「…大丈夫?魘されてたけど」
隣にいた葉月がそっとの髪を梳く。
そうか私、昨日葉月の所に泊まったんだった。
自分と葉月の恰好を見て思い出す。
…あんな夢見るなんて。
霊力、そんなに上がってないのかな。
は少し不安になり、葉月を無言で見つめた。
「どうしたの?怖い夢だった?」
「…うん…まぁ…」
そう言うと彼がギュウっと抱き締める。
「明日、全部終わるから。…もう少しだよ」
涙が出そうな程に安心する温もりがの全身に広がっていく。
この人を失いたくない。
明日、もし葉月に何かが起こりそうになったら、命を懸けて彼を守ってみせる。
グッと心に誓い、は葉月の背中に手を回した。
「葉月と外に出るなんて、本当に久しぶりだね」
「そうだね。普段から俺は外に出ないから」
2人は話しながら裏山のなだらかな坂道を登っていた。
――この坂を上り切った所に花畑があった筈だ。
葉月とは微笑む。
「昔も来たよね。よく葉月に花の冠作ってもらってた」
「は不器用だからね。沢山作らされたよ」
2人は足を止める。
するとそこには白い花畑が一面に広がっていた。
2人の頭に葉月がの家に引き取られて来た当時のことが蘇ってくる。
その当時、表情に乏しい葉月に笑って欲しくては無理矢理手を引いてここにつれて来たのだ。
しかし彼女のあまりの不器用さを見かねた葉月が作ってくれた冠に自身が元気付けられてしまった。
そんなの笑顔をボーっと見つめると、葉月は何個も何個も冠を作っては彼女に差し出した。
葉月の作ってくれた沢山の冠を頭に載せたが丸1日かかってやっと作った冠は、
あちらこちらがブチブチ切れて花の形もグシャグシャになっていたけれど、
それを頭に乗せられた葉月はポトリと涙を落とした。
自分に笑いかけてくれる人なんていなかったから。
誰かが自分の為に必死になって何かをしてくれることなんて考えられなかったから。
自分の中に生まれたよくわからない新しい感情に葉月は涙を流すことしかできずにいた。
「が望むなら、ここにある花全部冠にしてあげる」
やっとのことで発した葉月の言葉に、はそっと首を横に振った。
「ううん。そしたらここのお花がなくなっちゃう。
葉月とまたここに来たいから、今日はもういいよ」
そう言うと彼女は微笑み、葉月の手をそっと包み込んだ。
「――俺はに永遠の愛を誓う」
ふわりと香る花の甘い匂い。
「葉月…」
頭にちょこんと乗せられた花の冠はあの時のように綺麗な輪を作っている。
「戸籍上はまだ他人だけど、明日、俺たちは儀式上夫婦になる。
明日も明後日も明々後日も…ずっと俺はの傍にいるから」
「…うん」
真っ直ぐに瞳を見つめた葉月がの手を優しく包み込み、そっとキスを落とす。
「俺の為に笑ってよ、。…明日のことは何も心配ないよ」
「うん。…ありがとう、葉月」
そう言うとは葉月の首に手を回して抱きついた。
この間、ちゃんと日数を計算してみたんですよ。
そしたらあと3日くらいあるだろうと思っていたらあと1日しかないことが判明し、焦りまくった私です。
さて、葉月の過去の話は書いていて楽しいです。
無感動な人が目覚めるその過程に私は萌えを感じるようで…。
だからどうしても子どもの葉月をよく出してしまいます。
さぁ、ボチボチ決戦になりますが、果たして1話で終わるか、自分でもまだよくわかりません。
でもどれもベストな終わり方にしたいと思います。たとえそれがベタでも、無理矢理でも…っ!!
温かい目でどうか見守ってください。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!!
吉永裕 (2006.2.19)
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