こんな時間に行ったら葉月、迷惑かな…。
また仕事仕事って言いそうだけど、でも…会いたいし。
気づくと葉月の庵の玄関の前にいた。
元気にならなければ、と思った瞬間、彼の顔が浮かんできたのだ。
私に元気をくれる人――それが葉月。
「こんばんは…」
は奥の葉月に呼びかける。
「…どうしたの?こんな時間に来るなんて。今日は泊まっていくつもりかな?」
「え!? べ、別にそんなつもりじゃ…。ただ――何か葉月に会いたくなっちゃって」
顔を背けながらそう言うと葉月はくすりと笑った。
「嬉しいこと、言ってくれるね」
そっとの頬にキスをすると葉月は彼女の手を取り、自分の部屋へと歩き始める。
はそんな彼の背中を見つめてホッとした。
葉月が傍にいるだけで、安心できる。
今は力や霊力がない身体だけど、でも手は私よりも大きいし、背中だってしっかりしてる。
もし私に何かがあったら、葉月は自分の身も顧みず私を守ろうとしてくれるだろう。
私もそんな葉月を信じてる。
…いつの間にか葉月を男の人として感じるようになってしまったから。
だからきっとこの繋がれた手にドキドキしながらも安心しているんだ。
は微笑む。
「また落ち込んでる?」
部屋に着くと葉月はの顔を覗き込んだ。
そっと前髪を梳き、優しく微笑みかける。
――やっぱり葉月には全てお見通しだ。
「うん、ちょっとだけ。でもね、元気出さなきゃと思って。
だから葉月に会いに来たの。葉月の顔見たら安心できると思ったから」
「――さっきから……可愛い…」
無邪気な笑顔とその言葉に葉月は思わずを抱き締めた。
最初は驚き照れていただが、葉月の温もりを感じるうちに幸福感に満たされて自身も彼の身体に手を回す。
…幸せだ。
は葉月の腕の中でその思いを噛み締めていた。
巫女として身体を差し出すことを“犠牲”と思わなくなったのは相手が葉月だったから。
葉月を愛して愛されて、ごく自然に傍にいたいと思えたから。
こんな気持ちが自分にもあるなんて知らなかった。
――きっとサルサラもそうだ。
彼は愛すことも愛されることも知らない。
男としては無理だけど、人として愛すことなら私にもできる筈。
…力が欲しい。
サルサラを閉じ込めるような小さな力じゃなく、救い出せる程の大きな力が。
葉月に精を受けて、婚姻の儀を行ってもそれ程の力を得るのは無理なことなのだろうか。
「…ねぇ、葉月」
「何?」
「婚姻の契りの儀ってどんなことするか知ってる?」
「は?…お望みとあらば今からしようか?」
「ち、違うっ!そっちのことじゃなくて、儀式のことよ!! 結界を張る前にするんでしょ?」
「なんだ、そっちのこと」
頷くと葉月は本棚へ手を伸ばした。
そうして古い本を取り出しペラペラとページを捲っていく。
「確かこれに載ってたんだよね。――あ、あった」
葉月は本を開いたままに手渡す。
「…普通の結婚式みたい」
「まぁ、そんな感じだね」
その本には杯で酒のようなものを飲んでいる男女の挿絵があった。
その絵の下に“婚姻の契りの儀”という文字とその手順が載っている。
・契りを結ぶ2名は予め儀式の前日までに身体を交えること。
・婚姻の契りの儀は結界の中で執り行う。
・互いの血の杯を交わす。
「…血の杯って…なんかやだな」
は杯の血を飲む所を想像して少しゲンナリした。
「そんなに入れないと思うよ。多分1滴2滴でしょ」
そんな彼女から葉月は本を取り上げ、本棚に戻す。
「――ねぇ、最終確認していい?」
静かに葉月は振り向いた。
その表情は先程の笑顔とは違い、真剣なものである。
「は俺でいいの?」
「…」
その真っ直ぐな瞳にぐっと心を掴まれた。
これはただの確認じゃない。
「好きだ」「私も好き」…そんな簡単な呼吸で言える言葉ではない。
心を込めて、真っ直ぐに、その目を見て照れずに言いたいと思った。
「葉月でなきゃ嫌。葉月がいい」
は葉月の腕をグッと掴んではっきりと言った。
「凄いプロポーズだね」
あはっと子どものように葉月は笑う。
その無邪気な笑顔を見ても笑った。
「――っ…や…ぁ…」
「嫌?痛いの?それともくすぐったい?」
の耳元で葉月が囁いた。
その微かな息すらもの感覚を刺激する。
婚姻の儀の話をした後、が帰ろうとすると葉月に腕を掴まれ、「泊まっていくよね?」と含み笑いで言われた時から
何となくその後の展開は予想できた。
心の準備はまだ充分でなかったけれど、葉月ともっと一緒にいたいと思ったのは事実で。
だからは静かに葉月に向かって頷いた。
…とはいっても…っ……っ…こんなのって初めてだし、どうしたらいいか…っ。
電気を消して視覚に神経が注がれない分、皮膚からの刺激にどうしても敏感になってしまう。
触れられているのは服の上からであるというのに、恥ずかしいのとくすぐったいのとでは身をよじらせた。
「動いたら脱がせないんだけど。それとも服、破ってもいい?」
葉月の思いがけない言葉にブンブンとは首を振る。
彼には引きちぎるほどの力がないと冷静に考えればわかるものを、はそれどころではない。
そんな彼女の小さな唇に葉月は熱いキスを落とした。
氷までも溶かしてしまいそうな程にの身体は火照っていく。
「…っんっ…むぅ…んんっ」
温度差のある葉月の指が腹に触れ、は葉月の唇から慌てて逃げた。
すると葉月の唇は首へと移動し、寝巻きの下に着ていたキャミソールは胸の見える位置まで捲り上げられていく。
「やっ…あっ…っ」
ぷにっと胸を優しく掴まれたかと思うと胸の谷間に吸い付かれた。
「…続けてもいいよね?」
「そ、そんなこと言わせないでよ!」
「了解」
フッと笑うと葉月はキスをして再びの身体に手を伸ばした。
「…、顔見せてよ」
「やだ…」
「ホント、可愛いね」
顔を真っ赤にしてプイとそっぽを向くを後ろから葉月が抱き締める。
「まだ痛い?」
「…今は落ち着いたけど…」
マジで痛かった。それまでの過程は…ねぇ、まぁアレだけど。
修行で痛みには慣れていると思ったけれど、レベルが違う。
それを見かねた葉月がいろいろこう、何ていうか…、優しくしてくれたから何とか無事に終わったものの…。
「ひとつになれて嬉しい☆」とか昼のドラマで見たことあるけど、そんな余裕もなかったな…。
でも…一緒に為し遂げた感はあるけど。
そんなことを思いながらは腰に回された葉月の手に自分の手を重ねた。
「ごめんね、葉月。何か葉月を疲れさせただけで…」
「別に。俺は気持ち良かったし」
ぐっ…。そ、そんなストレートに言わなくても。
「というよりも精神的な気持ちよさっていうのかな。
…手に入れられないって思ってたを独り占めできた優越感?」
「葉月…」
普段クールな葉月が独占欲を露わにするなんて珍しい。
それがには嬉しかった。
「身体の方はこれから気持ち良くさせてあげるよ、」
「えっ!?」
が驚くと同時に彼はギュウッと抱き締め、肩をペロリと舐めた。
「っぁ…」
「…もう放さない。誰にもやらないから」
その華奢な指がの敏感な部分を優しく弄び、熱が引いた彼女の身体に再び火をつける。
「…っ…ん…葉月…っ」
「――、好きだよ」
優しい声でに囁き、葉月はそっと唇を重ねた。
こんな無理無理な流れですみません。
それにきちんと性描写ができなくてすみません。
葉月はいろいろ言葉攻めとかしそうなイメージです。
スマートなエッチをするタイプかな、と勝手に思っています。
それにしても、ついに一線を越えてしまいましたので、
次回からどういう展開にしようかなぁ…と考え中です。
それでは、皆様読んでくださってありがとうございました!!
吉永裕 (2006.2.8)
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