第10節
時間がかかったものの、何とか4日目の夕方にリオに辿り着いた。
依頼期間は1週間だったし届け物は生ものではないようだったので、村に着いた時にはふぅと安堵の息を漏らす。
「さて。もう宿で休みたい気分だが……渡しに行った方がいいんだろうなぁ」
「そうですね。早く届けましょう!」
目的地に着いたこともあって先程まで疲れた顔をしていた皆の表情は明るかった。
そうして依頼主に頼まれた依頼書を見ながら受取人のワイプの家を探す。
小さな村なのでその家はすぐに見つかった。
しかし、家の入り口の所に不安そうな顔をした女の子が立っている。
「どうかしたの?」
はしゃがみ込んで少女の顔を覗き込んだ。
するとその少女は彼女らの恰好を見て、あっ!と声をあげる。
「お姉さんたち、傭兵さん!?」
「うん、そうよ」
そう答えるとその少女はの手をギュッと掴んできた。
「あのね、ワイプさんがね!大変なの!!」
その言葉を聞いて、その後ろに立っていたカイトらは表情を変える。
「どうした?ワイプって人に何かあったのか?」
カイトが少女に尋ねると、少女はうん、と頷いた。
「あのね、ワイプさん今日の朝から裏の森に行ったきり戻ってこないの。
普通はね、空がオレンジ色になる前に帰って来るんだよ。なのに今日は帰ってこないの」
説明をしながら少女は目に涙を浮かべている。
「あの森ね、最近魔物が増えてすごく危ないってお父さんが言ってたの。でもワイプさんは大丈夫って言って今日もね、森に行っちゃったの。
ワイプさん、大丈夫かな。何かあったんじゃないのかな」
「そうなんだ。――カイトさん」
は涙を流す少女の頭を撫でながらカイトを見上げた。
カイトはそんな2人を見て頷く。
「ま、森まで荷物届けに行ってやるか」
「はいっ!」
カイトの言葉にだけではなくアステムやリットンも笑顔になった。
「民の為に力を振るうのが傭兵団の基本理念だからね」
「……暗くなる前に出発しよう」
「おう」
そう言うとカイトたちは井戸に水を汲みに行く。
「安心して、ワイプさんは私たちが捜し出して一緒に帰ってくるから」
が優しくそう言うと少女はコクンと頷いた。
「お姉さんたちも気をつけてね」
「うん。ありがとう」
そうしてもカイトらの所へ行き、水筒に水を補充する。
するとアステムは「疲労回復の薬だ」と言って薬草を差し出した。
「――あまり無理するな。完全に体力が回復したわけじゃない」
「はい、ありがとうございます」
「おぉっと抜け駆けかい、アステム」
が薬草を受け取ると、アステムと彼女の間に割り込むようにリットンが顔を出した。
そんな彼にアステムは「……くだらん」と言い、背中を向ける。
「。心配しているのは彼だけじゃない。 私の為にもキャスカの為にも無理はしないでくれたまえ」
「はい」
夕日を背に、リットンはの手を取り彼女とキャスカに向かってウインクを決めた。
「うな」との肩に乗っているキャスカもそれに答えるように声を上げる。
「……何でリットンはそんなにキャスカに好かれてんだよ」
ボソッとカイトが呟く声が聞こえた。
「リットンさんはキャスカにも紳士ですもん」
「「ねー」」
リットンとは向かい合って声を揃える。
悪かったな、紳士じゃなくて。と顔をしかめながら言うが、所持品を一通り確かめると
「じゃ、行くか!」とカイトが声を上げた。
その言葉に他の3人の表情もキリッと締まる。
そうして裏の森に続く道の入り口まで先程の少女に送ってもらうと、4人は薄暗い森の中へと足を踏み入れた。
本当に久しぶりの更新ですみません……!!
またもや分岐せず……。
しかし少しずつハーレム状態(?)に。
イマイチ、アステムの性格を把握しきれてないので
彼を書くたびに『今までこんな感じだったっけ?』とドキドキします……。
(ちゃんと設定を作れ)
……というわけで次回も……分岐なさげですが……
今後もmissingを宜しくお願いします!
それでは、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!!
吉永裕 (2006.7.28)
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