目の前のリットンは、いつも使っているティーセットを持って立っていた。
「夜分にすまないね。少し君の傍にいたかったものだから」
「リットンさん。どうぞどうぞ」
「それでは、失礼するよ」
がお茶受けに数種類のドライフルーツを用意すると、彼は優しく微笑んで先に彼女を椅子までエスコートした。
「大丈夫? 眠くないかい?」
「はい、まだ全然」
「ではお茶をどうぞ」
「いただきます」
穏やかな彼の声といつもの香りに部屋も心も満たされて、次第に心が癒されていくのを感じる。
自分にとっての心の支え、生きる希望――それがリットン。
彼の事情を知っても彼を好きなのは変わらなかったし、これからも一緒にいたいと思った。
それでも彼はどうだろう、との心にふと不安が過ぎる。
「あの……」
「何だい?」
「昼間は……すみません。何も覚えていないんですけど、でも、あの跡地を見たら……凄いことになってたから。
私、皆さんにあんな恐ろしい魔法を使ったなんて……。
リットンさんを危険な目にあわせてしまって、どうお詫びすればいいか……」
カップを置き俯きながら昼間のことを謝るの姿に、リットンは驚いた表情を見せる。
しかしフッと穏やかに微笑むと立ち上がって彼女の元へ歩み寄り、彼女の手を取り足元に跪く。
「謝ることなんてないのだよ。私の方が何度も君を危険な目に遭わせた。寧ろ私が償うべきだよ」
「そんな……」
「、君は私の命だよ。君にされて嫌なことなど何もない。
――あぁ、キャスカやカイトとあまりにも仲睦まじい様子を見せつけられると少し妬いてしまうけれどね。
それでも覚えているかい? 君を傷つけることと同じくらい、君がいなくなることが怖いと言った時のことを。
これからもその想いは変わらないよ。 ――だから、君のことは必ず何とかしてみせる」
リットンは真剣な表情でを見つめた後、彼女の手の甲に口付けを落とし、
ゆっくりと立ち上がって彼女の後ろに回りこみ、後ろからそっと抱きしめた。
「また催眠波で私のことを忘れたとしても、何度でも私が君を目覚めさせてあげるから怖がらなくていいよ。
そしてエウリードのところに連れて行き、君の頭の中のマイクロチップとやらを除去してみせる。
そうすれば頭の中がスッキリして、君の記憶もはっきりしてくると思うのだよ」
「リットンさん……」
じわじわと喜びと愛しさが胸から込み上げてくる。
背中に感じる彼の体温や耳元で聞こえる優しい声が体の中に染み入って、自分の体の一部になってしまったかのような錯覚すら覚えた。
「の明るく弾けるような笑顔や、女神のように美しくて優しい微笑みを見るだけで、私は幸せな気持ちになれる。
これから君の人生にずっと関わっていくつもりだから、君の笑顔を増やす為にも私は誰よりも強くなる。
君の心も命も幸せな未来も、私が守ってみせるよ、」
「――あ、ありがとうございます」
彼の言葉が嬉しすぎて言葉を詰まらせたは、身体を優しく包んでいる彼の手に自分の手を重ねる。
「……私、もう迷いません。リットンさんと一緒に笑って生きていく為に、私も最後まで戦います。
エウリードっていう人とも、催眠状態の自分とも……」
「あぁ、一緒に戦おう」
固く決意をし、彼の言葉に深く頷く。
それでも今は彼のことのみを考えようと思い、は目を閉じて少しの間だけ彼の肩にもたれた。
〜missing 第2章 終〜
(当たり前ですが、第3章へと続きます^^;)
第1章が終わってから1年と少し経ってやっと第2章終了です…^^;
今回も終わりらしくない終わりです。
丁度1章と同じく14節で終わりました。全然計算してなかったんですけど何かこういうピッタリなのって嬉しいです。
A型だからでしょうか(;´▽`A``
まぁ、長くなるから分けただけで話はずっと続きます。
タイトルをつけるとすれば、
第1章 はじまり
第2章 疑惑
第3章 ヒトの脆さ、ヒトの強さ
第4章 終幕、そして未来へ
こんな感じっすね…。
さて、今回のリットンルートは唯一ラブラブ…風を目指しました。
共通ルートでは公平な扱いをしているつもりなので忘れてしまいがちですが、リットンルートでは既にカップルな2人ですので
分岐した時しかいちゃつけないわけで……。
これでもいちゃついてるつもりですけども、リットンは紳士なのでね^^;
どうもボディランゲージよりも喋りの方が主になってしまいます。
さぁ、第3章はこのすぐ後の出来事から始まります。
また第1章のようにどこかへ出かけることが多くなると思います。
内容が単調にならないように、所々で設定を出しつつ、第4章に向けて走り続けたいと思います!
まだまだ続きますが、今後もmissingを宜しくお願いいたします☆
吉永裕 (2008.9.7)
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