第3章 第7節


 一行は鍵を開け、小さな入口を抜けて地下への階段を降りる。
祠は整備されていたが、地下への階段からは当時のまま保存されているらしく、ごつごつとした壁面に皆の足音が反射して階段の奥へと響いていく。

「――っと、ここで階段は終わりみたいだな」

 数分ほどジグザグの階段を下りていくと、先頭にいたカイトがランプで足元を照らしながら口を開いた。

「……思っていたよりも広い造りのようだ」

 持っていたランタンを上に掲げ天井を見上げてアステムは言葉を漏らす。
他の者たちもランタンを持って辺りに散らばり、ざっと見回してみる。
階段付近は広い部屋のような空間になっていて、階段の対角線の位置に奥へと続く細い通路があることが分かった。
どうやら縦長の洞窟のようだが天井は高く造られているらしく、試しにが手をパンと叩くとその音は膨らむように辺りに反射して響いていく。
しかも籠るわけではなく透き通るように響くその音に暫し耳を傾けた。

「――硬い鉱物でできてる地層なのによくここまで掘れたなぁ。
 魔法か?……いや、そんな器用に力を調整できるもんじゃないか。じゃあ掘削機は……その頃にはもう伝わってるから有り得るけど」

 キャスカに姿を変えて天井を一周してきたレディネスは当時の技術について感心した様子でブツブツと独り言を言っている。

「アクアオーラはあの通路の奥……でしょうか?」
「そうだね、紅色水晶と同じような大きさだとすれば一番奥で祀られているのではないかな」
「まぁ、広さから考えると、ここは祭事の時の宴会場みたいなものかもしれねぇな」

 の疑問にリットンとカイトが答える。
そうして彼らは少し狭く掘られた通路の奥へ進むことにした。



 通路からは壁面や床が整えられていてタイルのようなものが敷き詰められている。
その通路を進んだ先に薄らと光が見えた。
その光の先には、紅色水晶のように宙に浮かぶ大きなアクアオーラが虹色の光を発していた。

「……綺麗」

 透き通りシャボン玉のように色んな色を映し出すその守護石に思わずはため息を漏らす。

「……元はただの水晶だったと思うけど……当時の人間が作り上げたのかな?
 それとも神の力に引かれて奇跡でも起こったか? ……ふふん」

 アクアオーラの周りを回りながらレディネスは口を開いた。

「キャスカ、何だかご機嫌みたいね」
「まぁね。アクアオーラなんていうからどんな石なのかと思ったけど、まさか本物だなんて思ってなくて」
「どういうこと?」
「今、市場に出てるアクアオーラっていうのは人工的に作られたものなんだってさ。
 オレも詳しく知らないけど水晶を高温で熱してそこに金や銀の蒸気を吹き付けるらしいよ。だからこいつの存在に驚いちゃってね。
 天然でこんな風になったとしても恐らくそんなの奇跡に近い確率だろうし、
 人工的に作られたんだとしても当時の奴らがこんな手法を知ってて施したんだとしたらさ、
 アクアオーラの歴史って物凄く古いし、当時からこういう技術があったってことじゃん。うわーカッシート遺跡、面白いなぁ」

 早口で興奮気味に喋るレディネスの勢いにのまれた他のメンバーたちはキョトンとしていたが
彼の様子から察するにこの遺跡の存在は凄いものなんだな、ということは分かった。

「――じゃあ、今回も紅色水晶と同じように中心の石だけ抜き取るか?」
「そうだね。ちょっと待って……。うん、大丈夫みたい」

 カイトのその言葉にレディネスも冷静さを取り戻し、石をざっと見て頷く。
そうして彼がに切りつける角度を指示すると、全員は前回のような役割に分かれて呼吸を合わせる。
 ――数秒後、二つに割れた石を合わせる音が洞窟内に響いた。

「……OK、問題ないね」

 レディネスの手の中の石と、再び宙に浮いたアクアオーラを見て全員は安堵のため息を漏らす。
すると、が「あれ……」と声を上げた。

「どうした?」

 カイトが振り向くと、彼女はアクアオーラの後方の壁に触れて首を傾げている。

「何だか……ここだけちょっと飛び出てませんか?
 周りが綺麗な直線になってる分、何だか気になっちゃって……っえ、え、ええっ―――!?」

 そう言ってが何気なく壁を両手で押すと壁は後ろへと傾き、壁に体重をかけていたもろともパタンと倒れこんだ。

「――っ!?」
「大丈夫か?」

 慌ててアステムとカイトがを助け起こす。
突然の出来事に、は「壊しちゃった、どうしよう」と顔を青ざめた。
しかしリットンがランタンで奥を照らして声を上げる。

、大丈夫。壊したことにはならないよ。これは……」
「大発見って奴じゃない?」

 レディネスの言葉を聞き、たちはランタンの光の先に目をやった。
そこは階段を降りた所にあった広場ほどではないけれど、空間が広がっている。
更に壁面には大きな絵が描かれていた。









またもや書きたい部分まで辿りつけなかった…。
だらだらと長くなりそうでしたので次に回します^^;

ホントに、この更新の不定期さは…不親切ですね。
かといって、更新する日とか曜日とかを決めたら
プレッシャーになって書けないor書けてもつまらないものしか作れない気がするので
これからもこのままで…。
すみません、ホントに。

さて、今回はレディネス様がかなり興奮しておりますが…私も分野にこだわらず、何かを知るということが好きです。
まぁ、どうしても頭に入らない分野もあるんですけども(;´▽`A``
とはいえ、この物語に出てくる事柄は一応辞書等で調べておりますが
都合のいいように捻じ曲げたり誤魔化したりしておりますので、いないとは思いますが全部をそのまま信じちゃダメですよ^^;

というわけで、なかなか進みませんがここまで読んでくださった皆様ありがとうございました!

吉永裕 (2008.12.11)


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