「!」
聞き慣れた声がして、顔を上げるとそこにはリットンの姿があった。
いつも穏やかで落ち着いている彼が何だかとても取り乱しており、に駆け寄って彼女の手を取ると漸くホッとした表情を見せる。
「……リットンさん、もしかして私を捜し回ってくれたんですか? ――ご迷惑ばかりかけて、すみません」
「いや、君はそんなことを言う必要はないだろう? 寧ろ私がに謝らなければ……。
もっと早くあんなデタラメな噂に気づいていれば……君を傷つけることはなかったかもしれないのに」
そう言うとリットンは曇った表情でうな垂れる。
「そんな……!リットンさんが謝らないでくださいっ!! あの噂も……もしかしたら本当なんじゃないかって……私、思ったんです。
……最近ずっと…………頭痛が酷くて。
頭がズキズキして……、そしたら今までの記憶が断片的に浮かんできては消えて……もやもやして……真っ暗になって、
夢なのか現実なのかよく分からなくなったりして。 逆に頭が真っ白になることもあるし。
自分で自分がよく分からなくて……。自分が信じられないんです。
――私は本当に皆さんの知ってるなのかなって……、本当に私はこの世界に実在してるのかなって……。
今までのことは全部夢だったんじゃないかって……不安なんです。
あの噂のような夢も昨日見ました。本当に、リアルな夢だったんです。 だから……」
「……」
リットンはそっとの両頬に手を添えると額にそっと口付けを落とした。
そうしてハンカチを取り出すと、優しく彼女の涙を拭っていく。
「……苦しかっただろう。 昨夜キッチンで会った時に気づいてあげられていたら……本当にすまなかったね。
でも、もう心配しなくていい」
ゆっくりと頭を撫でながらリットンは優しく声をかける。
「君の傍にはいつだって仲間がいる。 カイトやアステム、キャスカやパッシだって君のことを大切に思っているよ。
君の苦しみは皆の苦しみさ。1人で背負い込むことはないのだよ。
……私も、彼らに及ばずながらも少しは君の力になれると思う」
それまでとても優しい表情だったのに、自分のことを話す時だけリットンは目を逸らし淋しげに笑った。
そんな彼に胸がドクンと脈打つ。
高鳴るような感覚ではなく、この鼓動は動悸のようなものだとは思った。
「――身体的にも精神的にも疲れが溜まっているのではないのかね?
ここ半年、ずっと遠くの町や村に行く仕事ばかりだったし、君自身も大変な怪我をしてきただろう。
暫く休養を取った方がいいと思うよ」
――皆と繋がることで、心の不確かで不安な部分が埋められていく。
皆の存在が、私に力をくれる。
特に、リットンの存在は――――
――でも……どうして? リットンさん。
今日のリットンさんは……何だかとても――私と距離を置こうとしている気がする。
いつもと同じように優しい口調だけれど、明らかに今日の彼はどこかよそよそしい。
「リットンさん……」
顔を上げてじっと彼を見つめた。
するとリットンは穏やかに笑う。
「、私は……君をとても愛しいと思うよ。
だから君にはずっと笑っていて欲しい。 無理にではなくて……苦しい時は私たちに話して楽になって欲しいのだよ」
「……はい」
そんな彼にきゅうっと胸が締め付けられる想いがする。
その「愛しい」には特別な想いは入っていないの?
何でそんなに苦しそうに笑うの?
「――リットンさんも苦しいこととか悲しいこととかあったら……私でよければ話してくださいね」
「……あぁ。ありがとう」
そう言うと彼は帰ろうか、と声をかけた。
はい、と言いは彼の後に続く。
今までとは違う理由で再び溢れそうになった涙を堪えて顔を上げると、は目を細める。
自分たちの目の前に見える傾いた太陽の茜色の光が、
温かくて優しい色をしているのに、何だかとても淋しくて切なく思えて――
――胸が締め付けられる程に美しいのに、どうしてこんなに悲しい気持ちになるのだろう。
そんな夕日の色に染まった白い服を纏うリットンの姿さえも悲しく見えた。
久しぶりの分岐です^^;
一気にヒロインさんが鬱モードですが…………どうなるんでしょうね(;´▽`A``
さて、出会って半年ほど経つので、次第に……いい感じ?になってきておりますが
リットンだけは不穏な空気が流れております……けども理由もおいおい分かります故^^;
しかしまだまだ先は長いですのでどうぞ気長にお待ちくださいませ^^
では、読んでくださった皆様、ありがとうございました!!
吉永裕 (2007.8.2)
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