5月21日(土)


 劇は大成功だった!和泉くんやトーヤくんも見に来てくれていて「良かった」と言ってくれた。
変装したとは思えないような普通の格好をした美空の姿を見た時はとても肝が冷えたけれど、何事もなく一日目が終了した。

劇が終わって衣装などを片付けていたら、誰もいない筈の音楽室からピアノの音が聞こえた気がして行ってみた。
謎の人影の噂を思い出してちょっと怖かったのだけれど昼間だったので勇気を出してドアを開けると、そこにいたのは海くんだった。
「君を待っていた」と彼が言ったのでやはり夢に出てきた海くんなのだと確信する。
それではっきり思い出した。昨日の夢に出てきた背景はこの音楽室だと。
だが、彼にはどこか違和感があった。なんというか、身体の厚みを感じないというか実体ではないという感じ。すぐに消えてしまいそうな感覚がする。
「もしかして、ずっとここにいたの?」と聞いたら「分からないけれど最近はずっとここにいる」と彼は答えた。
「貴方は俗に言う幽霊さん?」と言うと彼は「そうかもしれない」と言った。
自分は服毒自殺したつもりだからと話してくれたがその理由は言わなかったし聞けなかった。
しかし彼が穏やかな笑顔を向けたので怖いなんて思いは抱かなかった。
「昼間でも会えるものなんだね」と言ったら海くんは静かに笑っていた。そしてまた会いに来ると約束をした。夢の中ではなく、音楽室に。


―メモ―
特になし




5月22日(日)


 今日は文化祭二日目。クラス発表が終わった今日は自由行動できるのでクレープを買って海くんの所へ行くことにした。
残念ながら海くんはクレープが食べられなかった為、私は窓辺で校庭を眺めている彼の隣で一人クレープを頬張った。
彼は楽しげに歩いている生徒たちを見て微笑んでいた。自殺を図ったと言っていたけれど、
もしかして病気か何で人生に悲観して死を選んでしまったのかなと思っていたら、海くんが自分のことを話してくれた。
自分は3歳からピアノを弾いていて、楽譜の通りに弾くことが全てだったと。しかし楽譜に感情を入れることはできなかったらしい。
そんな彼が中学生の時に出会った女の子は感情込めてピアノを弾く子で、それがとても魅力的な音に聞こえたのだそう。
それから彼女に惹かれていったのだけれど、彼は心臓の病気で突然死んでしまったらしい。
あれ、と思って「自殺したって言ってなかった?」と言ったら、彼は複雑そうな顔をして消えてしまった。
もしかして私、悪いことを言ってしまったのだろうか……。


―メモ―
◎支出:200リーン(クレープ)
◎残高:1000リーン








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