第2章  第2節





 傭兵の変死体が見つかった次の日、警備隊の依頼を受けてギルドには捜索隊の募集と情報提供のビラが貼られていた。
傭兵たちの間でもその話があちらこちらで飛び交っている。

「嫌な感じだね」
「あぁ。……ただの殺人事件って訳でもなさそうだからな」

 リットンが辺りを見回してそう言うと、カイトも暗い表情で答える。
アステムやもギルドの重い空気を感じ取り、表情が硬い。

「よぉ、お前ら」

 カウンターにやってきたカイトたちをパッシがいつものように迎えた。
そうして一枚の紙を見せる。

「入り口の紙、見たろ? お前ら、捜索隊の結成に手を貸さないか?」
「……まだ何とも答えられねぇな。 第一、まだ新人のがいるんだ。捜索隊の条件はシルバーLv以上だろ?」
「そりゃそうだな。じゃあ、他の仕事もあるぜ?」

 そうしてファイルから紙を取り出し、カウンターの上に置く。

もたまには違う土地に行ってみたいだろ?」
「どこです?」

 紙の依頼内容の欄には

『魔王軍領内に新しく建造されたと思われる施設の調査』

 と書かれていた。
依頼主は傭兵団領内の町や村の自治長となっている。

「最近、魔王軍の動きが怪しいっていうのはお前たちも知ってるだろ。
 で、この1週間ほど前に傭兵団領地との境のすぐ近くにある場所に新しい施設ができたらしい。
 依頼はその施設は何を目的として作られたものなのかを探る、っていうものだ。
 町や村の長は魔物に町や村を襲われるのを恐れてるからな。 早めに魔王軍の動きを把握しておきたいんだろう」
「……もしそれが人に害を与えたり、戦争に関係したりする施設だったら?」 
「その時はまた違う依頼が来るだろうぜ。 恐らく、帝国軍からも来るだろうよ」

 パッシがそう言うとカイトはうーんと頭を抱える。
しかし依頼書を手に取ると、パッシに返した。

「今はやめとく。あと数日はサンティアカ周辺にいようと思ってな。 その施設に行くまでには結構日数が必要だろ」
「……あぁ、そうだな。 じゃあまた時間に余裕がある時は言ってくれ。
 それまで誰もこの依頼を受けてなけりゃ、また提示する」
「おう、悪いな」

 そう言ってカイトは席を立った。


 とりあえず目ぼしい仕事の依頼がなかったので一時解散することになった。
はさっさと歩いて行ってしまうカイトの背中を追いかける。

「カイトさん」
「ん、どうした?」
「あの……すみません。 私のランクが低いから……依頼、受けられなくて」

 そう言うとカイトはキョトンとした表情でを見る。
するとクッと軽く笑った。

「別にお前のランクは関係ないって。元々、捜索隊の依頼を受けるつもりはなかったしな。
 ああいう仕事は事件解決のエキスパートに任せた方がいい」
「そうですか?」

 それならいいんだけど、とは少し安堵する。
そんな彼女の表情にカイトは穏やかな眼差しを向けた。

「実力はシルバーLv以上、あると思うんだけどな。
 昇進試験受けれるほど、まだ傭兵してねぇからな、お前は」
「いつから受けられるんですか?」
「まず、傭兵になって1年後にノーマルLvとして認められるんだ。
 それから半年後にアドバンスドLv試験が受けられる。 更にその半年後にシルバーLv試験。
 ちなみに、アドバンスドLv試験を抜かしてシルバーLv試験を受けられる特別制度もある。
 一定のレベル以上の仕事依頼を、ギルド奨励回数の2倍以上完遂させている事と、苦情が1つもない事だな。
 ……で、ゴールドLvは年に2回あるギルド主催の武闘大会で上位3位に入らなきゃなれないんだ」
「へぇ……」

 は少し後ろに仰け反りながらカイトを見上げた。
――ということは。

「カイトさんとアステムさんって、武闘大会の上位入賞者だったんですね」
「まぁな。……とはいえ、俺は運もあるけどよ」

 照れ隠しに二ヤッと笑ってみせるカイト。
そんな彼にふふっとは笑みをこぼす。

「じゃあいつか私も武闘大会に優勝してゴールドLvになります!!! 見ててください、カイトさん、キャスカ!」
「うな」

 それまで大人しくの肩に乗っていたキャスカがうんうんと頷いてみせた。
そんな2人を見て、カイトの表情が明るくなる。

「おう!頑張れよ、
「はいっ!」

――彼女は本当に女神のような人だね。 心を温かく明るくさせる」

 カイトたちの様子を少し離れた所から見ていたリットンが口を開いた。

「……そうだな」

 アステムは特に表情を変える事無く静かに答えるが、街の中央にある時計台を見るとジッとリットンの顔を見つめる。

――そろそろお前の茶を飲む時間だろう。 戻らなくていいのか」
「ふふ、そうだね。 じゃあ、2人を呼んで来るよ」

 そう言ってリットンはアステムの傍を離れた。

「やぁ、君たち。そろそろ家に戻ってティータイムというのはどうかな?」
「いいですね!」
「じゃあついでに食材も買って帰ろうぜ」
「うなうな!!」
「ん?キャスカは何が欲しいの?」
「ミルクがもうすぐ切れるはずさ。 キャスカ用のミルクも買うとしよう」
「はい!」

 そう言うと、少し離れた所にいたアステムに気づいたが彼に手を振る。

「アステムさーん!何か欲しい物あります?」
「……ふっ」

 和気藹々とした仲間たちを見てアステムは目を細めて笑った。









ぼちぼち進んでいっているmissingです^^;
またもや間が空いてしまいました(´Д`;)
色々書きたい事は沢山あるんですけど、順序がね、あるので……^^;

もうきちんとメモとってないと、頭の中がごちゃごちゃです(;´▽`A``

まだまだ続きますが、読んでくださってありがとうございました!!
今後も応援宜しくお願い致します^^




吉永裕 (2007.6.30)


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