「――ミュウ。
貴方はを独り占めするつもりですか…?」
二人部屋の病室で寝ている10歳のミュウに彼よりも幼いミカサは問いかける。
けれどミュウは規則正しく穏やかに眠ったままだ。
「僕を貴方の世界から追い出して、彼女と二人きりの世界で
これからも夢を見続けるつもりなんですか…?」
一人、現実世界に戻ってきたミカサはミュウの肩を強引に揺すった。
それでも彼は硬く瞼を閉じたまま動かない。
「――何故なんです?
何故、面識のなかった彼女まで貴方の世界に引き込んだのですか。
僕が…貴方に彼女のことを話したからですか?」
廊下から慌ただしく足音が聞こえてきた。
恐らくミカサが目覚めたことに気づいた病院の職員らが駆けつけたのだろう。
その音で病室に設えた仮眠用のベッドで寝ていた母親も目を覚まし、ミカサの姿を見て驚きと喜びの声を上げる。
「――ミュウの、馬鹿」
涙を流してミカサを抱き締める母親にされるがままになりながら
ミカサはミュウに向かって呟いた。
彼はこれから先、身体が死なない限りはずっと夢の中で生きるのだろう。
ミュウが思い描く理想の世界で、好きな人の意思も操って、自分が寂しくない世界を作るのだろう。
――なんて可哀想な人だ、とミカサはミュウを哀れんだ。
そしてそれに巻き込まれたのことも。
ボクが君を選んだ理由。
ボクが君を求めた理由。
あの家の子どもは貰われてきた子。
金目当ての両親が研究所に身売りして生まれ研究者に育てられたが
境遇に同情したあの家の奥方に引き取られた。
勿論、あの子の両親が貰った以上のお金を払ったでしょうよ。
――子どもの頃に漏れ聞こえてきた大人たちの噂話。
君はこの噂を知っていただろうか。
大人に振り回され傷つき、それでも人を信じてみたいと願ったボクは、
塀の向こうにいる君も同じような人間だと思っていた。
しかし、本当の君はボクとは違っていた。
君は色々な能力を具えているのに、心には何も持っていなかったんだ。
だから君はあの世界で自分を変えた。
僕がナナミに会って変わったように、君も無意識に望んでいた人間らしさを手に入れた。
この世界はボクの望む方向に作用してくれた。
君の望みもここなら何でも叶うだろう。
ここでなら君とボクは何もかもを手に入れられる。
似ているようで似ていない君は、
ボクの希望であり、
憐れみと羨望の塊でもある。
この複雑な感情は、果たして愛と呼ぶのだろうか。
――たとえそれが愛でない屈折した感情だとしても、
ボクは君のいるこの世界を守り抜く。
−君の要る世界・終−
バッドエンド、その2です。
それとなくストーリーを分かっていただけたでしょうか。
書きたいものを書きまくった話でした。
よろしければハッピーエンドのミュウエンドもご覧下さいませ。
裕 (2016.11.3)
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