5月21日(土)


 まさかのハプニング発生。
劇中のキスシーンのところで本当にクヴォレーくんにキスされてしまったし、美空の存在がクヴォレーくんにバレるし。
キスされた後は動揺して舞台の照明がついた後も一瞬棒立ちになってしまったけれど、最後で台詞もなかったのでなんとか劇自体は無事に終わったと思う。
和泉くんやトーヤくんも見に来てくれていて「良かった」と言ってくれたし。それでも気持ちは晴れない。

そもそも、クヴォレーくんは劇の前からちょっと様子がおかしかった。緊張を和らげてやると言って自分の話を始めちゃって。
彼はサウスランド出身で赤子の時にチャイラに連れてこられたけれど両親が事故で死んでしまい、チャイラの施設で育ったのだそう。
そしてその施設は高等学校を卒業したら出ていかなければならないし、今住んでいる所も施設の口利きで借りているけれど
そこもまた卒業したら出て行かなければならないらしく、自分にはもう戻る所はないのだと言っていた。
だから生きて行く為にお金と手に職をつけることが必要なんだって。
それでクヴォレーくんはお金第一主義になったらしく、またお菓子作りをしているのも製菓衛生師を目指しているからなのだそうだ。
そんな話を聞かされたら確かに緊張なんてする暇もなかったけれど、でも、彼は何故私にそんな話をしたのだろうかという思いが強かった。
何か言って欲しかったのだろうか?同情は…されたくない性格だと思うけれど。
だから私は「クヴォレーくんならなれるよ。お店開くの楽しみにしてる」としか言えなかった。
そしたら劇が始まって、最後のキスシーンで本当にキスされて……。
照明を落としても観客席からはシルエットが見えるから、キスをしているように顔はある程度近づけないといけなかったのだけれど、
クヴォレーくん緊張してたのかなとか、私に対する嫌がらせなのかな、とか色々考えたものの、何より恥ずかしいし混乱もしていたから
劇が終わったらすぐに急いで片づけを済ませクヴォレーくんに話しかけられる前に逃げ出したのに、中庭で変装したとは思えないような普通の格好をした美空と遭遇し、
急いで別の場所に移動させようとしたらクヴォレーくんが来ちゃって、美空のことを知られてしまった…という悪循環。
「お前もボクと同じで本当の自分を隠しているのかと思ったから全部話したのに、騙したんだな!」と言われた瞬間、凄く胸が痛かった。
本当のことだから反論できなかった。悪気はなかったけれど、双子で入れ替わっていたのを隠していたのは事実なのだから。
ここ最近、お菓子をあげたり貰ったりして仲良くなれたような気がしたのに……。私のせいで彼を傷つけてしまった。
もう、一緒に昼食を取ることもないんだろうな。最初は嫌だったのに、今は凄く寂しいよ……。


―メモ―
特になし




5月22日(日)


 今日は文化祭二日目だったけれど、クヴォレーくんに会いづらくて美空に入れ替わってもらった。
美空が少し彼と話したそうだけど、私じゃなくて美空だと知って酷く怒っていたらしい。
尚更会いづらい。明日は代休だからいいものの、火曜日から学校どうしよう……。


―メモ―
特になし







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