第2章  第6節






 美味しい料理と仲間たちの笑顔。
そんな幸せな空間にいられることが嬉しい。
薄暗く心に立ち込めていた昼間の不安がまるで嘘のようだ。
あの頭痛も今は治まっている。
しかし逆に、今が夢なのではという気持ちにもさせた。
 そんな気持ちを払う為、は手洗いに席を立つ。
トイレの前の窓の外を見ると先程までポツポツ降っていた雨は止んでおり、雲に隠れていた月が少し出ているのが見えた。
それでも分厚い雲が空の殆どを覆い、またすぐに雨が降り出しそうである。

「……リットンさん、大丈夫かなぁ。
 2階の窓が開けっ放しだった気もするし……」

 ――それに何だか変な胸騒ぎがする。
まだまだカイトたちは飲み足りないようなのでここにいるだろうし、自分1人が少しくらい抜け出しても大丈夫だろう、と思い
は一旦、家に戻ることにした。


 「あれ?は?」

 数分後、カイトがキョロキョロと辺りを見回した。
パッシが「手洗いって言ってたけど」と言うと、丁度、追加分のジョッキを持ってきた店員が口を開く。

「あ、お連れ様なら家で寝ている病人の方が気になるから一度戻ってくると仰って……」

 するとカイトたちの顔色が一瞬にして変わる。

――あいつ……っ!」

 そうして一斉に席を立ち、彼らは一目散に店を飛び出した。



 その頃、家に戻ったは呆然と立ち尽くしていた。
家の奥の方からガシャンガシャンとガラスを割るような音が聞こえてくるのだ。
もしかしたら強盗か賊が侵入したのかもしれない――そう思いながらは刀の柄を持ち、気配を消して廊下を進んでいく。
 すると、いつもは鍵がかかっている部屋から薄明かりが漏れていた。
どうやらそこに誰かがいるらしい。
慎重に音を立てないように近づくと、は息を整えて少し開いたドアから中の様子を伺った。
――すると。

「うわあっっっああああああああ!!」

 苦しそうに絶叫しながら床や壁、そして窓を狂ったように殴りつける人物がいる。
窓からの月明かりのみで辺りは薄暗かったが、その者の身体は己の血で染まっているのが見えた。

「あぁあぁぁぁ……っぐぁぁああああっっっ!!!」

 叫びながらうごめく人物に、は思わず刀を落とす。
すると、バッとその者がこちらを向いた。
は息を呑む。

 月光の中、浮かび上がって見えるのは、野獣のような長いツメと、紫色の怪しい瞳。
なんと、その人物は――

「……リットン…さ……ん…………?」

 ――いつもの穏やかで優しい姿など微塵も感じさせない魔物のようなリットンだった。










あぁああぁ!前回1ヵ月後くらいになるかも……とか書いておきながら
軽く2ヶ月経っているではなかですか!!

申し訳ありません〜^^;


やっとメインイベントへ突入です。
でも、ここからも長いです……。


次回は分岐します^^
もう話は書き終わっているので、次こそ早めの更新で!

それでは、読んでくださったお客様、ありがとうございました!!



吉永裕 (2007.11.7)


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