第2章  第5節






 皆と合流した後、は穏やかな気持ちで家に戻った。
噂のことなど何も知らなかった朝に比べて、ずっと人々の視線が痛く恐ろしかったが、
自分を信じ、傍にいてくれる仲間たちの存在に励まされたのだ。
 そうして家に戻り、夕食の準備に取り掛かろうとしているにカイトが話しかける。

「今日、一緒に皆で飯を食わないかってパッシに誘われたんだ。 だから今日の夕食当番の仕事はなし」
「え、ホントですか!! わぁ、嬉しい!
 やっぱり大勢で食べるご飯の方が美味しいですし、パッシさんと一緒にご飯だなんて、初めてですもんね」

 そう言っては笑顔を見せた。
そんな彼女に一同はホッとした表情をする。
しかし、リットンが表情を曇らせた。

「折角の申し出だが、私は体調が悪いので今日は家でゆっくりすることにするよ。
 彼に宜しく伝えてくれないかい」
「え、リットンさん、具合が悪いんですか!? だったら私も家に残りますよ」

 が心配してそう言うと、彼は笑顔で首を横に振る。

「いや、私は大丈夫さ。折角パッシが誘ってくれたのだからゆっくりしておいで、
 それに君が止めてくれないと、カイトの酒代のツケがどんどん膨らんでいくからね」
「でも……」
「変に気を遣われた方が疲れる時もあるんじゃねーの?
 リットンが行って来いって言うんだから、言葉に甘えたらどうだ?」

 うーんと唸っていたにカイトが言った。
アステムも頷く。

「私なら1人でも大丈夫さ。たまには遅くまで楽しんでくるといい、私の分まで」
「……分かりました。じゃあ、お土産買って帰ってきますね!」
「あぁ、楽しみにしているよ」

 そうしてリットンに見送られ、たちはパッシと約束をしていた家庭的なレストランへと向かう。

「リットンさん、ちゃんと自分でご飯とか食べれるかなぁ。 一応、保冷庫には食材があるけど……」
――心配しなくても大丈夫だよ。動けないくらい具合が悪いってわけじゃなさそうだし」
「そうですね。リットンさん、しっかりしてるし……」

 何だかいつもと違うリットンを気にしながら、は空を見上げた。
辺りは暗くなり始めたばかりだった。



 パッシの指定したレストランに着くと、暖かい雰囲気のご主人と奥方が出迎えてくれた。
朝の噂が未だに消えない様子なのをパッシに聞いたのか、気をきかせて個室のテーブルを用意してくれたらしい。
 目隠し用に入り口に取り付けられている貝殻のついた紐をくぐると、既に来ていたパッシが「よっ!」と手を上げた。
まるで自分の家のように寛いでいる様子。
何でも、パッシの父親とここの主人が親友らしく、昔から家族で食事に来ていたそうだ。
今はパッシ1人で昼食を食べに来ることもあるそうで、ご主人や奥さんだけでなく、他の従業員とも仲が良さそうである。

「パッシさん、今日はお招きいただいてありがとうございます」
「おぉ、別にそんな大したことじゃないけど、たまには皆で外で飯食うのもいいだろ?
 ホラ、堅苦しい店じゃないんだ。早く座れよ」

 そう言うと、たちはテーブルを囲むようにして椅子に座る。

――パッシさん、折角誘っていただいたんですけど、残念ながらリットンさんは体調が悪いらしくて」
「あぁ、そっか。……ま、あいつ身体弱そうだからな。 家でゆっくり寝てりゃ、明日には治るだろ」
「そうだといいですけど……」

 パッシの隣に腰掛けたはふぅとため息をつきながらテーブルの上に置いた自分の手を見つめた。
 リットンは昨日から具合が悪かったのだろうか。
それなのに自分のせいで昼間は街中を走り回らせてしまった。
大丈夫とは言っていたけれど、本当にそうなのだろうか。
 そんなことを考えていると目の前にドンとジョッキが置かれ、カイトがの顔を覗き込む。

「楽しめよ? リットンもああ言ってたし」
――はい!」

 自分のせいで場の雰囲気を壊すわけにはいかないと思い、は暫くは何もかも忘れることにして、ジョッキを持った。

「じゃあ
――
「「「「乾杯!」」」」

 そうして大人3人、少年1人、魔物1匹の楽しい食事が始まる。
しかし反対に外は満月が厚い雲に覆われ、ポツポツと雨が降り始めていた。














今回はメインイベントの1つだ!!! と勢い込んで作っていたのですが、
長くなりそうだったので断念…………^^;

お待たせした割にはたいしたことのない内容で申し訳ありません(´д`、)
次……こそは、書けると思います。
また1ヵ月後とかになるかもしれませんが……(´ヘ`;)

どうぞごゆるりと……お待ち頂けるととありがたいです^^;
それでは、最後まで読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!!



吉永裕 (2007.8.31)


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