第13話 女の戦いの果てに
「っ…くぅ…っ!!」
飛んで来た手裏剣を最大限にガードしながら避けたが、1本は左脇腹を掠り、もう1本は右の太ももに刺さった。
その衝撃では横向きに倒れ、苦痛の声を漏らす。
傷口が焼けるようにジリジリと傷み始め、手裏剣が刺さったままの右足はドクドクと脈打った。
打ち身とは違う痛みに顔を歪ませるの額や背中には冷たい嫌な汗が流れていく。
「――っ!」
真織は目の前で倒れて血を流す彼女に向かって力の限り手を伸ばすが
身体に撒きついた黒い影は決して彼を放そうとはしない。
「…っ…」
真織の声で冷静さを取り戻したはカッと目を見開き、えいっと棒手裏剣を引き抜いた。
すると、それまで手裏剣によって止められていた血液がドクドクと溢れてくる。
傷は浅いようだが、邪気の影響もあってまだ力が入らない。
は呼吸を落ち着けながら、ゆっくり近づいてくる伊絽波を見上げた。
彼女の顔に薄っすらと笑みが浮かぶ。
「…ここで貴女は死に、サルサラ様はいずれ復活する。
そしてという巫女は用なし巫女だったと人々は失望し、末代まで言い伝える。
…ふふっ。最高の気分ね」
地面に倒れたままのは苦虫を噛み砕いたような表情をし、グッと拳を握った。
砂が汗の滲んだ頬や首に張り付く感覚が気持ち悪い。
は黙って目を閉じる。
「覚悟は決まったみたいね。
――、死になさい!!」
左手のホルダーから最後の1本を取り出して、伊絽波はそれをに向かって振りかざす。
「、逃げてっ!」
真織は悲痛な叫び声を上げたが、次の瞬間、目の前の光景に呆然とした。
『――パリパリパリ――』
空中に不規則に張られた結界に阻まれた伊絽波の一撃。
「な、何でこんな何もない空間に結界が…!?」
手裏剣を握った手ごと結界に囚われた彼女は手を引き抜こうと必死だ。
「…まさか…」
「――砂よ」
はゆっくり立ち上がって掌をパンパンと叩いた。
するとサラサラと砂が地面に落ちる。
「私の霊気を込めたの。この砂に」
そう言っては動けない彼女に近づいていく。
この距離なら邪気がどこから出てるかわかる…!
は精神を研ぎ澄まし、目を見開いた。
伊絽波の腰の部分から黒い邪気が滲み出ているような感覚を受けたのだ。
「ここね!」
そう言って伊絽波の洋服をまさぐると小さな石でできた鈴が手に触れる。
じわりと溢れる邪気。
――これが媒介だ!!
はその鈴を取り出し、地面に叩きつける。
「そ、それだけは…っやめて!!」
伊絽波は必死に腕を伸ばすが、片手が結界に絡め取られている彼女にはどうすることもできない。
そんな彼女をちらりと見ると、は落ちていた自分の血が付いた手裏剣を拾い、一気にその鈴に突き刺した。
「――きゃああぁぁあ!!」
暗い部屋に伊絽波の声が響く。
すると、伊絽波を取り巻いていた邪気はすっと辺りへ散り、結界から抜け落ちた彼女は意識を失って地面に崩れる。
地面に転がっている鈴は白い光で浄化され、ただの石ころの欠片となっていた。
「。大丈夫!?」
影から解放された真織がに駆け寄り、頬に手を当てる。
「私は平気よ。真織は大丈夫?」
「僕よりもが…」
彼はポケットからハンカチを取り出し、彼女の前に跪いて傷口にきつく撒いた。
「…っ僕が…君の足を引っ張ったんだ……ごめん…」
今にも泣き出しそうな表情で真織は地面に手をつき、うな垂れる。
「真織のせいじゃないよ。
今だって一緒にいてくれて凄い心強いんだから」
そう言っても地に膝を落とすと、穏やかに彼の背中をそっと撫でた。
全然存在感ないし…。
なかなか緊迫感のある状況を書くのは難しいです…。
全然戦いらしくなくてすみませんでした。
…さぁ、次回こそサルサラ様が出てきます。
あっけない終わりになってしまうかもしれませんが…。
まぁ、キャラとはエピローグでラブラブさせたいなぁ…と(多分)。
さて、サルサラとアゲハですが。
この2人は次のお話でケリがついてしまいそうなので
更新は他のキャラと合わせようと思います。
好きな方はホント、すみません!
とういうわけですが、ここまで読んでくださってありがとうございました!!
次回をどうぞお楽しみに…☆
吉永裕 (2006.3.13)
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