第13節
――目がかすむ。
「……参ったな。少し血を流し過ぎたみたい」
はキラードッグの体から刀を引き抜くと地面に突き刺し、片膝を落とす。
それでも……そろそろ皆も来てくれる筈――!
自分を励ますように頷くと、は地面に刺さった刀の柄を右手でしっかりと握り、目を閉じて全神経を、精神を、その手に集中させる。
そんな彼女の無防備な姿に、残った2匹の魔物たちは鋭い眼光で飛び掛ってきた。
「ガルゥッ!!!」
「うなっ!」
「お嬢さん!!!」
「大丈夫です。――2人は下がってて」
左右から挟まれるようにキラードッグに腕を噛まれた。
2匹は彼女の腕を咥えたまま、「グルルル」と唸り声を上げている。
しかしそれでもは体勢を変えず、静かに目を閉じたままだ。
万物に宿りし意思よ 精神よ
我に力を貸し与え 導き給え
心の中で雷召喚の呪文を唱えた瞬間、頭の中から声が聞こえた。
―― こ の 身 に 眠 る 我 が 力 、 解 放 し ま し ょ う ――
「ガガガガガガガガッ――ゴオォッ!!!」
の身体から光が一筋、空に上がったかと思うと一瞬にして空は黒くて厚い雲に覆われ、
轟音とともに大きな青白い雷が彼女の刀目掛けて落ちる。
そして、勢いが収まらない雷は、地面にぶつかった衝撃で小さく分かれ、噴水のように上空へと上ると弧を描いて再び地面へと落ちていく。
それはまるで、龍がの身体から飛び出しているかのような光景だった。
ジュウジュウと地面が音を立て、辺りは草や地面が焦げたにおいが漂う。
「2人は、無事…………?」
円形に黒く焦げた中心ではゆっくりと目を開けた。
すると自分から数十メートルほど離れた場所に、先程の2匹と思われる黒い物体が見えた。
どうやらもうこれで襲われる心配はないらしい。
――そう思ったら、プツリと緊張の糸が切れたように一気に身体から力が抜けた。
「お嬢さん!大丈夫かい!?」
「うななっ!うなっ!!」
2人の声が次第に大きくなってくるが、どこか曖昧にぼやけて聞こえる。
しかし、無事でよかったと思った。
「「「――っ!!!」」」
遠くから自分を呼ぶカイト、アステム、リットンの声が聞こえたと同時には意識を手放し、
グラリと前に傾くと、ゆっくり地に倒れていった。
―― 時 が 巡 り ………… い つ か …………… 時 、…………………… 会 い ま し ょ う ――
な……に? 何だかとても昔の、どこか懐かしい声。
とても大切で、尊い約束のような――
「……ぅ……ん……」
「ゴロゴロ」
耳元で聞こえてくる、いつもの落ち着く音。
ゾーリゾーリと頬に感じるザラザラの感触。
ゆっくり右手を動かすとビリっと肘から上に痛みを感じたが、指先にふわふわしたキャスカの頭が触れた。
「……うな?」
心配そうに覗き込んでくる大きな瞳。
あぁ、いろんなことに巻き込んじゃってゴメンと思った。
それと、無事でよかった、とも。
「――、目が覚めたかい!?」
ガタガタと音がすると、バタバタと数人の足音が近づいてくる。
「……っこの――お前って奴はっ!!!!」
耳がキンキンするくらいの大きな声でカイトが一喝するが、うっと言葉を飲み込んで黙り込み、拳をグググっと握ると唇を噛んで俯いた。
その表情は今にも泣きそうで、苦しそうなもので。
その隣にいるアステムも同じような顔をしていた。
しかしどこかホッとしたような表情での前髪をそっと梳く。
「……こんな無理をさせてしまって、すまなかったね」
の右手を包むようにして握ると、リットンが申し訳なさそうに口を開いた。
すると他の2人も頭を下げる。
「いえ、そんな……」
そんな彼らには首を横にゆっくりと振り、穏やかに目を細めた。
「皆さんは来てくれて……私を助けてくれました。
――ありがとうございました」
そう言うと、3人は一瞬驚いた表情をしながらも、すぐに表情を曇らせる。
「……お前はどうして、そんな風に」
「だって仲間じゃないですか、私たち。 皆がこうやって無事なら……それでいいじゃないですか」
そうしてがふっと微笑むと、彼女を囲んでいた3人も泣きそうな顔で笑ってみせた。
私の中のmissing熱が冷めないうちに(冷めかけてるのが残念ですが)更新です。
何だかあっけなくてすみません〜。
しかも相変わらず、魔法詠唱シーンが曖昧(;´▽`A``
まだきちんと世界観とか魔法の概念とかの設定を考えてないので
(普通は先に考えろ)
曖昧な表現で申し訳ないです……。
結局、1人で何とかやってしまったヒロインさん。
男たちの立場がないですね……。
次回をどうするべきか、更に迷う終わり方をしてしまいました^^;
というわけで、次回の更新はきっと物凄く遅くなる筈(;´▽`A``
どうぞ忘れた頃にまたいらしてくださいませ^^
吉永裕 (2007.2.23)
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