サルサラ もう一つの人形エンド −2−
――崩れていく。
最初はもっとピンク色の肌をしていたし、目だって輝いていた。
声を出して笑ったりしていたのに。
今ではすっかり人形のようになってしまった。
「――完全に巫女は邪気に侵されてますね」
サルサラの本体が封印されているクリスタルの隣で力なく座り込んでいるを見ながらアゲハは口を開く。
「…ふふん、そうだね。準備は全て整った」
そう言って邪気によって作られた分身のサルサラは立ち上がり、座っているを手招きした。
「――最近、ボクは君のそんな虚ろな目も愛しいと思うようになったよ。
ボクのことしか考えてないその目、溜まらなくそそる。
君がボクだけの為にいる…それがこんなに気持ちを高揚させるなんてね。初めてだよ、こんな気持ちは」
サルサラはの腰を撫でるように触れると更に自分の身体に引き寄せる。
はゆっくりとサルサラの手を取り、甲に口づけした。
サルサラの復活後、ジッカラートは数日で闇に覆われた。
地上に魔物や怨霊が溢れ、人々を狂気が襲う。
破邪の力を持つ一族ですらそれに抗うことはできず、首都も魔物によって陥落した。
そうして邪神復活と一国が実質上滅びてしまったというニュースは、世界各国一斉に報道され、
特殊な能力を持つ者たちが幾度となくジッカラートへやって来たが
封印前よりも更に力を増したサルサラの足元にも及ばず、ジッカラートは屍の集う邪の国として完全に世界から隔離された。
「…」
「目が覚めた?」
薄暗い中、誰かが自分の顔を覗き込んでいるのが見えた。
「どうやら成功したようだね」
そう言ってその少年は手を差し出したので、その手に掴まって立ち上がった。
「――っ…?」
すると不意に目から涙が零れる。
理由は良く分からなかった。
…ただ、何だかとても――――
「頭の中も胸の中も、空っぽな気がする…」
そんな自分を見て、白髪の少年はニコッと笑い、すっとこちらに手を伸ばすと頬に指を当てる。
「君の生身の身体は邪気に耐えられなくてね、腐りかけてたんだ。
だから邪気で体を作り変えてあげたのさ。
魂はそのまま使ったから、君は君のままだけど――余計な感情や記憶は一切ない筈だよ」
ジッと見つめる少年に問いかける。
「――貴方は、誰?」
知らないようで、何だかとても知っているような。
空っぽの心が思い出そうと震えているような、よく分からない焦燥感。
…だけど、どうしてだろう。
彼に触れられていると、そこが温かく思えて一気に空っぽの胸が満たされていくような気持ちになるのは。
そっと頬に触れている彼の手に自分の手を重ねた。
身体が、感覚が……いや、魂が覚えてる――この指の感触。
「…私、貴方のこと、知ってる」
――サルサラ。
「私のサルサラ」
「…」
――君には、本当に呆れたよ。どうして、君は…ボクのことを覚えてるのさ。
人形のくせに、どうして……そんな優しく微笑んだりするの?
…君を作ったボク自身ですら、諦めていたのに。
「――。 堕ちたのは……ボクの方、だったのかもしれないね…」
そう言い、サルサラはを抱き締めた。
というわけで、ゲーム「another story of 'destin'」のおまけにある没SS、
分岐小説にした為に没になった真のサルサラNエンドでした。
通常のNエンドルートを読んだ方を前提に書いているので、所々端折っております^^;
分かりにくくてすみませんm(__)m
これもやはりアゲハの話と同様、素晴らしい音楽がないと、けちょんけちょんです(;´▽`A``
このNエンドだったら、その後Hエンドに近い未来を迎えられるかも知れませんね。
とはいえ、ジッカラート滅ぼしておりますので、2人の罪は消えませんが^^;
というわけで読んでくださった皆様、ありがとうございました!
きっとサルサラ様は貴女に堕ちたと思います^^
吉永裕 (2009.4.1)
メニューに戻る サルサラ 通常Nエンドルートを見てみる