どうしたらカイトさんの心の痛みを減らしてあげられるんだろう――はこれまでのカイトとのやり取りを思い出して彼の後姿を眺める。
悪夢に魘されるカイト、自分は幸せになってはいけないと言ったカイト。
こんなにも彼を苦しめていることは一体何だろうと思うけれど、それでも彼に聞くつもりはなかった。
むやみに聞いて彼の傷をつつくような真似はしたくなかったし、
彼が話してくれないのはきっと自分が彼にとっては心を許せるような相手ではないのだろう、と思ったのだ。
サンティアカの家に戻ってきた一行は食事と片付けを済ませた後、を残して各人部屋へ向かった。
居間に残ったは今日手に入れた薬草や木の実を水で濡らした布で軽く拭いてストック用のビンに分けていく。
するとカイトがやってきて声をかけた。
「ちょっと…いいか?」
「はい」
そう言うと彼は隣に座る。
何だかそんな彼の表情は曇っている気がした。
「お前にお願いがあってな」
「はい、何でしょう」
はグッと拳を握り締めて彼の方へ重心を移した。
一体、どんなことをお願いされるのだろうと真剣な顔でカイトを見つめる。
そんな彼女を見てカイトは肩の力を抜いたように笑った。
「いや、そんなに大したことじゃないんだ」
そうして彼は視線を窓の外に移す。
「明日からカッシート遺跡に向かうだろ? その近くが俺の故郷でさ。
丁度カッシート遺跡の裏手にある丘の上に俺の……家族の墓があるから、お前についてきて貰いたいと思って」
ドクンと胸が嫌な音を立てた。
カイトに関する情報でぽっかりと空いていた過去や家族という場所に、“家族の墓”というピースがピタリとはまった気がした。
以前からあまり自分の過去の話や家族の話をしない彼だが、恐らくこれが原因なのではないかと直感で思う。
「私でよければ、一緒に行かせてください」
努めて普段と変わらない様子では振る舞う。
変に意識しては逆に彼を傷つけてしまうかもしれないからだ。
「よかった。――リットンがいつも言ってるけど、お前ってホントに……女神みたいな奴だから、
お前が家族の為に祈ってくれたら……少しは…救われるんじゃないかと思って……」
「カイトさん……」
カイトの言葉を聞き、の目からは涙が零れた。
それを驚いた様子で彼は見つめる。
「ど、どうした?」
「いえ、ちょっと……」
そのまま口を噤もうとしたが、何故か止められなかった。
家族の話をする彼があまりにも痛々しくて。
「――カイトさんご自身は…救えないんですか?」
「え……?」
「カイトさんは……救われることはないんですか? 私では、救えないんですか?」
「…――っ」
彼女へ伸ばそうとしていた手を咄嗟にカイトは握り締めて自分の胸へ押しつけた。
その顔は俯き、唇は噛み締められている。
「――、お前の温かい心にはいつも……救われてる。でも、俺は、自分の幸せは望めない。人を幸せにもできない。
だから……これ以上はお前には近づけない。その涙を拭ってやることもできない……。
今、近づいたら俺は仲間としてお前の傍にいられなくなる。だがそれは、お前を不幸にすることと等しいんだ」
カイトの言葉にはゆっくりと首を横に振る。
「……カイトさんが幸せになることが……私の幸せなのに」
「…っ」
その場からは走って逃げだした。
自分は彼を救うことも、幸せにしてあげることもできないのだという事実に打ちひしがれて。
えーっと、また1か月くらい更新してませんね。すみませんm(__)m
さて、漸く今回はカイトのイベントに少し踏み込みました。
といいつつも、リットンの時と同じで途端にカイトが突き放しにかかりますけれども^^;
次の分岐で、恐らくカイトの過去を全て書くつもりなので、今回はこんな内容ですがそれまで待っていただけたらと…。
あ、ヒロインさんとくっつくのは更にその後ですが…。
どんどん暗い内容になっていっておりますが、最終的には(各ルートで)全員救済していくつもりですので
これからもどうぞ温かく見守っていただけたらと思います。
それでは、読んでくださった皆様ありがとうございました!
吉永裕 (2008.11.13)
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