「!」
聞き慣れた声がして、顔を上げるとそこにはカイトの姿があった。
走り回ってくれたのか、の姿を確認すると膝に手をついて肩で息をする。
は慌てて彼の所まで走っていった。
「カイトさん……。勝手に出てきてしまってすみません」
「お前が謝ることじゃねーだろ?」
そう言うとカイトは二カッと笑った。
そんな彼の態度にの目からは涙が零れ出す。
「私、最近ずっと……頭痛が酷くて。
頭がズキズキして、そしたら今までの記憶が断片的に浮かんできては消えて……もやもやして……真っ暗になって、
夢なのか現実なのかよく分からなくなったりするんです。 逆に頭が真っ白になることもあるし……。
自分で自分がよく分からなくて……。自分が信じられないんです。
――私は本当に皆さんの知ってるなのかなって、本当に私はこの世界に実在してるのかなって……。
今までのことは全部夢だったんじゃないかって……不安なんです。
あの噂のような夢も昨日見ました。本当に……リアルな夢だったんです。 だから……」
「、お前……」
カイトが片手でぐっとの頭を抱えるように抱き締めた。
「……ずっと1人で悩んでたのか? つらかったよな。 気づいてやれなくて悪かった」
優しい声が耳元で聞こえる。
はカイトの服をキュッと掴み、彼の肩に額を当てるようにして頭を乗せた。
「――疲れが溜まってるんじゃないのか? ここ半年、ずっと戦いっぱなしだし。お前も大きな怪我してきたしな。
暫く仕事休んだらどうだ?もしくはこの街の中でできる仕事を探すとか。 ほら、武道の家庭教師とかあるし」
カイトの言葉が心に染み入ってくる感じがした。
――皆と繋がることで、心の不確かで不安な部分が埋められていく。
皆の存在が、私に力をくれる。
……特にカイトさん。
常に皆のことを気にかけ、尚且つ、明るく頼もしいリーダー的な存在。
何だかんだいっていつも困った時は助けてくれる。
そんな大人びた面も持ってるのに、時々キャスカとケンカしてすねたり、お酒に目がなかったり
私みたいな年下に言い負かされちゃったり……そんな可愛らしい所も持っていて。
確実に彼の存在が私を笑顔にさせる。
「……カイトさん、ありがとうございます」
顔を上げて微笑む。
するとカイトも笑った。
「よかった。やっぱりお前は笑ってる方がいいぜ。
――お前が元気ないと……俺も調子が狂っちまう」
プイッと顔を背けながらもごもごとカイトが口篭った。
そんな彼にきゅうっと胸が締め付けられる想いがする。
「じゃあ、帰ろうぜ。あいつらもお前のこと捜してたし、パッシも心配してたから」
「はい」
そう言うとカイトは身体を離して手を差し出した。
はキョトンとその手を見つめていると、彼が口を開く。
「もしまた頭痛が起こったとしても、俺がお前を現実に呼び戻してやる。
だから、怖くなった時は遠慮せずに言えよ」
「カイトさん……」
再びジワジワと涙が出てきそうになるが、泣いてはまたカイトを心配させてしまうと思い、
は俯いたままそっと彼の手を取った。
「じゃあ、帰りましょう」
涙を堪え顔を上げてそう言うと、は目を細める。
彼の背後に見える傾いた太陽の茜色の光が、何だかとても温かくて優しくて――
――胸が締め付けられる程に、美しいと思った。
そして、そんな夕日を背にしたカイトをとても愛しいと思った。
久しぶりの分岐です^^;
一気にヒロインさんが鬱モードですが…………どうなるんでしょうね(;´▽`A``
さて、出会って半年ほど経つので、次第に……いい感じ?になってきておりますが
やっぱりカイトはおいしいトコもってく感じですね^^;
しかしまだまだ先は長いですのでどうぞ気長にお待ちくださいませ^^
では、読んでくださった皆様、ありがとうございました!!
吉永裕 (2007.8.2)
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