伊絽波を救い出したい――はそう思った。
伊絽波にとって私は憎しみの対象かもしれないけれど、そんなの、私は納得がいかない。
「…やっぱりイロハちゃんを追いかけよう」
このまま敵になっちゃうなんて嫌だ。
私の力で救えるなら、早く救い出したい。
きっとイロハちゃんを侵している邪気を浄化したら、彼女は正気に戻ってくれる筈だ。
そう考えたは急いで服を着替えて伊絽波を追いかけた。
外に出ると、もう伊絽波の姿はなかった。
しかし僅かに邪気の流れを感じる。
伊絽波のものかは分からないが、はその邪気を追うことにした。
「――イロハちゃん?」
その邪気は海まで続いていた。
そこでは伊絽波らしき後姿を見つけ、その人物の元へと行こうとするが、その瞬間、後ろに邪気を感じ慌てて後ろを振り返る。
「…貴方は…誰…?」
の目の前にいたのは、真っ赤な髪と瞳の少年だった。
「…オレはアゲハ」
「アゲハ…くん…?」
はその少年に違和感を抱いていた。
邪気は感じるが、彼自身からは発されておらず、彼の身体の中に“詰まっている”ような感じ。
しかし、そんなには構わず、アゲハが口を開ける。
「オレはサルサラ様からイロハとあんたの監視を命令された。
――あんたをイロハに近づけるわけにはいかねーんだよ」
思いがけない不良のような口調のアゲハには圧倒されるが、しかしグッと腹に力を入れて彼を見据えた。
「…貴方もサルサラの仲間なのね?」
「仲間?…オレはサルサラ様の忠実な僕だ」
「しもべ…って。…貴方もイロハちゃんみたいにサルサラに操られてるんじゃないの?」
「操られてなんてねーよ。オレはサルサラ様に作られたんだからな。
サルサラ様の命令には自分の意思で従ってる。 ――話はこれまでだ。さっさと帰ってくれねーか?」
そう言うとアゲハはコキコキと右手を鳴らし始めた。
「何よ、やる気!?」
は戦闘態勢を取る。
「あんたにはどうやっても勝てねぇみてぇだからな。――あばよ!」
『ゴッ!!!』
アゲハが砂浜に邪気の塊を拳で打ち込むと、砂が一気に辺りに飛び散って煙幕のようになる。
「…っ!? ――やられた」
が砂に気を取られていた隙にアゲハも遠くに見えていた伊絽波も消えていた。
「…また新しい敵が現れた…。本当に私たち、結界を無事に張ることができるの…?」
それどころか、イロハちゃんを救うことすらできないかもしれない…。
は暫くその場に立ち尽くしていた。
また新たな人物が登場です。
アゲハのキャラデザは、サルサラのイメージを考えていた時に描いた物を使用しました。
やっぱりこんな外見の人がサルサラみたいな口調で話すのはちょっとヤダなと思って。
それでサルサラをあんな外見に。
でも、結構このスタイルが気に入ったので、アゲハが誕生しました。
いつだそうか、いつだそうかと思いつつ、ここまで延ばしてしまったので
残りの3日でどこまで進展するか未知数ですが、どうにか彼も救えたらなぁ、と思っています。
ちなみにアゲハはサルサラルートの隠しキャラ的扱いなので、
アゲハルートは主人公がサルサラと出会っている設定になっておりますので
そういうのを頭に入れて読んで頂けるとありがたいです。
というわけで、段々物語の収集がつかなくなってきておりますが、
何とか終わらせますので、これからも宜しくお願い致します。
吉永裕 (2006.2.2)
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