底から願った為におまじないが力を持ち、この世界から本当に“逃げて”しまったのかもしれない。
魔法の国であるアークバーンへの留学案内を先程見たからか、不思議と私はそう考えていた。
しかし、昨日以前から奏はこのおまじないを眺めていたことになる。
だとすると昨日の事件が起こる前にも何らかの逃げたい事柄があったのかもしれない。
顔のコンプレックスから?それとも響士と清亮との複雑な関係から?
それ以外にも勉強や大学など将来のことで悩んでいたのかもしれない。
それでも折り癖が付くほど熱心にこのページを読んでいたというのは、
とにかく彼女が何かから逃げたいと思っていたのは確かなような気がした。
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