「天摩のとこに行こうかな」
何となく天摩のことを思い浮かべる。
チャイラで出会った天摩は、何ていうかとっても軽いヤツで。
修行の合間にいろんな女の子と遊んでいたし、常に誘いが絶えなかった男。
でも、だからっていい加減なヤツではなく、修行の時は真面目だったし、陰で努力していたことも知っていた。
話をすると、流行のことを教えてくれたし、何だかんだいって頼りになって、
私にとって天摩は一緒にいて楽しい人だったから――
「…というわけで来ました」
「…どういうワケ?まぁ、いいや!入って☆」
「お邪魔します」
少し緊張しながらそう言って天摩の庵に入った。
「ちゃん、ちゃん☆」
「何?」
天摩はニコニコしている。
「ここに来たってことは、俺でいいってこと?」
「え――」
『ドサっ』
驚く間もなく、座った途端、天摩にベッドに押し倒された。
「ちょ、ちょ、ちょっと!? いきなり何すんのよ!!」
『ゲシっ』
「っ!!」
不意に腹に拳をくらい、天摩は呆気なく床に崩れていった…。
「…う〜ん」
「あ、起きた?」
30分くらい眠っていた天摩が漸く目覚めた。
いくら急に押し倒されたとはいえ、本気で殴らなくてもよかったなぁ、とは少し反省する。
「…ちゃん、ヒドイ」
「ヒドイって言われても、急にあんなことされたら反射的に手が出ちゃうよ」
「う…、さすが格闘技歴15年の賜物…。しょうがないなぁ。
俺的にはすぐにでもちゃんを手に入れたいけど、少しずつ慣らせていくしかないか」
天摩は苦笑する。
「ご、ごめん」
「いいって!それに今日から無理矢理1日1回してトータルで10回するよりもさ、
5日目くらいまでじっくり親交を深めて、5日目から1日3回くらい濃厚なヤツして
トータル15回する方が最終的に回数多いし、燃えるじゃん☆」
「…は?」
何だか同意するとこと、全くもってくだらないとこがあるのだが。
「さ、自分の部屋に戻るか」
はすっと立ち上がってドアのノブに手をかける。
「ちょっと待ってってばっ!
冗談まじりに言ったけど、俺、ちゃんには嫌な思いしてもらいたくないし、嫌われたくないから!!」
立ち上がった彼女の腕を慌てて天摩が掴んだ。
「…そ、そう」
「それにするからには気持ちよくなってもらいたし、ね☆」
「!!」
かぁあ、との顔が赤くなる。
実際にどんなことをするのかは詳しくは知らないが、この目の前にいる天摩から昔、ちょろっと聞いたことがあったのだ。
「あは、可愛いなぁ。ちゃんってば!」
「な、なに言ってんのよ!」
『バシッ』
今度は一応、平手で叩いた。
「…ちゃん、平手でも痛い…。
でも、綺麗なルックスと真面目で頑張り屋さんな性格はかなり俺好みなんだよね〜☆
あとはすぐ殴るトコが何とかなれば…」
「…気をつけます」
分かってはいたものの、許婚からそう言われると凹む。
こんな境遇でなければ、自分は女らしく育っていたのだろうか。
「あとは…ココがもう少し成長すれば完璧、かな☆」
「…ん!?」
そう言って天摩が笑顔での胸を両手でタッチした。
「な、何すんのよっ!!」
『ブンッ』
回し蹴りを食らわせようとしたが、体術の使い手の天摩だけあって今度はかわされた。
多分、反撃を予想しての行動だろう。
「っていうか、ちゃんの胸、硬い…。何か入ってる?」
そう言って天摩はペタペタと胸を触り続ける。
「あのねぇ…。堂々と触るんじゃないっ!!」
は彼の手を振り払った。
「サラシは巻いてるけど」
「サラシ〜!? いい年頃の女の子がブラもつけずにサラシ!? 胸の形が悪くなっちゃうよ!!」
「…ブラ?」
頭の中にはない単語を聞いて思わずキョトンとする。
「ブラジャーも知らないの、ちゃん…」
そんなの言葉に今度は天摩がキョトンとしている。
「知らない。あ、もしかしてウメ婆の言ってた“乳バンド”のこと?」
「乳バンド…。――っプ!!ちゃん、いつの時代の人間だよ!!」
彼は足をバタバタさせ、身をよじらせ、文字のごとく腹を抱えて笑い始めた。
「…悪かったわね。どーせ私はウメ婆と同年代よ」
は肩を落とし、凹みモードに入る。
「ご、ごめん、ごめん。じゃあさ、今度2人で買いに行こうか!」
「え?」
「その“乳バンド”をさ☆」
「ブラジャーでしょ!もう忘れて、乳バンドのことは!! っていうか、男と一緒に買いに行きたくない!!」
「何で〜!? 俺の好みの下着にしてよ☆」
「イ・ヤ!」
…とまぁ、いろいろ話している間に朝になっていた。
ホントに天摩と私は婚姻の儀を結ぶことができるのだろうか。
私のことは慕ってくれてるみたいだけど、色々と…心配。
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