「リットンさんのこと……ですか…………?」
「……あぁ」

 雨が小降りになった頃、カイトとアステムに付き添われてはリットンを探して街を歩き回っていた。

「リットンは満月の日、今日のような姿になる。 だからその日は近づかないことにしている。 あいつが嫌がるからな」
「……そうだったんですか」

 それで彼は時々ふらっといなくなってしまうのか、とは今までのことを思い出してゆっくりと頷いた。

「……だがもう冷静な状態に戻っている筈だ。心配ない」
「そうですか。よかった」

 これでリットンが自分を傷つけて怪我などすることはない、とひとまずホッとしたに、キャスカが何かを持ってパタパタとやって来た。

「……これ、リットンさんの懐中時計?」
「うな」

 コクンと頷くと、キャスカはの肩から空へと羽ばたき、川に沿って上流の方へ向かっていく。
その後ろを慌てて追っていくと――


「……っ――くそっ…………臭いが取れねぇ……――っ!」

小雨の降る中、川の中に入ってジャブジャブと身体を洗っていた男が振り返る。

「――お前ら……か。 ったく、寄るなと言っただろ。バカめ……」

 を見て、いつもとは違う険しい表情のリットンが口を開く。

「……あ、の」

 彼の言葉には表情を曇らせた。
近づこうとする彼女をアステムが制止するが、かまわず一歩踏み出す。

「……リットンさん。 私、何も知らなくて……逆にリットンさんに迷惑をかけてしまって……。
 ――すみません。 でも、私。もっとリットンさんのこと、知りたいです。 大切な仲間だから……」
「……

 彼女の言葉にリットンは驚いた表情を浮かべるが、一転、シュッと姿をくらますといつの間にかの隣に来て手を握っていた。

「え、あの……」
「もっと知りたいんなら、この後、ベッドで続きを――」
「――離れろ」

 その瞬間、光の如き速さでアステムのレイピアがリットンの首筋に向けられる。
危ねぇなぁ、とブツブツ言いながらリットンはチッと舌打ちし、渋々の手を放した。

「目の前にいい女がいるのに……またお預けかよ」

 そんなことを言う彼の肩をアステムとカイトがガシリと掴む。
そうしてすぐさまをリットンから引き離した。

「……あの、何がどうなってるんですか?」

 突然の展開にはキョトンとした表情で彼らに尋ねる。

「リットンは魔物化すると女好きになるんだ」
「カイト、言葉が露骨過ぎるぞ。 欲望に歯止めがきかないと言え」
「……見境が無いってことには変わりないだろ」
「うるせーな!野生に近くなって理性がすぐ吹っ飛ぶんだ、仕方ないだろうが!!」
「――こういう理由もあってお前を近づけたくなかったのだが……」
「は、はぁ……」

 そんなことを言い合っていると、パッシが遅れてやって来た。

「……お、大丈夫だったみたいだな? ほら、タオル」
「あ、ありがとうございます」

 呆然と立ち尽くしたままはタオルを受け取る。

「じゃあ、帰るぞ」

 そう言ってカイトがリットンの肩を叩いた。

「……ったく、どいつもこいつもお節介な奴らだ」

 独りごちながらもリットンはカイトとアステムの後についていく。
そんな彼らの後姿を見て、は微笑んだ。

「……色々ある奴らだけどよ、これからも頼むぜ」
「はい」

 パッシにそう答えると、も彼らの後に続く。
いつの間にか雨は止み、雲の晴れた空に浮かんでいた満月は西の方へと傾き始めていた。




 ――次の日。
いつもの姿に戻ったリットンに部屋に呼ばれたは、彼の部屋のドアをノックする。

「どうぞ」
「失礼します」

 そうして入った彼の部屋は、いつものお茶の香りがした。
すると彼がやって来て、ティーセットが置かれたテーブルの方へとエスコートしてくれる。

「――腕の怪我は大丈夫かい?」
「はい、傷も浅いですし全然何ともありませんよ」

 ニコッと微笑むと、少しホッとした様子で彼も笑顔を見せた。
しかしすぐに表情が曇る。

「……君を傷つけたくなかった。 昨日は本当にすまないことをしたね」
「いえ、そんな……謝らないでください。 リットンさんは……必死で堪えようとしてくれました。
 錯乱状態の中でも私の名前、呼んでくれましたよね? ――思い出してくれてありがとうございます」
。君は本当に……女神のような人だね」
 
 そう言うと、リットンはそっとの手を握る。

「私はこのお茶を飲み続けなければ自分で自分を制御できない。 だが、今は仲間たちの存在が何よりも心強い」
「リットンさん……」

 そうして彼は優しく穏やかに微笑む。

「……君は私にとって大切な仲間だ。 これからも宜しく、
「はい!こちらこそ!!」

 は嬉しそうに微笑むと、彼の用意してくれたカップを手に取る。

「……美味しい! 私、今度お茶に合うお菓子、作りますよ」
「それは楽しみだね」

 口に運んだハーブティーは、いつも以上にいい香りを放っていた。












というわけで、やっとリットンのイベントが終りました^^
実は女たらしの彼の方が好きだったりします。
どんだけ普段、抑えてるんだよ〜似非紳士!と自分で突っ込んだり。

今回もカイトとアステムの話はほぼコピペです。すみません(´Д`)


また次回は分岐なしになると思いますが……^^;
どうぞお楽しみに♪

読んでくださったお客様、ありがとうございました^^



吉永裕 (2007.11.19)


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