「!」
聞き慣れた声がして、顔を上げるとそこにはアステムの姿があった。
普段クールな彼なのに、何だかとても取り乱しているように見える。
しかし、傍まで歩いてくると彼はいつもの冷静さを取り戻す。
「……勝手に出てきてしまってすみません」
「お前が気にすることではない」
そう言うとアステムはポンと頭に手を乗せた。
彼は穏やかな表情をしている。
そんなアステムの態度にの目からは涙が零れ出す。
「私……最近ずっと頭痛が酷くて。
頭がズキズキして……、そしたら今までの記憶が断片的に浮かんできては消えて……もやもやして……真っ暗になって、
夢なのか現実なのかよく分からなくなったりするんです。 逆に頭が真っ白になることもあるし……。
自分で自分がよく分からなくて……。自分が信じられないんです。
――私は本当に皆さんの知ってるなのかなって、本当に私はこの世界に実在してるのかなって……。
今までのことは全部夢だったんじゃないかって……不安なんです。
あの噂のような夢も昨日見ました。本当に、リアルな夢だったんです。 だから……」
「……」
アステムはそっと彼女の両肩に手を置いた。
何だかとても温かくて、その部分だけでも自分は確かに存在しているのを実感できた。
そして、彼が真っ直ぐ自分を見つめてくれるその瞳が何よりも心を温かくさせる。
「――心身ともに疲労が溜まっているのかもしれない。 ここ半年、色々あったからな。自身も大きく傷を受けた時もある。
暫く休んだ方がいいのではないか?」
アステムの言葉が優しく染み入ってくる感じがした。
――皆と繋がることで、心の不確かで不安な部分が埋められていく。
皆の存在が、私に力をくれる。
――特にアステムさんの“ポン”に私は弱い。
子ども扱いされているだけかもしれないけれど、私の頭の上に手を乗せた時の彼の表情は何だかとても優しくて温かくて、
そんな顔をチラッと覗く度に、胸の奥がちょっとくすぐったくなってしまう。
いつも手が置かれている場所に、突然、アステムの額が乗せられる。
途端にくすぐったさが消え、きゅうぅと胸が締め付けられた。
それなのに心臓がドキドキと物凄いスピードで脈打っていく。
一気に先程の涙が干上がってしまったかのように、頬が熱い。
「……そんなに熱はないようだな。
やはり疲労からくる頭痛かもしれない」
そう言うと、彼はすっとから身体を離した。
「……アステムさん、ありがとうございます」
顔を上げて微笑むと、は目を細めた。
彼の背後に見える傾いた太陽の茜色の光が、何だかとても温かくて優しくて――
――胸が締め付けられる程に、美しいと思った。
そして、そんな夕日を背にしたアステムがとても恋しいと思った。
久しぶりの分岐です^^;
一気にヒロインさんが鬱モードですが…………どうなるんでしょうね(;´▽`A``
さて、出会って半年ほど経つので、次第に……いい感じ?になってきておりますが
相手がアステムだと……そこまで甘くはならないですね…………。
まだまだ先は長いですのでどうぞ気長にお待ちくださいませ^^
では、読んでくださった皆様、ありがとうございました!!
吉永裕 (2007.8.2)
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