第9節



 皆の介抱の甲斐あって、は復活した。
1日しか床に臥せっていなかった筈なのに、久しぶりに朝日を浴びたような気がする。
うぅ〜ん、とテントから出たは大きく伸びをした。
すると早朝の見張り番だったアステムと目が合う。

「もういいのか?」
「はい!
――私のせいで皆さんを足止めしてしまってすみません」

 そう言うとは深く頭を下げる。
するとポンと頭の上に何かが乗った感触がした。
はゆっくり頭を上げる。
そこには穏やかな顔のアステムがいた。

「元々はカイトの不注意のせいだ。
 ……気にするな。任務も大切だが、仲間はそれ以上に大切なものだからな」

 そう言って再び見張り場所へ戻っていく。
そんな後姿を見てはクスッと笑った。
自分は仲間として認めてもらっている――それは凄く嬉しいことだ。
すると後ろから肩をトンと軽く叩かれ、声をかけられた。

「やぁ、。おはよう。もう具合は良くなったのかい?」

 朝から爽やかな笑顔のリットンだった。

「はい。おかげさまでもうすっかり良くなりました!」

 そう言っては拳を握って肘を曲げたり伸ばしたりする。
そんな彼女を見てリットンは安心したように目を細めて喜んだ。

「そうか、それは良かった。やはり朝からの元気で美しい顔を見るのは気分が良いよ」

 彼はそんなことを言いながら顔を洗いに行く。
相変わらず……さらっと凄いことを言うなぁと思いながらもいつもと同じ対応にホッとした。

 皆、優しい人ばかりだ。

 は嬉しくなって笑顔を浮かべる。
そしてふとカイトのことを思い出した。 
朝が弱いカイトのことだからまだ寝ているに違いない――そう思ったはいつものようにカイトを起こしに行くことにした。
すると
――

――っ!」

 テントに入るとすぐに血相を変えたカイトに両腕を掴まれた。

「この馬鹿っ!俺がウトウトしてた間にどこに行ってたんだよ!!」
「か、顔を洗いに……」

 その剣幕には圧倒されて萎縮する。

「もう良くなったのか?無理してねーか?」
「はい、もう大丈夫です!」

 不安そうな彼には明るく応えた。
するとホッとしたような表情を浮かべる。

「そっか。ならいいんだけどよ。
 やっぱり俺が原因作っちまったし、お前に何かあったら……」

 そう言って腕を掴んでいた手を放した。

「カイトさんって心配性ですね」

 はふふっと笑う。

「ばっ、馬鹿野郎!! そんなんじゃねー!」

 そう言って赤くなりながらテントから出て行った。
それを見て再びは笑みを浮かべる。
その後、どこからともなくキャスカがやって来て彼女の膝の上に乗ってきた。

「キャスカ、久しぶり〜。元気だった?
 ごめんね、全然キャスカに構ってあげられなくて」

 倒れてからというもの、自分は床に臥せってばかりでキャスカの相手ができなかった。
今まで食事など大丈夫だったのだろうか。誰かが面倒見てくれたのだろうけど……。
そう思いながらキャスカの頭や背中を撫でる。
するとキャスカは立ち上がってスリスリと頬に擦り寄ってきた。

「寂しかったよね?ごめんね」

 そうしてはよしよし、と優しく抱き締める。

 私は幸せだ。
こうやって仲間が心配してくれて、傍にいてくれるのだから。
サウスランドからこの大陸に渡ってきた時は希望に胸を膨らませつつも、言いようのない不安もあった。
本当に傭兵としてやっていけるのか。仲間ができるのか。
 そんな不安を拭い取ってくれたのが、キャスカやカイト、アステムにリットンだった。
まだまだ傭兵としては全然経験が足りていないけれど、素晴しい仲間に出会えた。
それがには嬉しい。

「私、頑張るからね!」

 キャスカにそう言うと、は朝食の準備をしに外へと飛び出した。








またまた久しぶりのmissingの更新です。
しかもまた分岐してないっ……!!
本当にすみません……m(_ _)m

全然先に進んでおりませんが、ちょっとした彼らの交流を描きたいなぁと思って。
やはり恋愛の親密度の前に、信頼度をあげておかねば、と思いまして。
(こういう所がゲーム的な考え……。)


公式CPのつもりなのでカイトが出しゃばっていて、
他のキャラ好きな方には申し訳ありませんでした。
分岐した際には、そのキャラの天下(?)ですのでどうぞ次回の分岐をお楽しみに……。
といっても恐らく第10話も分岐しない確率が大です。
任務の遂行が先なので……(;´▽`A``


……というわけでのんびりまったりなmissingですが今後も宜しくお願いします!

それでは、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!!


吉永裕 (2006.7.3)




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