「……起きたか?」

 カイトが顔を覗かせた。

「……はぃ」

 喉がカラカラなのと、倦怠感で声が出ない。
するとカイトが傍らに座って、コップを差し出す。

「薬、持ってきたぜ」
「何の……薬です?」
「毒の解毒剤だよ」
「……あぁ、毒だったんですか」

 それでこんなに休んでも身体のだるさがとれないのかとは納得する。

「……でも気づかなかった。いつ毒にやられたんだろ」

 は薄っすらと倒れる前のことを思い出してみる。

「全部俺のせいなんだよなー、実は」
「え?」

 そう言うとカイトはすまん、と謝った。

「実は俺が毒キノコって気づかずに昨日のシチューの中に入れちまって」
「あぁ、じゃああのキノコが……」

 成程、それで食後から何だか気分が悪かったのか、と呆然とした頭で昨日の食事を思い出した。

「でも何で皆さんは平気なんです?」
「そりゃ俺たちは耐性があるからな!」
「なるほど……。いつもあんな毒キノコ食べてるんですか」
「アホか。違うっつーの」

 魔物と戦ったりする中で段々毒に慣れていくんだよ、と言いながらカイトはの背中を支えて上半身を起こす。

「ほらよ。飲めるか?」
「はい」

 そう言って毒消しの薬草を煎じた粉と水を渡すと、彼が身体を支えてくれた。
その大きな手と力強い腕に安心感を覚えながらはゴクゴクと薬を飲む。

「……ふぅ」

 薬は苦いが気分的に楽になった気がする。それに喉も潤った。
の顔に少しずつ生気が戻ってくる。

「じゃあゆっくり寝ろよ。今日は見張り役じゃねーから俺が傍にいてやるからな。 安心して寝れるだろ?」
「ふふ……そうですね」

 何だかカイトが兄のように思えてきた。
――頼もしくて優しいお兄ちゃん、か。
 そう思うと嬉しくなっての顔に笑みが浮かぶ。
その顔を見てホッとしたのか、カイトの表情も穏やかなものになった。
そうしてまた彼女を横たわらせる。

「……カイトさんみたいなお兄さんがいたらよかったのになぁ」

 テントの天井を見上げながらはポツリと言った。

「……ろくなことねーよ、俺が兄貴だなんて」

 彼は俯いて小さい声でそう応えた。
それまでの朗らかな雰囲気が急速に崩れた気がした。

「どうしてですか?」

 答えないカイトの目が悲しく揺れているのに気づく。
あぁ、これはあまり深く聞いてはいけないな、と思ったはそれ以上は聞かないことにした。

「私、カイトさんが好きですよ」
「は!?」

 突然のことにカイトは驚いての方を見る。

「だからこれからも宜しくお願いします」
「……おぅ」

 よくわからないが懐かれているらしい、と感じたカイトは穏やかな表情で目を瞑る彼女の頭をそっと撫でた。

「おやすみ」
「おやすみなさい」

 そう言うと薬が効いてきたのかすぐにスヤスヤとは眠りに入った。

「“カイトさんみたいなお兄さんがいたらよかったのに”……か」

 嬉しいような嬉しくないような、複雑な思いを抱きながら、その晩ずっとカイトはの寝顔を見つめ続けていた。













相変わらず、missingの更新遅くてすみませんっ……!!
1ヶ月ぶりかぁ……。
しかし今回は分岐することができました☆

今回はちょっと寄り道です。
まぁ、こんなことでもないと恋愛イベント起こりませんので。
といってもまだまだ恋愛は皆無ですが……(;´▽`A``


もうお分かりでしょうが、カイトは兄弟がらみのトラウマ持ちです。
これからどうやって恋愛に発展させようか迷い中……。



こんなmissingですがどうぞこれからも宜しくお願いします!
更新が遅めですけれども……。

それでは、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!!


吉永裕 (2006.6.9)



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