隣のくん 第21話?
気づけば明日は終業式。
いじめの手紙は相変わらず続いている。
そんなに陰湿なものではないが、やはり身に覚えがなくても負の感情を受けるのはきついものだ。
悲しいもので、この数週間で下駄箱の戸を開ける際に辺りを見回す癖と、躊躇しながら手を伸ばす癖がついてしまった。
でも、学校を休んだり、教師に相談するほど困ってはいない。
困っているのは別のこと。
くんに何も知られないように。
そして、これ以上被害を増やさないようにしていたら。
――彼とどう関わっていいのか分からなくなった。
「じゃあ、今学期の生徒会活動は今日で終わりだ。 皆、明後日の予定は空いてるだろうな?」
「勿論!」
「11時にファミレス集合だっけ?」
「カラオケは東島で予約しといたから」
「会長の家族の了承は取れてるの? 夕方から夜くらいまでお邪魔するし。
きっとこのメンバーが集まったらかなり騒がしいと思うわよ」
そんなワイワイ騒ぐメンバーたちの会話にどこか入っていけない自分がいた。
だってクリスマスパーティーの会場、つまりくんの部屋の飾り付けの手伝いを以前、頼まれていたから。
だから私は11時前に彼の家に行き、一緒に飾り付けをしなければならない。
今の私は、何を話せばいいのか分からない。
どんな顔して会えばいいのかすら、最近は考えてしまうのに。
周りに誰もいないのだから気にせず今まで通りに接すればいいのだけれど、一度、自分の中で距離ができてしまうと
それからはどうやったら元に戻れるのか分からなくなってしまった。
くんはそんな私に気づいているのか分からないが、
昼食時にお弁当から私のおかずを取ったり、むやみに小突いたりすることはなくなった。
もしかしたら私が意識していなかっただけで生徒会で一緒に仕事をし始めてからは、
ジャ●アンのような態度をしなくなっていたのかもしれない。
そんなことも思い出せないくらい私の中のくんの存在は空気のように軽く、それでいて隣にいるのが当たり前のような――
「じゃあ、解散な」
色々考えていたら、いつの間にか雑談は終っていた。
部活をしている東ちゃんと、生徒会が終わるとすぐに帰宅する遠野くんとミヤが席を立った。
くんは顧問の先生に3学期の計画を記したプリントを提出するとかで鞄を置いたまま、職員室へ向かう。
そんな彼の背中から目を逸らすと、くんと目が合った。
「はクリスマスの予定とかなかったの?」
鞄から漫画を取り出しながら彼が口を開く。
うんと頷き、私は書かれた字を消しに黒板の方へ向かう。
「予定入れる前に生徒会のパーティーの企画が上がったし」
「そっか。まぁでも、がいるしね」
その言葉に一瞬身体の動きが止まる。
私はもしや、と思い後ろを振り向いた。
「何でくん?」
「最近、ってのこと、意識してない? だから好きなのかなって思って」
ガツン、と頭を殴られたような感覚だった。
それと同時に胸がキリキリと痛む。
「…何それ」
ぽろっと言葉が零れていた。
慌てて黒板の方へ再び向きを変えると、ザッザッと黒板に書かれた文字をあらましに消していく。
「くんなんて好きになるわけないじゃない。 だって暴力振るうし、我侭だし。
お金貰ってもあんな人、好きになんてならないね〜」
あはは、と声に出して笑い、制服についたチョークの粉を掃うと、私は何事もなかったかのように机の上の鞄を取り
「じゃあ先に帰るね」とくんに声をかけてドアに手をかけた。
「あ、…」と、彼が声をかけたが振り向かなかった。
ドアを開ける時には、既に涙が顎の下から落ちていたから。
そうして背中を向けたままドアを閉めると、タイミングの悪いことに職員室から戻ってきたくんと目が合った。
「……お…い――」
彼が名前を呼ぶ前にその場から駆け出した。
今はくんの顔なんて見たくもない。
たとえ彼に直接関係がなくても。
一番、誤解されたくない人に。
くんに、くんを好きだと思われるなんて――!!
…私が最も恐れていたのは、くんだったのかもしれない。
お久しぶりです^^;
さて、次第に雲行きが怪しくなってきましたが
次の話で、私が書きたいシーンは終わるので終わりもぐっと近づくと思います。
さすがに今年中には終わらせられないでしょうが、
春までには終わらせたいです!
これからも精進しますので、まだ続きそうですが
『隣の○○くん』の終わりまでどうぞ見守ってくださいね^^
読んでくださったお客様、ありがとうございました!
吉永裕 (2007.12.9)
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