第12節

 *この話は、人によっては戦闘シーンにグロいと思われる表現があります



 結局、心配性な皆の厚意により、はカイトのマフラー+アステムの上着+リットンの保温袋の3点を装備することになった。
自分が倒れたせいで足止めをさせてしまったにもかかわらず、こうして身体を心配してくれる仲間がいることをはとても嬉しく思う。
そんな中、暗い森の中に眩しい光が広がった。

 目が眩む中、薄っすらと聞こえてくるキーンという金属音のような音。

「っく……!!」

耳を押さえているアステムの足がふらつく。
リットンも顔をしかめている。

「これは
――閃光玉!?」

 漸く光が収まり、視界がぼんやりと戻ってきたは辺りをキョロキョロと見回す。
すると音に聴覚をやられたのであろう。バタバタと小動物や弱い魔物たちが木から落ち、苦しそうに唸っている。
辺りには微かに火薬の臭いが漂っている。
 そしてこの光と音。
恐らくその正体は、一般人も道具屋で簡単に購入できる閃光玉だ。
いざという時、敵の目をくらまし、救援を求める為に常備している傭兵もいる。

「もしかして……ワイプとやらが!」

 頭をブンブンと振りながら、リットンがカイトを見ると「あぁ、そうだろうな」と未だに目が開けられない状態のカイトは頷いた。

「何かあったんだわ、急がないと!!」

 は光の方へ向かって走り出した。

!1人で行動するな!! お前はまだ回復してねぇ!」

 そんな彼女を引き止めるカイトの声が聞こえたが、ワイプに何かがあっては遅いと迷わず進んだ。
それに
――
 大丈夫。
きっと皆はすぐに後を追ってきてくれる。


 森を抜けると、そこは大きな沼があった。
その淵が赤く光っている。

――キャスカ!」

 目を凝らしてみると、キャスカの全身から赤い光が放たれていた。
そしてその足元にはワイプと思われる男性がしゃがみ込んでいる。
そんな彼らの元へは全力で走った。

「大丈夫ですか!?」

 男性の顔を覗き込むと、ホッとしたような顔を浮かべる。

「もしや、傭兵さんかね?」
「はい、そうです。村の女の子からワイプさんが戻ってこないというのを聞いて」
「はは、マリーンか。おかげで助かったよ。 村へ戻ろうとしたら、転んで足を挫いてしまってね。 身動きが取れなくなってしまって」
「もう大丈夫ですよ。私の他にも仲間が後からやって
――
「グルルル……っ!」
――あれはっ!」
「しまった、閃光玉の効果が切れてしまったようだ! さっき追い払ったキラードッグたちが!!」

 辺りを見回すと、目を真っ赤に光らせた凶暴なキラードッグがたちを取り囲んでいた。

「くっ……!」

 はワイプの前に立つ。
後ろは岩山、左は沼、そして自分の足元には動けないワイプ。
 ――ここは自分1人で撃退するしかない。
顔から流れる汗を感じつつ、はカイトたちから貸してもらっていたモノを身から外し脇の刀を抜くと、フゥと息を整え静かに構えた。
そんな彼女の気迫が伝わったのか、魔物たちは様子を伺っている。

「……動くと斬るわよ」

 低く呟くように発した言葉は、自分を落ち着かせる為だった。
目の前には5匹のキラードッグがいる。
辺りはキャスカの発している光しかなく、視界は限りなく悪い。
もしかしたら、奥の方にまだ数匹いるかもしれない。
かといってここを下手に動くことも出来ない。
 ……せめて、皆が来てくれるまで持ちこたえないと。

「ガルルルッ!!!」


 先頭にいた1匹の鳴き声で、一斉にキラードッグが襲い掛かってきた。

「――はっ!」

 飛び掛ってきた1匹の攻撃をさっとかわして、返し刃を浴びせる。
横腹にカウンターを喰らったそいつはウガウガと唸りながら絶命する。
しかし1匹倒しただけで安心するわけにはいかない。 今度は2匹が同時に左右から襲ってきた。
は咄嗟に前へ飛んで避けるが、起き上がった瞬間に飛び掛ってくる。

――くっ!」

刀で噛み付きはガードしたものの、左腕に鋭い爪が食い込んでいる。
 ――身体が……重い。
額に滲む汗に気づくと、はえいっとキラードッグの胴体を蹴り飛ばし、下から首目掛けて刀を振り上げた。
切断までは至らなかったものの、喉元を斬られたキラードッグは、ピクピクと前足を動かすが立ち上がることは出来ない様子だ。

「……っはぁ……はぁっ……」

 先程まで食い込んだ爪は皮膚と身を切り裂き、垂れた左腕から血が流れ落ちる。

「お嬢さん、後ろ!」

 ワイプの声で後ろを振り向くと、先程同時に襲ってきていた1匹が自分目掛けて飛びかかろうとしている所だった。

このっ……っ!」

 両手で刀を構えようとするが、左手に力が入らない。 は左手を垂らしたまま右手で刀を持つと、半身で構える。
そうして自分の間合いに飛び込んで来るまで力を溜める。

「っは!」

 前足が髪を揺らした刹那、は後ろに下がり、上から自分の体重を込めて切りつけた。

「ギャゥっ!!」

 刀はキラードッグの脳天に直撃したが、片手だけでは致命傷を与えることは出来なかったようで
すぐに態勢を整え、こちらに向かって飛び掛ってくる。
 ――避けられないっ!
至近距離からの攻撃に、は回避できないと判断し身構える。
その時
――

「うなっ!」
「ウガゥ!!」
「キャスカ!?」

 は辛うじて横に回転しながら避けるとキャスカが地面に転がっているキラードッグの耳を齧っている。
どうやら彼がキラードッグの横から体当たりしてくれた為に、直撃を免れることが出来たらしい。
しかし、彼女の右の太ももには一本の爪痕がつき、ポタポタと地面に血が滴り落ちていた。

「キャスカ、離れて。危ないわ!」

 そうしては避ける際に地面に突き刺さった刀を手に取ると、阿吽の呼吸でキャスカがキラードッグから離れた瞬間、首の後ろに刀を突き立てる。

「あと、2匹……」









あは……あはは^^;
記録を更新してしまいました〜(汗)
何と、4ヶ月ぶり!?
本当にすみません〜m(_ _)m

しかもバレンタインデーに更新なのに、全然ラブないし寧ろグロイし……。
あぁ、もうホントにごめんなさいです……。
とりあえずRPGでいう所の戦闘場面なのでかなりバトルしております。

……さぁ、ヒロインとキャスカ、そしてワイプの運命はいかに!?


吉永裕 (2007.2.14)




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