夢見堂 a la carte


〜癒し担当?〜

 放課後、夢見堂に集まる僕らは十年来の付き合いだ。
それというのもジッカラートでは一つの家に近所の子どもや親せきの子どもを集め
手の空いている数人の大人が守りをするという風習があるからである。
 なので隣の家に住む美那ちゃんは勿論、祖父同士が友人という繋がりでうちに来るようになった寅くんとも
物心つく頃から兄妹のように一緒に育ってきた。
そんな僕らの輪の中に他の3人が加わったのは6歳を過ぎた頃だ。
 正直に言うと紫朗くん、ざくろちゃん、ちゃんの第一印象は良くなかった。
紫朗くんは全然僕らの方を見ようともしないし、逆にざくろちゃんは睨み付けてきた。
残るちゃんも距離をとる癖にニコニコと笑っていたのが子ども心に不気味に思えたのだ。

 ともあれ最初は警戒していた僕らだったけれど、子どもだったということもあって次第に無遠慮に体当たりに近い接触を試み、
多少強引にではあるがざくろちゃんや紫朗くんと意思の疎通を図ることに成功した。
それでもちゃんとは仲良くなれたという実感がなかなか湧かなかった。
彼女はこちらから話しかければ人当たりも良くて気の利く子だけれど、基本的にはいつも遠くから笑って見ているような子だったからだ。
子どもながらに彼女との間に見えない壁があるような気がしていた。
 けれど知り合ってから2年ほど経った頃、彼女は酷く変わってしまった。
びくびくと何かに怯え、一人でいることを怖がるようになった。
そんな彼女を安心させる為によく僕らは休みの日に集められ、一緒に昼寝をするように大人から勧められた。
どうやら彼女は夜まともに眠れていないようだった。
その内、僕らは思いがけず彼女の能力を知ってしまう。
それから僕らは彼女に対する考えを変えた。

 彼女は人の潜在意識に同調する力を持っている。
なので無意識に相手の記憶や心理を読み取ってしまうし、無防備な状態では彼女の潜在意識が相手に流れてしまうこともあるらしい。
特に本音と建前が分離していない子どもの頃は影響が出やすいようで、
皆で集まって眠っていた僕らは同時に彼女の恐怖の記憶を夢として共有してしまったのだ。
 彼女の見せた夢は子どもにとっては強烈なもので僕らは恐慌状態に陥った。
その後、紫朗くんの能力のことも知った。
彼が手を握り(実際は身体の一部分に触れるだけで良いらしいが)目を閉じて瞑想すると、相手は何事もなかったように平常になるのだ。
手慣れた様子で彼はちゃんの夢を喰い、続いてざくろちゃん、美那ちゃんを正気に戻した。
 そんな中、僕と寅くんは夢の記憶を消さないことを選んだ。
紫朗くんは直近の夢の記憶は消すことができるけれど、潜在意識にこびりついたイメージは消せないらしい。
ちゃんを介して彼女目線で見た僕らの夢の記憶はいずれ薄れていくし忘れられていくが、
彼女自身が体感した他人の潜在意識はずっと残り続ける、ということだ。
 ちゃんに刻み込まれた恐怖の記憶と心の傷は永遠に彼女に残されたまま。
僕にはそれがとても気の毒に思えた。
今後も悪夢に襲われるかもしれない彼女を悪夢の世界に一人残すようで嫌だったのだ。

 僕にはちゃんや紫朗くんのような特別な能力なんてないけど、
もしかしたら僕にしかできないこともあるかもしれない。…そう思って僕はヒーリングについて学ぶことにした。
 無断で心に触れてしまうのが申し訳ないし何が飛び出してくるか分からず恐ろしくて人に近づけない、
けれど人と関わること自体は楽しくて好きなのだという繊細で寂しがりな彼女が少しでも穏やかな気持ちで日々を過ごせるように。
ささやかでもいいから彼女をホッと癒せるようになりたいと思った。

 ――きっかけは同情心だったのかもしれない。
だが今は彼女を心から愛しいと思っている。
人の潜在意識を読み取る彼女には既にこの気持ちを知られているかもしれないけれど。
彼女が僕との縁を切ろうと思わない限り僕は彼女の傍にいたい。







夢見堂メンバー、4人目ミケの話です。ミケは優しくてほんわかしててホントに癒し!って感じの子です。←酷い手抜きな書き方(゜ロ゜)
ふんわりとした会話をしながらハーブやオイルを選んでくれます。
ちなみにミケの皆の呼び方は
  対 ヒロイン→名前+ちゃん
  対 シロ→紫朗くん
  対 クロ→ざくろちゃん
  対 サバ→美那ちゃん
  対 トラ→寅くん
  対 サビ→草薙さん

実はみーくんとの恋愛ラストは何となく頭にあるのです。(まだ書いてません)
最初に浮かんだメンバーなのです、実は。癒しは大事だからね!!
その後、どんどん不思議な能力持ちが増えてしまってみーくんが浮いちゃっている感がありますが、大事な子ですので。

…と、今回もあまり解説してませんが、
ここまで読んでくださったお客様ありがとうございました!!

裕 (2015.8.23)


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