第3章 第6節
燃え上がる炎、黒い煙、そして人々の血で視界は黒と赤で染まっていく。
「やめてっ――いやああぁぁっ!!!」
手を伸ばした瞬間、ふっと意識が飛んだ。
目の前が白くぼやけていく。
「――っやめ…」
はっ、とは目を開けた。
いつもの見慣れた天井が目に入り、今見た映像は夢だと悟った。
それでも心臓はドクドクと鈍い音を出しながら動き続けている。
「……うん」
はそっと右の側頭部を押さえた。
あの疼くような痛みはない。
「なぅ」
キャスカがパタパタとやってきて、布団の上に足を下ろした。
彼の姿を見て少しホッとするものの未だに動悸は収まらず、額には汗が滲む。
「頭は痛くないけど……やっぱり催眠波の影響かな。それとも感覚の共有……? ――あっ」
無意識に目から涙が零れた。は黙って涙を拭う。
気持ち悪さと共に焦燥感が体の中を駆け巡る。
あの夢の内容を再び思い返したくもないけれど、思い出さねばならないようなこの感じはなんだろう。
「――失った記憶の欠片?」
「……うなん」
キャスカは静かに鳴くとをじっと見つめる。
「……大丈夫。何ともないよ」
それに自分自身とも戦うと決めたのだから――そう思い、は床に足を下ろした。
「キャスカが変身しないってことは、聞かない方がいいんでしょ?」
「――聞かない方がいいというよりも、聞いても無駄だよ。夢の内容を理解して分析するなんて誰もできないでしょ?
……なんにしても嫌な夢は忘れるのが一番さ。
もしそれが記憶の一部だとしても、無理に気分の悪い思いをしてまで思い出す必要はないと思わない?
無事にあんたの頭の中の機械が取り除けたら、なんとかして記憶も戻してあげるからさ」
姿を変えるとレディネスは眠たそうな表情で窓辺に腰掛け、頭をボリボリと掻いている。
「……そうだね」
コクリとは頷いた。
「それにしても私が寝てる時、いつもどこにいるの?時々一緒に寝てはいるけど」
「ん?そこの木の枝とか、部屋の前とか。
あんたが催眠にかかってフラフラどっか行かれても困るんでね」
「……そう、ありがとう」
「別に。結構ネコの姿気に入ってるし」
無愛想な様子でそう言う彼を見てはクスクスと笑った。
その後、南にあるカッシート遺跡へ向けてサンティアカを出発した一行は、1週間後に遺跡に最も近い町へ到着した。
そうして次の日の朝、遺跡へ向かい、守衛任務に就いている傭兵にギルド長から預かった書類を見せると、古くて重そうな門が開かれ鍵を二つ渡される。
遺跡の周りは高い壁と樹木で覆われていて外から見る限りどんな遺跡なのかも分からなかったが、目の前に広がる光景には呆然と立ち尽くした。
地面は土を固めて作られたような石畳がずっと敷き詰められており、同じような材質の柱や建物の残骸のようなものがあちらこちらに残っている。
一見、荒地のようにも見えるが、所々に建っている灯篭のようなものや魔物と人間が合わさったような像は形を留めており、
自分たちが歩いている地面にはうっすらと文字のようなものや模様が彫られているものの、風化していてよく分からない。
それでも何やらここは神殿もしくは何かを祀っていた重要な場所なのかもしれないと思えるような神聖さを感じる。
「カッシート遺跡はAHD(after Holy differentiation)2050年頃の遺跡らしいね。
ここが造られた後くらいにサウスランド人がティン島に渡ってきたらしいから、
先住民……もしかしたら人間じゃなくて魔物が造ったのかもしれないけど、この遺跡はそいつらの生きてた証ってワケだ」
珍しく女性以外を見てレディネスの目が輝く。
「キャスカはこの遺跡のこと、詳しく知ってるの?」
「詳しくはないね。時々上からざっと見て回ったくらいだし。
それにこの遺跡はこの表の建物がメインっていうわけじゃなくて地下の遺跡が重要らしいよ」
そう言ってレディネスは先程守衛から渡された鍵を取り出して見せる。
「さすがにオレも鍵を壊してまで中に入ろうとは思わなかったからね。守護石がこの遺跡にあってラッキーって感じ。
さてどんなブツが出てくるのか……賭ける?」
「賭けないっ」
そんな話をしていると、恐らく遺跡保存の為に後から造られたのだろうが、丁度遺跡の真ん中あたりに黒い石で造られた小さな祠のような建物が見えた。
まず一つ目の鍵を使って祠の扉についていた鍵を開けると目の前には地下への階段が現れる。
その手前には太い鉄格子の柵が設けられており、その柵には小さな通り抜け用の扉がついていて、扉にはしっかりとした大きな鍵がかかっていた。
「じゃ、第二の扉を開こうか」
茶目っ毛満載な表情でレディネスはそう言うと、扉にかかっている鍵にもう一つの鍵を入れて右に回す。
重々しい解除音が石でできた祠に響いた。
あああ月一の更新ですね、もう…。
このサイト=月刊誌のようなイメージで、まったりとお暇な時に訪問していただけたらと思います^^;
さて、今回はカッシート遺跡突入、というわけですが…書きたい場面までたどり着きませんでしたorz
メインは地下の遺跡の筈だったのに^^;
というか前半部分はスランプ絶頂な時に書いたのが丸分かりな文章で(´д`、)
流れも単調だし、文もブツブツ切れてるし……し、精進します!
次回の内容もそんなにこの物語に影響はないのですけれども、この世界全体に関わる…ようなことなので
興味を持っていただけるとある種、このファンタジー世界の創造神である私が喜びます^^
それでは、ここまで読んでくださった皆様ありがとうございました!
是非次回もお越しくださいませ^^
吉永裕 (2008.12.8)
次に進む メニューに戻る