こんな時間に行ったら伊吹兄は迷惑だろうか。
は伊吹の庵の前に佇んでいた。
しかし伊絽波が本格的に敵になったわけだし、彼の様子が気になったのも事実だ。
「こんばんは。伊吹兄、いる?」
は庵の玄関から伊吹を呼ぶ。
さすがに夜分遅く部屋までズカズカとあがるのは失礼だと思ったからだ。
「。どうした?」
「いや…あの…」
伊絽波のことは心配だが、話してもいいのか少し戸惑った。
「…?まぁ、上がれよ。そこじゃゆっくり話もできないだろ」
「じゃあお邪魔します」
そうしては庵に上がる。
「なぁ、。風呂入ったか?」
「え?まだだけど」
「じゃあ今から入らないか?」
「え?」
「決まりな!」
「……えぇっ!?」
は驚き一歩後ろへ下がるが、伊吹は何食わぬ顔でそんな彼女の腕を取り、風呂場へと連れて行く。
「ちょうど風呂の湯が溜まったトコだったんだよな」
「じゃあ先に伊吹兄が入ってよ。私は後からでいいから!」
は必死に洗面所の入り口のドアにしがみつくが伊吹に引っ張られ、その手を離してしまう。
そして唯一の逃げ場であるドアの目の前に伊吹が立ちはだかった。
「何か話があるんだろ?風呂の中でゆっくり聞いてやるよ」
そう言って伊吹はシャツを脱いだ。
「無理無理無理っ!!」
自分にジリジリ近づいてくる伊吹には首を振りまくる。
ゆっくりなんて話せるわけがないでしょうがっ! しかも何でそんなに笑顔なのっ!?
あんなことがあったのに何でこんなに元気なの?
あ、もしかして伊絽波ちゃんのことがあったから、から元気なのかも……。
「…今日は結構真剣な話をしに来たんだけど……伊吹兄、様子が…あれだし……やっぱり帰るね」
「真剣な話…ね。予想はつくから今日はパス。それより…」
途端に冷めた表情になる伊吹にはビクっと肩を震わせた。
しかしすぐに心配そうな顔になり、頬にそっと触れる。
「お前、顔色悪い」
「それは…その……伊絽波ちゃんのこと、考えたら……」
結局、その名を出してしまった。
すると再び彼は不機嫌そうな顔をする。
「…何でお前は伊絽波のことばかり気にするんだ。そんなに俺が信用できないか?」
「そうじゃないよ!そうじゃなくて…。 イロハちゃん、凄く伊吹兄のこと好きだったんだなって思って。
私のこと、憎まずにはいられない程の想いだったんだな思ってさ…」
自分ばかりこんなに幸せでいいのだろうかと考えなくもないのだ。
そんなことを言ったら伊吹が怒るのが分かるから言わないけれども。
「俺もそのくらい今、のこと好きだけど?
――お前はどうなんだ?同じくらいとまではいかなくても俺のことを想ってくれてるのか?」
伊吹は真剣な表情での腕を掴み、食い入るように彼女を見つめる。
「そんなの当然でしょ!でも……同じ人を好きだから、イロハちゃんの想いが痛い程わかるの。
どうしてそんなに好きになれたのか。どうしてそんなに強く想えるのか。
伊吹兄のこと、私も好きだからイロハちゃんの気持ちは他の人よりずっと分かるつもりだよ」
「…だからってお前が遠慮することじゃないだろ」
「遠慮してるつもりなんて…」
ただ伊絽波の想いを思うとはその想いに共感して、伊絽波が感じていたであろう心の痛みや悲しみを
自身も少なからず感じてしまうのだ。
サルサラの苦しみを受けて身体がダルくなってしまった時の様に、伊絽波のことを考えても胸がズンと重くなってしまう。
「…すまん。お前を責めるつもりじゃなかったのに」
の表情が曇るのを見て伊吹はすまなさそうに謝った。
その彼の姿もの胸を痛ませる。
「ううん。私が…こだわり過ぎてたんだよ。ごめん。
もうイロハちゃんの話はしない。これからは私たち2人のことだもんね」
完全にふっきれたわけではなかったが、無理に笑顔を作った。
伊絽波の現在の気持ちが分からない以上はどうしようもない。
しかし、もし伊絽波は未だに伊吹のことを好きだったら、どうすればよいのだろうとはふと思った。
でも、いくら彼女が伊吹のことを好きでいたとしても、ハイどうぞとは渡せない。
そのくらい好きだったという思いはわかるけれど、でも、私の気持ちも理屈じゃないのだから。
「…ねぇ伊吹兄。もし私が性格最悪でも、好きでいてくれる?」
「何だよそれ」
「私、イロハちゃんが今でも伊吹兄のこと、好きだとしても渡さないから」
私はこの人が好き。
本当のお兄ちゃんみたいに優しくて温かくて頼りになって私よりもずっと大人。
私だって子どもの頃から伊吹兄の背中を追いかけて来たんだ。
あの頃は恋心はまだ芽生えていなかったけれど、でも、純粋な好意で。
そして、ここに戻って来て一緒に過ごすうちに憧れが恋に変わった。
先日の彼の熱い想いを聞いて、尚更想いは強まった。
離れたくない。放したくない。
私を心から愛し守ろうと思ってくれる人。
私の為に怒ってくれる人。
今までそんな人はいなかった。
暗い闇の底にいる私を救い上げてくれる人は伊吹兄しかいない。
「性格悪い女になっちゃうけど…でも、はいそうですかと好きな人は渡せないよ」
「…お前がそんなこと言うなんて珍しいな」
「うん。自分でもそう思う」
だけどこれだけは、伊吹という存在は譲りたくない。
「。俺は今無性にお前を抱きたい気分になったぜ」
「え――っ!?」
グッと膝の下に手を入れられ、一気に抱え上げられる。
「を抱きたい…」
「そ、そんなこと耳元で囁かれても…っ!! それにこんな場所で…っ!?」
「今すぐ抱きたいんだよ」
そう言うと伊吹はを洗面台の上に下ろし、抑えられない想いをキスに託す。
「…ぃぶきにぃ…っ…んあっ!?」
の小さな身体がピクンと跳ねた。
首筋にツーっと舌を這わせて伊吹は彼女の胸に触れる。
「力抜けよ、。首が痛い…」
「だって…っん」
今までされたことのない激しいキスをされると、強張った身体から力が抜けたは彼の首を離して後ろの鏡に背中をもたれた。
一方、伊吹は手際よくの服を脱がしていき、彼女の胸に巻かれたサラシに手を伸ばした。
「…じれったい」
「そんなこと言われても…」
「でもそれがまたそそるんだが」
「何よそれっ!」
「はい、お喋りはここまでだ」
そう言って伊吹は再びに唇を重ねてサラシをするすると解いていく。
「ぁ…」
は咄嗟に露わになった自分の胸を隠した。
いつもサラシで押さえつけている胸が本来の形を取り戻す。
「お前、もうサラシ巻くの止めろ。身体に悪いぞ?」
「そんなこと言われても…普通の下着つけたことないし持ってもないし」
「下着くらい俺が買ってやるよ」
「んっ…」
の手の内側から伊吹は手を入れて弾力のある胸に触れる。
修行の為に鍛えられたの胸は筋肉で張りがあり、綺麗な曲線を描いていた。
その曲線を伊吹の大きな手が不規則なものへと変えていく。
「っあ…ぁん…や…ぁ――っあっ」
次第に触られて敏感になっていく自分の身体に戸惑いを感じつつもの口から自然に声が漏れる。
伊吹の手はの胸から下がっていき、太ももの感触を堪能すると下着の上からすっと股間をなぞった。
「ひっぃ…っ…やぁ…そんなとこ触んないで…」
はビクリと身体を震わせる。
そして膝を立ててガードするが、逆にその太ももを掴まれてM字に開かれた。
「伊吹兄…やだ…っ…はずかし――っあはぁっ…んんっ」
の言葉を聞き入れず、伊吹は彼女の太ももを舐めながら下着の中に手を入れた。
そしてある部分に彼の手が触れた時、の身体に電気が走る。
その様子を見て伊吹はその部分を優しく触る。
初めての感触がにとっては大きな刺激を生んだ。
「あっあぁ…っあはぁ…っ…っ伊吹にぃ…っぅ…ん」
「そんなに可愛い声出されると俺も我慢できないんだけどな」
「だって…っ…だって……っ」
今まで味わったことのない感覚に涙を滲ませるに伊吹はそっとキスをして
彼女の下着を脱がすと自分も穿いていたジーンズを脱いでいく。
「…」
伊吹の姿を正視できずに顔を覆うを見て微笑むと、彼は火照った身体のを抱きかかえて風呂場へと向かった。
「もっと広いトコで可愛がってやるよ」
「伊吹兄、ヤラシイ…」
は恥ずかしさを隠すように伊吹の首にしがみ付いた。
「ほら動くなよ。シャンプーが目に入るぞ?」
「だって伊吹兄がくすぐるんだもん!」
「くすぐってるつもりはないが…」
たちは和気藹々と互いの髪を洗い合っていた。
「じゃあ洗い流すぞ。目、瞑ってろ」
「はーい」
伊吹と身体を交えたことで更にの伊吹へ対する想いは強くなった。
しかし恐らくよりも想いの強い伊吹によって彼女の身体、特に胸付近にはキスマークがいくつもつけられている。
「…、どこにも行かないよな?」
「…うん。もう離れない」
はにかみながらは返事をしてゆっくり瞳を閉じると、そっと伊吹がキスを落とした。
いやらしい伊吹兄でごめんなさいm(_ _)m
しかしできるだけ卑猥な言葉は使うまいと思ったので全然臨場感も何もないのですが…。
まぁ、R-17と思って許してください。
伊吹はとにかくヤラシイというイメージです。
あの手この手を使って相手も自分も満足させたいタイプかな、と勝手に思ったり。
それにしても、ついに一線を越えてしまいましたので、
次回からどういう展開にしようかなぁ…と考え中です。
それでは、こんな恥ずかしい話を読んでくださってありがとうございました!!
吉永裕 (2006.2.8)
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