5月21日(土)


 劇は大成功だった。
変装したとは思えないような普通の格好をした美空の姿を見た時はとても肝が冷えたけれど、和泉くんやトーヤくんも見に来てくれていた。
トーヤくんは良かったと言ってくれたものの、美空の話だと和泉くんは劇の途中でいなくなってしまったのだそう。
私の演技が酷過ぎて胃痛でも起こしているのかもしれないと思って、劇が終わった後に色々探してみたら中庭で見つけた。
「劇、見てられないくらい酷かった?」って聞いたら「そんなことはないよ。いつも練習してただけあって上手だった」って褒めてくれたけれど彼の表情はあまり晴れない。
そしたら、私の役は男の役だったけれど、相手役ももしかして男女逆だったのかと聞かれたので頷いたら尚更機嫌が悪くなった。
やはりこの前言っていたようにキスシーンが嫌だったのかなと思っていたら美空がやって来たので二人で彼女の格好を叱り、和泉くんに頼んで美空を連れて帰ってもらうことにした。
二人の後姿を見るのは少し胸が痛かったけれど、でも何かを言い合いながらも楽しそうに話しているのを見たらやっぱりお似合いだなと思えて笑って手を振れた。

何事もなく一日目が終了して本当に良かった。


―メモ―
特になし




5月22日(日)


 文化祭二日目。クラス発表が終わった今日は自由行動できるのであちこち見て回ろうと思っていたら、和泉くんに声をかけられた。
今日も遊びに来てくれたらしい。昨日は色々あってすぐに和泉くんを帰してしまったけれど、今日は案内してあげられるのであちこち説明して回った。
途中でクヴォレーくんが来て「一緒に回らない?」と天使の笑顔を向けたのだけれど、折角和泉くんが来てくれたので丁重にお断りした。代休明けが怖いけど…。
その後、和泉くんは楽しんでくれたみたいで、沢山笑っていた。一緒にたこ焼きを食べたり、お化け屋敷に入ったりして私も子どもの頃に戻ったみたいで楽しかった。
お化け屋敷内で手を繋がれた時は、抑えてた気持ちがぶわっと出てきそうになったけれど、でも、昔から和泉くんはお兄さんみたいに面倒を見てくれるから、
「和泉くんみたいなお兄さんがいたらいいのにっていつも思ってたんだ」と話したら暗い中で良く見えなかったけど多分複雑そうな顔をしていた。
「今度、久しぶりに美空も一緒に三人で遊園地に行かない?美空、こういうお化け屋敷とか好きだし」と言ったら、
和泉くんは「いいけど、お前はあんまり騒がしいのは得意じゃないだろ?」って返した。
「騒がしいのは二人で乗ってよ。私、二人が高い所から落ちたりして悲鳴あげるところ、下で見てるから」ってちょっと意地悪を言ったら「それじゃ面白くない」だって。
そしたらこの前私と海でご飯食べたり寝転んだり浜辺を歩いたりしたのが本当に楽しかったと言ってくれた。
嬉しくて泣きそうだったけど、幸い暗闇だったし気付かれないように何とかこらえて
「私も楽しかったけど、活動的な和泉くんがそんな風に思うなんてちょっと疲れてるんじゃない?」って言ったら困っていたみたい。
昔から和泉くんは優しすぎるんだよ。美空にはもっと遠慮がなくて何でも言うのに、私には好きなようにさせてくれて私のペースに合わせてくれた。
そんな和泉くんと一緒にいると一人でいる時間の延長のような感じでとても居心地が良かったのに、今は凄くつらい。
何で彼の隣にいるのが私なんだろう、美空だったらよかったのに、って本気で思った。


―メモ―
特になし







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