5月19日(木)
ピアノの夢を見る。今日は色々な曲を弾いてくれた。
細い指から奏でられる音楽はどれも素晴らしくて綺麗な音だけれど、私の全然知らない曲ばかり。
もう少し音楽の勉強をした方がいいだろうかと思ったけれど、奏者さんが別の場所の曲だから知らなくて当然だって。
それから「知らない方がいいこともある」と言っていた。初めてこの夢を見た時も彼は同じようなことを言っていた気がする。
朝、玄関を出たらバッタリ和泉くんと会う。今は私が劇の練習で早く家を出ているから会わないと思っていたのでびっくりした。
正直気まずいけれど、彼は美空にキスをしたと思っているのだから私の態度がおかしいのは変だしいつもの通りを装って挨拶をする。
すると和泉くんがトーヤくんのことを聞いてきた。
一年の時に同じクラスだったらしいけれど、昨日はどこか違和感があって話しかけたら実は双子の兄だったとのことだった。
あの双子を見分けるなんて和泉くん、凄い!「二人ともいい人だよね」と言ったら「知ってたんだ。弟の方と面識あるのか?」と聞かれて慌てちゃった。
「お兄さんと同じクラスで前々から双子だっていうのを知ってて、昨日は弟さんと少し話したから」なんて説明文みたいな回りくどい答え方をしてしまったのだけれど、
和泉くんは「お前が良い奴って言うなら本当にそうなんだろうな。今度、恩田弟と話してみる。実際どんな奴か気になるし」と言ったかと思ったら頭にポンと手を置いた。
今までもそんなことはされていたし何気なく過ごしてきたけれど、今は何でこんなに胸が痛いのだろう。
夜に微熱が出る。文化祭も近いのに参ってしまう。もしかして劇のプレッシャーとか……?
とはいえ、今さら辞退なんてできないし早く体調整えて頑張らないと!
―メモ―
◎帰宅後の行動:散歩
◆ピアノの夢を見る
5月20日(金)
ピアノの夢を見た。奏者さんはピアノを弾くことが疲れたと言っていた。ピアノを弾くのは好きだけれどつらいのだそう。
あんなにも上手なのにやめるだなんて勿体無いけれど、つらいなら無理に引く必要はないかなとも思う。
数日前に弾いてくれた優しい曲は好きな人のことを考えて作った曲らしい。
それを聞いた瞬間、和泉くんの顔が思い浮かんだ。和泉くんも美空を想う時、こんな優しい気持ちになるのかな…と。
夢から目が覚めた時、私は泣いていた。
もう、分かっている。自分の気持ちには。それでも、どうしようもないのだ。美空には敵わない。私でなくても誰も美空には敵わないのだ。
料理は破滅的に下手だけれど、明るくて前向きで世話好きで勉強も運動もできて友達も多い。今まで沢山の男子に告白されてきたのも知っている。
和泉くんが好きになるのは当たり前の女の子だもの。
この気持ちに気付いてしまっても、気付いた時点でお終いにしなければ。
和泉くんの恋を応援しよう。彼が幸せならそれでいいから。
明日はついに文化祭初日!劇の発表がある。失敗しないようにしないと。
和泉くんは文化祭に来てくれるだろうか。美空は変装して行くなんてまた無茶なことを言っていたけど、和泉くんが彼女の傍にいてくれたら少し安心なんだけどな。
―メモ―
◎帰宅後の行動:散歩
◆ピアノの夢を見る
▼次のページに進む ▼メニューに戻る