隣のくん 第24話?
俺は自分にも相手にも友達と偽って傍にいるなんて嫌だぜ。
ましてや行動もしてないのに最初から諦めるなんて、意味わかんねぇ。
数時間前のくんの言葉を思い出して私は顔を上げた。
目の前には少し目線を落としたくん。
「当たりー」
努めて明るく答えた。
えっ、と彼は驚いている。
「でも、気にしないで。 是が非でも付き合って欲しい、とかそういう感じじゃなくて
今みたいに気楽な気持ちで傍にいられたら、それだけでいいなぁって」
だからこれからも友達でいてよ、と言って私は自分でも驚くくらいにこやかに笑ったつもりだ。
そんな態度に彼は戸惑っていたが、「ありがとう」と言って穏やかな表情を見せてくれた。
何だ、気持ちを伝えるとこんなに気持ちがいいんだ。
素直にそう思えた。
今まで頑なに自分の好意を隠し続けてきたのに、最初の一言を言ってしまったら、いつもの会話のように話せてしまった。
これでくんが友達のままでいてくれたら最高だけれど……それは、彼の自由だからどうしようもない。
とりあえず、今は自分がすっきりできただけでも良しとしよう。
これまでの自分を振り返ってみたら、大きな前進ではないか。
「から聞いたぜ。…やるじゃん」
皆でカラオケをし、くんの部屋でボードゲームやテレビゲームをして小学生のように大声を上げて暴れ、
散々楽しんだ私たちは夜の9時頃、帰途についた。
何故か主催者のくんが私を送ってくれている。
恐らくくんのことを気にしているのだろう。
「で、何でいきなりそんな話になったんだよ」
「何でって、カラオケの途中にトイレに行って部屋に戻ろうとした時にくんがやってきて、いきなり――」
複雑な表情で「」と声をかけてきたのだ。
昨日のことが原因で、やはりどこか気まずい感じを互いに漂わせていたのだが、とりあえず、まずは自分から歩み寄ろうと思い、
いつも通りに「何?」と明るく尋ねた。
すると、彼は少し目をキョロキョロさせながら口を開く。
「あのさ…昨日、の気持ちとか考えずにあんなこと言っちゃって……ごめん」
「え、全然気にしてないよ。大丈夫!」
確実に嘘なのだが手を顔の前で左右に振った。
顔は笑えているか少し気になったが、次の彼の言葉に思わず固まってしまうことになる。
「あの時のお前、何かちょっと態度がいつもと違ってたから気になってて…。
だから友達――あぁ、あの文化祭の時、お前の写真欲しがった奴にさ、話をしてみたんだ。
そしたら“バカか”って怒られたよ」
“さんが好きなのはお前だ”って……。
何だか複雑そうな顔だけれど、少し頬を赤くしながらくんが話した。
なんだ、分かる人にはしっかりバレてたんだ、と思った。
知らないのは本人だけだなんて、と何だかおかしい。
すると次の瞬間、くんの話を思い出した。
このまま、自分の気持ちを偽り続けるのは嫌だと思ったのだ。
もし、強がって「全然そんなことないよ」と言ってしまえば二度と気持ちを伝えるチャンスなんて訪れない。
最悪、その瞬間からぎこちなくなって友達でもいられなくなってしまうかもしれない。
それだったら全部スッキリさせてしまった方がいい、と心の奥で勇気が生まれた。
「でも結局告白って感じじゃなかったけどね。 さらっと終わっちゃった」
頭の後ろに手を組みながら夜空を眺める。
「そうか?これからだと思うぜ。 大体、自分のこと好きか?とか普通、聞けねぇだろ」
「まぁ、私だったら聞かない」
「だろ。 的には好きって言って欲しかったんじゃねーの?
あいつ、意外と鈍いし、自分の気持ちに気づいてないだけとか」
「あはは、確かに鈍いと思う! でも私のことなんて何とも思ってないない!!」
心から笑った。
するとくんが立ち止まる。
辺りは暗いけれど、穏やかな表情をしているように見えた。
「とにかく、お前にしては頑張ったんじゃねーの。
結果はすぐには出ないかもしれねぇけど、半年後、1年後には関係が変わってるかもしれないし、これからも諦めるんじゃねーぞ。
この俺が応援してやってんだからな」
「…うん、ありがと」
今日は、とてもあっという間に時が過ぎたけれど
くんの気持ちが伝染したのか、穏やかで優しい気持ちになれた夜でした。
ついにー恋愛イベント終了(?)
あっけない展開ですみません。
なんだか生徒会長の影が薄いですけど…^^;
今回は脇役で。
次回は…クライマックス?です。
終わりじゃないですよ、山場です。
といっても、私の描く山場は山場じゃないのは周知の事実(;´▽`A``
とにかく1日も早く完結できるよう、励みます!
読んでくださったお客様、ありがとうございました^^
吉永裕 (2008.2.8)
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