繋ぐ巫女



 前略 貴方はまだ生きていますか?まだ怨霊たちと戦っていますか?
貴方を恐れ見捨てた村人たちを何故貴方が守ろうとしてくれたのか、今なら私、分かります。
きっと貴方は私の戻ってくる場所を守ろうとしてくれたのですね。
私の居場所がなくならないように、私をずっと待つ為に命がけで。

 私も特殊な力の持ち主。
村人たちから崇められるようであって、恐れられる存在です。
外の世界から来た貴方と相通じるものがあったのかもしれません。
 殊に臨邪期ともなれば尚更のこと。
陰で気味悪がられ謗られていることも、一部の男から卑猥な目で見られることも、
許嫁と儀式を行い添い遂げることも、巫女として育てられた時から分かっていたことです。
意に沿わないことがあったとしてもそれらは義務として受け流すつもりでした。

 けれど貴方と出会って私は広い世界を知ってしまった。
昔ながらのしきたりの多い閉鎖的なこの地域で生きてきた私には
貴方の話す別の大陸の話はとても刺激的でした。
 いつしか貴方自身にも惹かれ私たちは恋に落ちた。
しかしながら私は白巫女。決められた相手と儀式をしなければ臨邪期は乗り切れません。
それは即ち国の崩壊を意味します。
 こんな小娘が国の命運を握っているなんて、と貴方は笑っていましたが私もそう思います。
それでも実際に力はあったようで、近辺の森の奥にある洞穴から次々と生まれる怨霊退治が私の日課でした。
あの場所は非常に負の気が満ちていて邪神がいなくならない限りは浄化されないだろう、と誰もが言っていました。
私や私の家族もそう考えました。
 だから臨邪期に私が村を離れることを村人たちは非常に不安がりました。
そこで結界を貼って怨霊が洞窟内に閉じ込めることにしたのです。
けれども貴方はその結界を守る役を買って出てくれました。
自分が結界を守る限りこの村が守られるなら、ずっと守り続けると言ってくれたのです。
 村人たちは外から来た貴方を厄介払いできると思ったのか、
本当に貴方なら守ってくれると思ったのかは謎ですが声高に賛しました。
村の総意のようになってしまい、私は不本意ながら貴方に守人を任命しました。
そして剣を持たせました。聖なる祈りを込めた貴方の為だけの剣です。
その剣が貴方を守ってくれますように、と。

 私の護人、貴方のことは忘れません。
他の男のものになってしまっても私の心は貴方のものです。
いつか生まれ変わり貴方と再び出会えることを願っています。
それまでどうか貴方は無事に生きていて。 
                                かしこ


ナイト こと 夜乃護人 様

                              貴方だけの私より



WEB拍手お礼画面に置いていたSSですのでいつ書いたか忘れてしまった為、今日の日付でまとめて更新しています。

ある男を愛する女の話。
『夜乃護人』と関わりのある話です。
彼の本当の名前はナイトですが、当時の巫女がジッカラート風の名前をつけてあげたのでした。

ちなみに蛇足ですが、『destin』で巫女様(ヒロイン)がサルサラを完全に解放するED(Hエンド&Kエンド)では
護人は怨霊との戦いから解放されます。
そしていつかこの巫女の生まれ変わりか遠い子孫と出会う筈です。


というわけでご覧になってくださったお客様、ありがとうございました!!!


吉永裕(2016.8.7)



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